第3話『阿片に酔心〜お薬剣客浪漫譚〜』
「酷い有様だ……」
ここは西の街、エドガー。
元は美しい街並みが広がる観光の名所だったが、今ではもう見るかげもない。
KENTAは地面に落ちた紙幣の残骸を拾い上げながら悲しげに呟く。
「痔は治ったのか、KENTA?」
「ああ、おかげさまでな。もうボラギノールに頼りきりの生活とはおさらばだ」
「ならもうこのタマネギ艦長はいらないな」
「ああっ!タマネギ艦長!」
デッドマンズウォーキングユウキの手に握られているのは、タマネギ艦長。
デッドマンズウォーキングユウキとKENTAの旅を助けてきた芸歴28年の男だ。
「貴様!デッドマンズウォーキングユウキじゃないな!?」
「今更気づいたのか!俺は阿片ジャーズ!貴様に殺された阿片ジャーズだ!闇の力で蘇った!」
「デッドマンズウォーキングユウキを返せ!」
「やつならもうおらんよ。闇の力に封印された」
阿片ジャーズはそう言うと、闇の欠片を取り出した。
闇の欠片とは、闇の力の欠片だ!
「クソ!デッドマンズウォーキングユウキ!うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
KENTAは泣いた。
その涙が奇跡を起こした。
「帰ってきたぜ俺が!」
なんとデッドマンズウォーキングユウキが帰ってきたのだ!
「くっ!やはり闇の欠片では封印の力が足りなかったのか!?」
「俺を封印したければ夢の国でも破壊することだな」
「クソッ!うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
阿片ジャーズは懐から注射器を取り出し、自らの首に突き刺し中の物を注射する。
「ぐわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
阿片ジャーズの身体が膨らむ。
「何!?これが阿片の力だと言うのか!?」
「違う。これは覚醒剤だ」
「なんだと……ああ!タマネギ艦長!」
タマネギ艦長は潰されて死んだ。
「タマネギ艦長の仇!」
KENTAは阿片ジャーズにロケットランチャーを向ける。
しかし、弾が切れている。
「何!?ぐわぁ!」
KENTAが吹き飛ばされ、血を吐く。
闇の欠片に力の大半を持っていかれたデッドマンズウォーキングユウキは、上手く動けないでいる。
「クソが!俺達の旅はここで終わりなのか!」
「諦めるなKENTA!まだ打つ手はある!」
「あるわけが無い!諦めろ!」
阿片ジャーズは叫ぶ。
しかしその瞬間、突然頭を掻きむしった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
「何が起きたんだ?」
KENTAは目を丸くする。
「覚醒剤の影響だ。もうあいつは助からんよ」
デッドマンズウォーキングユウキはそう言うと、黒いローブをはためかせてその場を去った。
「おい待てよ!デッドマンズウォーキングユウキ!」
KENTAはそれを追いかけ、西の街を去った。
しかし、そんな後ろ姿を見つめる1人の女がいることを、この時のデッドマンズウォーキングユウキとKENTAは何も知らなかった……。
「あれが、KENTA様……!なんてカッコイイ……!」