8.冒険者団シリウスの星
私は久しぶりに心の安息を得た、代わりにセクハラを受けたけど......
メランセル村の冒険者ギルドにイスカリオテ教団の仲間が次々と到着した
ギルドの受付の間を借りて、ヤン・ベルグシュタッド司祭より作戦説明が行われる事になった
会議ではイスカリオテ第13機関の戦いに初めて参加する私や王都の冒険者達の紹介もあった
陣営は、
イスカリオテ教団第13機関
特別戦隊
マスター、ブラド・ツェペシュ
私、アリス・プレゼンス
イスカリオテ魔戦軍団
円城流剣刀術使い、円城まなみ
妖糸使い、アグネ・ソーダーステン
夢見使い、アラン・ストロンベルグ
断裂使い、ダニエル・ビーストロング
王都冒険者団 シリウスの星
団長 シモン
副団長 トーレ
以下20名
続いて、作戦説明だ
「先ずは作戦の概要を説明する。
特別戦隊のブラドと魔戦軍団3名は引き続きメランセル村の人工獣人の手掛かりを探せ
特にサロメ教団の施設を念入りにな」
「ちょっと待ってくれ!」
「お前は確か......」
「王都のSクラス冒険団、シリウスの星の団長シモンだ
宗教間の争いに加わるつもりは無いぜ」
「これは宗教間の諍いでは無い。国王陛下からの勅命だ
以前より、謎の獣人による小さな村の壊滅事件が数度起きた
そして、この村に人工獣人化に関する施設があるという情報が寄せられた為、私達は来た
しかし、先んじて、この村は壊滅寸前にされて、
おそらく手掛かりは抹消されているのだろう」
「じ、人工獣人だと?」
「そうだ。獣人はそれ程の数はこの大陸にいない
しかし、被害を考えると、信じられない数の獣人がいるとしか考えられない」
「それは、つまり......」
「そうだ、魔法により、人工的に獣人が作られていると考えられる」
「サロメ教団がそれに関わっているという証拠は?」
「今のところ、はっきりとは無い
だが、この獣人の件を調査していると、必ず、サロメ教団と関わる事になる」
「我々はサロメ教団が関与している事を前提に戦う事になる」
「た、戦うって、俺達はあくまで護衛の仕事を受けただけだぜ」
「心配するな。直接の戦いに参加してもらう必要は無い、
お主ら冒険者には私の身を守ってもらいたい」
「わかった
あくまで護衛の範囲だな。防衛戦は有利な戦いだ。それなら勝機は高い」
「そうだ。私が宿泊している宿や馬車での移動中だけを守ってくれればいい」
「あり得ない戦力と対峙したら、逃げるぜ」
「冒険者の世界は理解しているつもりだ。勝算が無い場合、撤退して構わん」
「つまり、あんたを見捨ててもいいという事だな」
「ああ、理解している」
「......」
冒険者のシモンはもう一つ納得がいかないのだろう。実は私もどうも納得がいかない
何のために冒険者を雇ったのだろうか?
私達は隣街のオーシャスビークに向かった。私は冒険者達と一緒の馬車に乗り合わせた
マスターは他の魔戦軍団の人と未だメランセル村だ
「お嬢ちゃんも冒険者なのか?」
「そうですよ、これでもFクラスの冒険者なんだからね」
えっへん。私は自慢げに言った。なかなか女の子の冒険者はいないんだもん
「「「ぶっははははは」」」
「なんですか、皆さん、私、気を悪くしちゃうんだからね」
「ごめん、ごめん、そんな、冒険者だからって自慢げに言うから」
「ヒー、おかしい」
かなり馬鹿にされているけど、私は心地良かった
あの懐かしいメランセル村での冒険者の頃が懐かしい
私は冒険者ギルドでみんなから愛された
女の子の冒険者は珍しい。魔法に長けた才能があるとか、特別な才能があるなら別だ
私は普通の女の子だった。私が冒険者になったのは、食べていく為だった
お爺ちゃんは小さな畑を持っていたけど、家族3人を養う程のサイズではなかった
お爺ちゃんは3年前に冒険者をリタイヤした
剣技は衰えずとも、歳で、冒険の行軍についていけなかった
私が働かないと生活がままならなかった
「聞いてください。私、薬草の選別はもう、天才だと自負してます
一目見たら、大抵の薬草の種類わかるんです。えっへん」
「それ、鑑定の魔法使ったら、一発なんじゃ?」
私は涙目になった。もちろん、嘘泣き用涙目だ
「シモンさん、そんなに馬鹿にすると、私、泣いちゃうんだからね」
私は嘘泣きの用意をした。特技だ。大抵みんなこれで、落ちる
男の人、チョロい
ちなみに私のツンデレ口調は天然では無い、
これが、メランセル村の男の人に凄い受けが良かったから、演じてた
もちろん、最近は馴染んで、割りと自分では演じているという自覚は無い
「あー、わかった。わかった。泣くなよ、流石に罰が悪い」
「それにしても、Fクラスのアリスちゃんが何故、こんな胡散臭い依頼を受けたんだ?」
シモンさんは私が参加している事に疑問を感じた様だ。吸血鬼な事はあまり口外したくない
「私、あの村の冒険者の生き残りの一人なんです
それで、この教団に入りました
私、冒険者としてじゃなくて教団の人間になって、みんなの仇を討ちたいんです」
「やっぱりか。喪服のアリスちゃんを見かけた様な気がする」
「私、仇を打ちます。弟と、お爺ちゃんと、そして大好きなアーネ先輩、みんなの!」
「......」
一瞬、冒険者のみんなが静かになった。冒険者は身近な人を亡くした人が多い
「ア、アリスちゃーーーーーーん」
シモンさんが断りもなく、私を抱きしめる
「俺の胸で、泣いていいんだよ。たくさんお泣き」
シモンさん、暑苦しい、というか、主に胸に体くっつけてるでしょう?
わかるんだからね、私、胸、Fだから、結構、みんなの目とかに色々狙われてきた
「ちょっと、シモンさん、私の胸に顔埋めるの止めてください」
「いや、ちょっと、これは止められない!」
「誰ですか?
俺の胸で泣けとか言ったのは?
なんで、シモンさんが私の胸で泣いてるんですか?」
「俺は、ダメなんだ、涙脆くて、あと巨乳は大好物なんだ」
「前半はともかく、後半のはただのセクハラでしょう!」
「シモン団長、どさくさに紛れてそりゃずるいぜ。一人だけ!」
「そんな事言ってないで、さっさとシモンさんを引き剥がして下さいよ!」
「ああ、わかったよ。ほら団長、いつまでもセクハラはやばいぜ」
「いや、俺、ここで死んでもいい」
だから、駄目だって
渋々シモン団長は引き剥がされたけど、
「やっぱり、俺もその胸で癒されたい!」
助けてくれた副団長のトーレさんが、ミイラ取りがミイラになった
「いい加減にして下さい!」
私は思わず殴った
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