第1章 公安警察魔術局2
「いやー、今日もお手柄じゃないか」
「あ、警部」
警察署に戻ると、捜査1課の木元が声をかけてきた。
木元は課は違うが何かと気にかけてくれる、よい人だ。
今回逮捕した男は魔術を使った強盗犯だった。魔術を使い、相手を脅して金品を奪い取るようなものだ。
「しかし、星野君やりすぎだよ。彼、君にぼこぼこに殴られたって文句言ってたよ」
玲香がばつの悪そうな顔をする。
「それに頬骨にひびが入っていたようだよ。加減は気を付けてね」
「はい、すみません」
魔術といえど万能ではない。玲香の魔術では傷を完治させることはできないのだ。
「木元警部、どうしてあんな化け物どもの相手してるんだろう」
「ご機嫌取りだろ、敵に回さないために」
影口をしている刑事たちを木元はにらみつける。
魔術が一般化してきたとはいえ、全員が使えるわけではない。使えない人たちの中にはは魔術師たちを化け物のような扱いをする者もいる。
木元が幸也の肩に腕を回し、ささやくように話しかけてくる。
「仁藤君。今夜、空いてるなら一杯どうだい?」
「はい、今日は予定はないですね」
幸也は静かに頷く。玲香に気づかれないように。
「お酒ですか?私も同席良いでしょうか」
聞こえていたようで玲香が同席を申し出てくる。
木元の表情が引き攣る。
「おっと、そういえば今日中に片付けないといけない書類がいくつかたまっていたんだった。飲みはまた後日ということで」
そういって木元は足早に去っていく。
幸也も立ち去ろうとしたが玲香につかまる。
「お前は今日空いてるって言ってたよな。私に付き合え」
「え、えっと」
(警部、恨みますからね!)
「はあ、あ?おい幸也、酒が進んでなくないか」
行きつけのバーで飲んでいるのだが、玲香がすでに3杯飲んでいるが、幸也はまだ1杯も飲み終わっていなかった。
「私が出すから好きなだけ飲んでいいぞ。それとも私の酒が飲めないのか?」
「いえ。そういうわけじゃ」
幸也がようやく1杯のみ終わらす。
「マスター、バーボン追加で」
「はいはい、玲香、あんまりやるとアルハラになるからやめなさい」
がたいのいいマスターが玲香のグラスにバーボンを注ぐ。
「あんた、今の子ほど続いた子いないんだから、もう少し大切にしなさいな」
「わ、わかってますよ」
玲香はよくパートナーが変わっていた。この絡み酒が理由の場合もあるが。
マスターは幸也のほうにも来て、酒を追加する。
「あんた最近はどうだい?無茶してない?」
「はい。それは大丈夫です」
3か月前、幸也は凶悪な魔術犯罪者を追い詰めるために無茶をして大けがをしたのだ。その時に玲香を泣かせてしまった。
「大丈夫です。あれ以来、あの魔術は使って」
「お、なかなかよさそうな店じゃん!」
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