プロローグ
西暦20XX年
ここは羽撃き研究所
「博士。例の研究は順調ですか?」
スーツ姿の男性が問う
「ほう、これはこれは西条くんじゃないか」
「研究の方は特に問題ない。だがこれを実用化するにはまだデータが少な過ぎる」
そう反応するのは羽撃き研究所の天津博士である。
また博士に訪ねた男性の名は西条正十
羽撃き研究所は世界各国からの一流の技術や知識をもつ科学者や研究員が働くこの国の最先端科学機関。
その研究所のトップ、いわゆる一般企業で言う社長の立場にあたる人が天津博士だ。
現在、天津博士は世界各地で起こる戦争をいち早く終息させる為、政府から最強兵器の開発を任されている。
博士が開発しようとしているのは人間強化型スーツ
通称"パワードスーツ"。戦車や戦艦、大砲や銃などの一般的な戦争の兵器、道具では無く、人間そのものを強化し武器とするもの。しかしスーツを纏えば纏った人間は戦争の最有力武器として使われ最後に死ぬ結末は避けられない。そこで博士はパワードスーツに適合出来る人間を選出する為、オリンピックの世界大会で優勝した選手で実験を行った。結果、パワードスーツとの適合に成功した。
また西条正十の案で動物の特性をプログラミングさせ
研究開始から10年、12体のパワードスーツが完成したのであった。
その頃、西条正十にも子供が生まれ順風満帆な日々が続いていった。
六年後、、、
「パパ!僕、パパの会社に行ってみたい!」
輝かしい眼差しで話す少年。名は西条勇武。
「勇武。連れて行ってやりたいけど父さん会社だと忙しくてな、勇武とずっと一緒に居られないんだ。」
「だから今日は、家で母さんとお留守番してて欲しい」
「帰ったら沢山遊んでやる!」
西条正十は息子の勇武のおねだりに答えられず心苦しい表情で話をしていた。
「華菜子。勇武を頼んだ。それと、、今日はいつもより少しだけ遅くなる」
妻の華菜子へそう言って会社へ向かって行った。
場所変わって
羽撃き研究所
「おはよう御座います。博士」西条正十が言う。
「おはよう西条くん。」博士が返す。
何気ない いつも通りの朝の挨拶だ。
何気なく始まった今日を何気なく終わる
それが当たり前だった、いや当たり前だと勘違いしていたのかも知れない。この時はまだ誰もこの先の悲劇など知る由も無かった。
「おや?地震か?」博士が不思議そうな声で言う。
「有り得ません。この研究所はマグニチュード10強の地震にも耐えられる様に設計されている筈です。揺れなど感じるはずは、、、」西条正十が否定する様に正す
「警報!警報! 侵入者発見。何者かが研究所に入りました。」
サイレント共に警報ランプが鳴り上階の研究員達が慌てて声を上げながら一斉に研究所外へ避難していく。
「何が起きているんだ!」
少し慌てた様子で避難する研究員達の様子を見つめる西条正十を他所に博士は研究所のデータが何ものかに狙われていると予知し長年掛けて完成させたパワードスーツを手離させず、その間にも研究所は倒壊していった。
「私は死んでも研究所を出ん!!ここで逃げたら私と西条君の長年の夢が台無しになってしまう!」
震えながらも豪語する博士の近くで西条正十はこう叫んだ。
「博士!パワードスーツは私に任せて下さい!必ず生きて博士の元へまた届けます。だから逃げて下さい。博士、貴方が死んだらこの国の未来は終わってしまう。」
博士は唖然としていた。そして博士も西条へ向かいこう叫んだ。
「君には大切な一人息子が居たはずだ。ここで君が死ねば息子君や奥さんの華菜子さんも悲しませる事になるぞ!」
西条は涙を流していた。しかし彼の表情に迷いや恐怖は見られない。死の瀬戸際に居る人間の表情とは程遠く微笑んでいた。この時、西条が死に際に博士へ放った言葉
それは「????頼む」
博士には「頼む」の言葉しか聞き取れていなかった。
こうして羽撃き研究所は何ものかの襲撃により倒壊し
世間に大きなニュースとして話題に上がり、混沌と不安を与えた。
天津博士はこれまで稼いだ資金全てを使って新たに研究所を建設して居たが前程、大きくはなかった。それも、あの事故によって働いていた2万数名の研究員達の約半数が亡くなり遺族からの怒りの罵声や嫌がらせが博士ひとりに集まり残っていた資金の半分はそう言った遺族への賠償金に当て残りの資金で研究所を建設したのである。
生前、西条正十は天津博士の助手として研究にも加わっていたとして今回西条正十が死に息子の勇武は世間から
あの厄病博士の助手をして悪魔の息子と名付けられ酷く心を傷つけられていた。そして母の華菜子は世間から誹謗中傷に耐えられず自殺を図り死亡。西条家は悪魔の家族として言い伝えられる様になっていった。
西条勇武は体が弱く6歳になるまで一度もまともに生活した事がなく点滴をしたままベットで過ごしていた。
勇武の病気は何かは分かっておらず医者は特異的なものだとだけ診断を下している。
両親が亡くなった今、勇武を守る大人が消えひとりぼっちとなった孤独な6歳に降り掛かるのは世間からの強い圧力。
そこで罪のない勇武と自分への責任から天津博士は西条勇武を引き取り、それから17歳に至るまで本当の息子の様に育てていった。
11年後
「じいちゃん!おはよう。今日は学校行けそう。」
笑顔で話すこの少年は西条勇武17歳
博士に引き取られてから11年後勇武は仮奈月高校に通う普通男子高校生になっていた。
未だ病気は明らかになっていないが症状も酷くなく現在は落ち着いている為、普通の子と同じ生活が送れている。しかし体を長時間動かしたり激しい運動を出来ないなど病気の症状的な名残も続いてはいたが、笑顔で高校生活を過ごせていた。
「あれ!勇武。今日は学校行くんだね?」
勇武の目を見てそう聞くのは黒髪ボブと髪につけた鳥型のヘアピンが特徴的な女の子。名は天津蒼空
天津博士の孫娘だ。彼女もまた11年前にある出来事がきっかけで祖父にあたる研究所の天津博士の元で暮らしていた。
勇武とは同い年で幼馴染である。
「あっ!お、おう!そうだ。今日はなんか調子良いから久々に学校行こうと思って、、る、、」
照れ臭そうに勇武が答えると蒼空は手を握って嬉しそうに飛び跳ねる。
「やっと行くんだ!私嬉しい。夢だったんだ勇武と、、
一緒に、、登、、、」 「やっぱなんでもない!」
蒼空も顔を赤くさせ言い濁す。
「私先に行くから!遅刻すんなよ!!西条!!」
そう言って玄関を物凄い勢いで後にした蒼空。
「また西条呼びだ。最近多いよな西条呼び
「言いやすいのかな?」
首を傾げながら時計を見つめる勇武も慌てて玄関を後にしたのであった。
「じいちゃん!行ってきます!」
西条勇武17歳 彼の物語がこうして始まるのであった。




