第2章 魔術師たちの夜のために3
壁の奥は物置のような空間となっていた。
「入ってすぐだれかいると思ったんですが、誰もいませんね」
「とはいえ、ここはさっきの場所より魔力濃度が濃い、気を付けろ」
玲香と幸也が警戒しながら進む。
「あの、ここは一体」
恵が不安そうにあたりを見回している。
「ここは、元々ここにあった空間を魔術で拡大した場所だ。さっきの場所以外からだと来れないようになっているみたいだな」
魔術によって空間が歪み、本来よりも空間が大きくなっている。
「とはいえ、この魔力濃度、空間拡大の魔術だけというわけではないだろうな」
「何かの魔術か、儀式か、その類のものはありそうですよね」
とはいえ、と幸也が続ける。
「俺たちの依頼って幽霊騒動なので、もう解決はしてるんですよね」
「放っておけるか?」
「まさか」
2人は空間をくまなく探す。しかし、人も、魔法陣も見当たらなかった。
「ないですね」
「ないな」
だがおかしい。空間を歪ますような魔術を使うなら、それを維持するための核か何かがあるはずだ。
幸也が周りの壁をけり始める。
「あ、あの、何を?」
「この空間、おそらくこの部屋だけじゃなさそうなんで、扉か何かないか探してるんです」
戸惑う恵に幸也が説明する。
「ここか」
音が違う場所を見つける。その場所に向かってイスで氷塊をぶつける。壁が粉砕し、道が現れる。
進むごとに魔力濃度が濃くなっていく。もういつ魔力浸食が起きてもおかしくない状態だ。
「これは、早く核を見つけたほうがいいですね」
「魔力が濃いですね。うっ」
恵が突然呻いた。苦しそうに身体をくねらせている。
「ああ、あああああ」
「恵さん!」
あたりを見回すが魔術が使われている様子はない。恵が壁に手をついた瞬間、その体が壁に吸い込まれていった。
空気が変わる。壁が変わる。
壁に現れたのは、目だ。
目が、眼が、目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が眼が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が眼が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が目が眼が目が目が目が目が目が目が目が目が目が。
二人を見ている、視ている。
魔力浸食が起きてしまった。




