第2章 魔術師たちの夜のために6
薄暗い空間が広がっている。狭い通路の先は光は見えず、暗闇が続いている。
「え?え?ここは?」
女性はあたりをきょろきょろと見回している。
「私たち、さっきまでエレベーターにいましたよね!?なんでいきなり知らない場所に来てるんですか?」
「合わせ鏡だ」
玲香が静かに説明する。
「合わせ鏡には、悪魔の通り道になるや過去・未来が見えるという都市伝説がある」
「ということは、ここは、過去か未来なんですか?」
「それはどうだろうな、悪魔の通り道を通っただけかもしれん」
「悪魔の通り道!?」
女性が顔を青くする。
「ここは、地獄か異世界なんですか?」
「それは調べてみないと」
「な、無い!手鏡がありません!」
女性が手元や服のポケットをまさぐっている。
「あなたの友人もここに飛ばされるときに手鏡を落としてましたし、おそらくエレベーターに落ちているのではないかと」
幸也が窘め先に進もうと提案する。
「そうだな、とりあえず先に進もう」
玲香が手持ちのペンライトで先を照らし、歩き出す。隊列は玲香、女性、幸也の順だ。
少し歩くと前方にぼんやりと明かりが見えてきた。
「ひい!」
女性が短い悲鳴を上げる。前方から低いうめき声のようなものが聞こえてきたのだ。
「ここからは、さらにゆっくり進む」
玲香は明かりを消し、ゆっくり前に進む。
うめき声は徐々に大きくなり、また、それが一人ではないことが分かった。
うめき声は前方にある大部屋から聞こえてくるようだ。
「ひぃ!」
「これは」
そこは地獄絵図だった。10人以上の人間がうめき声をあげ、よだれを垂らし、身体を痙攣させ、または身体を完全に弛緩させ、焦点の合わない目をぎょろりとさせている。
「な、ど、どうなってるんですか、彼らはいったい」
「これは、麻薬中毒か?」
玲香が男性の一人に近づく。近づいたのがわからないのか、ただうめき声をあげているだけだ。
「だめだな、完全に飛んでしまっている」
話しかけても、肩などを軽く叩いてみても反応は同じだ。ほかの数人にも試してみたが、結果は同じだった。
「何人かは、薬と言ってましたね」
「だから、ここはそういう場所なんだろう」
あたりを改めて見回す。何もないただの大部屋に薬物中毒と思われる人がいるだけ。
「あそこにいるのは」
一人だけ、体育座りで縮こまっている女性を見つけた。
「少しいいか?」
「ひい!」
女性はおびえるように顔を俯かせて震えている。
「詩織?」




