第3章 買われる子供たち1
私の前には知らないおじさんがいる。
「君が優花君だね」
「は、はい」
この人はどうやら政治家らしい。
「今日はよろしく頼むよ」
私は目を背ける。
「あの、お父さん。私」
「お父さん、これが今回のお金だ」
お父さんがおじさんからお金を受け取っている。
やっぱり、今のお父さんは私の味方じゃないんだ。
「それでは、優花をお楽しみください」
そういってお父さんは去って行ってしまった。
「それじゃあ、楽しもうか」
「い、いや」
おじさんが近づいてくる。触ってくる。
(もうやだ、誰か、助けて)
魔術局の部署に珍しい客が来ていた。
「お疲れ様です。魔術局の皆さん」
「あんたが来るなんて珍しいな」
玲香の視線の先にはスーツ姿の男性がいた。整った顔立ちの好青年に見える。
「協会が何の用?」
洋子が不機嫌そうに問いかける。
彼は魔術協会の魔術師で黒川という。魔術が一般になる前、魔術師たちを統治し、道を外したものを裁いていたのが魔術協会だ。
ただ、現在では、魔術師が多くなり、統治しきれなくなったため、協会がやっていたことの一部が警察などに任せるようになった。
「話が聞きたいのはそちらなのでは?」
黒川が不敵な笑みを浮かべる。
「魔術師たちの夜についてか?」
彼は笑みを崩さない。
「魔術師たちの夜のために、というのは彼らの組織名ではなく、合言葉のようなものらしいですが」
「組織名が分かったのか?」
「いえ、それは残念ながら」
黒川が首を横に振る。
「じゃあ、何が分かったのよ」
洋子が睨みつける。
「こちらの資料をどうぞ」
黒川が差し出した資料を読んでみる。そこには魔術師が絡んだ事件について書かれていた。その中には、遊園地の男のことや、薬物を飲ませ、監禁していた男のことも書かれていた。
「これは、魔術師たちの夜のために、という合言葉をいう者たちの事件です」
「全国で起こっているのか」
黒川が追加で資料を出す。
「全国ではなく、全世界です」
その資料には世界中での事件が書かれていた。
「世界規模の組織であると」
「というよりも、日本では最近は言ってきたといった感じですね」
ここ数年、協会の統治下にない魔術組織が活動し、事件を繰り返しているそうだ。だが、今まで、誰も捕まっていないという。
「あのナイフ、転移の魔術が記憶された魔術具か?あれのせいだろうな」
「ええ、何とかそのナイフを手に入れました」
黒川がナイフを取り出す。
ナイフには魔法陣が刻まれ、魔力の痕跡もある。
「これは、すでに書いてある魔法陣の場所へ転移するというものです。残念ながらこの魔法陣は機能していません。転移先の魔法陣がすでに消されているのでしょう」
ナイフを玲香に差し出す。
「こちらを差し上げます」
「いいのか?」
「日本ではあなたたちが一番彼らと対峙してますからね。その代わり、何かわかれば教えていただきたい」
玲香がナイフを受け取ったのを確認すると、黒川は部署を後にした。




