第2章 魔術師たちの夜のために5
「また、行方不明、か」
ここ最近行方不明者が続出していた。行方不明者に共通点はなく、情報もないため操作は難航していた。
「星野、仁藤ちょっといいか」
部長の東野理恵が二人を呼ぶ。
「部長、どうしたんですか?」
部長のところに行くと、隣に1人の女性が立っていた。
「この方は?」
「行方不明者の関係者だ」
「あの、友人が神隠しにあってしまったんです」
「神隠し?」
話を聞くと、友人は自宅のマンションのエレベーター内で姿を消してしまったらしい。一緒に出掛ける約束をしていたのだが、時間になっても来ず、電話も繋がらなかった。友人の家に行ったが居なかったらしい。
管理人に監視カメラを確認してもらったところ、エレベーターに入ったところは確認できたが、出てくるところがどこにも映っていなかったらしい。また、エレベーター内のカメラでは友人が突然消えるところも見えたらしい。
「だから、きっと神隠しだと思うんです!お願いします!」
「二人にはこの件をお願いしたい」
玲香と幸也は女性の案内でマンションにやってきた。
管理人室に行き、その時の監視カメラの映像を見せてもらう。友人である女性がエレベーターに入っていく。
エレベーターのパネルの操作をしてエレベーターが動き出すと、女性はバッグから何かを取り出す。
そして、消えた。バッグから取り出した何かを床に落として。
「彼女が落としたものは何かわかりますか?」
「それはこちらです」
管理人が出してくれたのは手のひらサイズの貝のようなものだ。
「これは、手鏡ですか?」
「ええ、これだけが落ちていました」
「これ、お借りしても?」
玲香が聞くと、管理人は頷いてくれた。
「これ、あの子のです。いつも持ち歩いてました」
手鏡を女性に渡してエレベーターに移動する。
「ここか」
玲香がエレベーターを呼び、中に入る。
エレベーター内は特に何の変哲もない、普通のエレベーターだ。入ってすぐ鏡があり、扉の横には階層のボタンがある。
「あの子は子の手鏡をもって消えたんですよね」
女性が手鏡を開けようとしたところを幸也が止める。
「まだ、それは開けないでください」
「え?」
女性は頭にはてなマークを浮かべたままだが従ってくれた。
「このエレベーターに特に何か仕掛けがあるわけではなさそうだな」
エレベーターを調べていた玲香が首を振った。
「となると、やはり」
幸也が女性に向き直る。
「手鏡を開けてください」
「いいんですか?」
「ええ、ですが、何が起きてもいいように覚悟を決めておいてください」
女性は息をのんで手鏡を見詰めた後、覚悟を決めた顔をして、手鏡を開いた。
景色が歪み、視界がブラックアウトした。




