第2章 魔術師たちの夜のために8
いきなり後ろから声が気聞こえて振り返った。
いつの間にかローブを纏った男性が立っていた。
「新しく人が来たと思ったら魔術局か」
「俺たちのことを知っているのか」
幸也が男をにらみつける。
「ああ、最近僕たちの中でも話題になっているんだ」
「魔術師たちの夜のために、か」
男が笑う。
「ああ、その言葉も知っているのか」
「ここにいる人たちを開放しろ」
「別にいいよ」
玲香の言葉に男はすんなりと答える。
「ただ、そこの女性以外はね」
詩織を指さす。
「わ、私?」
「そう、君」
幸也と玲香が詩織の前に立つ。
「邪魔しないでくれるかな」
「ここにいる全員を開放しろ」
「それは了承しかねるね」
「なぜ、彼女だけなんだ」
男は肩をすくめる。
「なんでだと思う?」
「答える気はないと」
「わかってるじゃないか」
幸也がイスで魔法陣を攻撃しようとする。
「させないよ」
男が何かを呟き、拳を突き出す。幸也が不可視の力に突き飛ばされる。頭の中を激しく揺さぶられるような感覚に陥るが、何とか耐える。
「耐えたか」
ヨグ=ソトースのこぶしだ。今回は耐えられたが場合によっては意識を刈り取られていた。
「欠乏せぬよう守りたまえ、ナウシズ!」
幸也がルーンストーンを詩織に向かって投げる。彼女の周りに結界が現れる。
「ルーン魔術か、面倒なことを」
男は呪文を唱える。腕が蛇となり、結界に噛みつく。
「ひい!」
「力(strength)、正位置!」
玲香が魔力を纏い、男に拳を突き出す。
男はそれをひらりとかわすと、蛇を今度は玲香に向けてきた。
「氷よ、かのものを穿て、イス!」
玲香に迫った蛇が氷塊にはじかれる。
「茨よ、かの者を拘束せよ!ソーン!」
魔力の茨が男を拘束する。
「はあ!」
玲香が男に肉薄する。
男がにやりと笑い、何かを唱える。
「あ、が!」
拳が当たる直前、玲香がうめき声を出してうずくまった。
「先輩!」
玲香の身体の一部が燃え、火傷になっていた。
「萎縮か」
玲香が幸也の方を見る。
「こっちはいい!魔法陣を!」
「は、はい」
幸也が魔法陣の方に駆け寄る。
「雹よ、災いとなりて、かのものを破壊せよ、ハガル!」
放たれた石から魔力の奔流が流れ、魔法陣に直撃する。
パリンという音ともに空間が歪む。




