第3章 買われる子供たち2
「洋子さんて、黒川さんのこと嫌いなんですか?」
良樹が洋子の様子を見て、疑問に思ったようだ。良樹はまだ彼らとはあまりかかわりは無かったはずだ。
「黒川がというか、協会の連中がね」
良樹は首をかしげる。
「あいつらは私たちみたいな後発の魔術師のことを見下してるところがあるのよ」
洋子も魔術の才能が目覚めたタイプだ。精霊を使役して魔術を行使する精霊魔術を使う。彼女は複数の精霊と契約し、さまざまな魔術を行使できる優秀な魔術師だ。
しかし、元々魔術師だった人たちは、彼女たちのような目覚めたタイプ、通称後発の魔術師を見下す傾向にある。
曰く、後発の魔術師には歴史がないから、だそうだ。
「歴史がないって何よ。最初の魔術師はみんなそうでしょうが。あんたらは初代を見下すのかって話よ」
「ソロモンとか、ドルイドとか馬鹿にしてる人なんていませんもんね」
うんうんと洋子が頷く。
「まあ、黒川は協会のやつらの中でもましな方なんだけど、それでもね」
「あいつは実力があればきちんと認めるかなら」
玲香がナイフを見ながら口を挟む。
「とりあえずこれを七海に渡してくる」
玲香が幸也を連れて工房に移動する。
工房では七海は何やら作業をしていた。机には大量の試験管やビーカーが並んでいる。その近くにこの間の麻薬が置いてある。
「七海、ん?これは」
「ああ、玲香先輩に幸也か。どないしたんです?」
「調べてほしいものがあるんだが、取り込み中か」
七海の視線が試験管から玲香に向く。
「そのナイフですか?」
「ああ、この間の連中が使ってたものと同じものらしい」
「転移魔術の?」
「らしいぞ」
七海はナイフを受け取る。
「確かに、魔術が施されとる。これを調べればええんですか?」
「頼めるか」
「科捜研からの依頼が先になりますが、それでよければ」
玲香が机の麻薬に視線を向ける。
「結局これは何だったんだ?」
「ただの合成麻薬ですね。そんなに強くない」
「強くない?」
幸也が聞き返す。強くない合成麻薬でああなるのだろうか。
「せや、だからおかしいんや。この薬であんな感じにはならへん」
七海もこれの患者は見ている。かなり強い中毒症状が出ていた。
「もしかしたら、何かしら魔術的な処理がされている可能性もあるから調べてくれって」
七海が試験管を一本取り出す。
「実際、魔術の反応は出とる。あとはどんな魔術かなんやけど」
七海の視線がまた試験管に戻る。
「それはまだわからへんな」
「何かわかったら私たちにも教えてくれ」
「わかりました。ナイフの件もやっておきます」
試験管から目を離さない七海によろしくとだけ言って、工房を後にする。後ろから七海の唸り声が聞こえる。




