第2章 魔術師たちの夜のために2
遊園地のお化け屋敷はおどろおどろしい気配をしている、ということはなかった。若干魔力濃度が高いくらいだ。この程度なら魔力浸食は怒らないだろう。
「再度確認しますが、このお化け屋敷でだれか魔術師が魔術を使っているというわけではないんですね」
「はい、ここでは魔術師はパレードの演出以外では魔術を使っていません」
玲香の質問に女性が答える。
「とりあえず、入ってみるしかないか」
玲香が幸也を連れてお化け屋敷の中に入る。
中は和風のお化け屋敷となっていた。機械仕掛けのお化けたちが次々驚かしに来る。
しかし、驚かされている2人は仕掛けは無視して調べて回っていた。
「幽霊なんていませんね」
「先に目撃者から話を聞いておくべきだったか?」
特に何も見つけられずに出口付近まで来てしまった。
「何もありませんね」
「やってみるか。陰者(the hermit)、正位置」
意味は精神、高尚な助言、秘匿。
玲香の魔力が広がり、一ヵ所に集まる。
魔力が集まっている場所は、ただの壁だ。何かがあるわけではない。
「ここに何かあるんですか?」
「わからん」
玲香がその壁に触れようとする。
「そこに触ってはだめです!」
空中から声がする。見上げるとそこには少女が浮いていた。そう、浮いているのだ。そして、その少女は半透明だった。
「本当に幽霊がいた」
幸也がポツリと呟く。
「え?私を探してたんですか?」
少女がふわふわと近づいてくる。高校生くらいだろうか。
「私たちは公安警察魔術局所属の魔術師です」
2人は自分の警察手帳を見せる。
「公安魔術局、初めて見た」
「実はここで本物の幽霊を見たという話がありまして、調査に来たんです」
「あ、それは私ですね」
あっさり認めた。
「なぜ、そのようなことを?別にここのスタッフというわけではないんですよね」
ここは魔力濃度が少し高い。幽霊側が上手く魔力を使えれば自分の姿を見せたり、ポルターガイストを起こしたりすることもできる。
「それは、あれです」
少女は壁の方を指さす。
「少し前からそこを入り口にしている魔術師の方がいるんです。その人が来てからお客さんの中に体調が悪くなる人が増え始めまして」
魔力を使って入り口を囲う。
「そもそも、貴女はなぜここに?ここで死者が出たという話は聞いたことがないのだけれど」
少女は、あっといって身なりを正す。
「私は秋波恵です。死んだのは別にここじゃなくて、2年位前に交通事故で死んじゃったんですけど、気が付いたらこの遊園地にいました」
「この遊園地に思い出が?」
「はい、小さい頃からよく来ていて、確か、事故の日?前日?にも来ていたと思います」
恵が首をかしげる。
「まあ、思い出があったからここの地縛霊みたいになったと」
「多分、そうだと思います」
それよりと恵が話を続ける。
「体調が悪くなった人が出た後、ここの魔力が濃くなっていくのがわかりまして、あの魔術師が何かしているんじゃないかって思ったんです」
「なるほど、ここから人を払うために」
「はい、でもそのせいで警察のお手を煩わせてしまうとは」
「まあ、こういうことは私たちの管轄だからな」
玲香が再び壁に手を伸ばす。
「とりあえず、この先にいるんだよな」
「はい、そうです」
玲香が壁に手をつく。玲香はそのまま壁の中に消えていく。幸也も恵も後に続く。




