7.吸血鬼の宿命
吸血鬼になった。という事がどういう事か私は段々理解してきた
私とこの村の生き残りのみんなで、先輩や、弟、お爺ちゃんの葬儀を行った
久しぶりに喪服を着た。弟とお爺ちゃんの葬儀は辛かった。私が喪主で、親戚は誰もいないからだ
私にはもう、誰も家族がいない。そう実感させられた
そして、アーネ先輩と冒険者達の葬儀。アーネ先輩には家族がいなかった
アーネ先輩とは、7才の頃から一緒に育った。アーネ先輩の家はうちのすぐ近くだ
よく、ご飯のお裾分けを持って行った
先輩の両親と私の両親は同じ冒険者仲間同士だった
それが、8年前の冒険中に魔物との戦いに破れて死んだ。魔物は吸血鬼だった
それで、私とアーネ先輩はこの村に移り住んだ。お爺ちゃんがこの村に住んでいたからだ
先輩は身よりがいなかったが、昔のお爺ちゃんの友人の冒険者が空いている家を貸してくれた
それで、この村で冒険者として生活し、メキメキと頭角を現した
先輩が私を好きだったと過去形で言ったのは、私が吸血鬼になったからだろうか?
先輩の両親は吸血鬼に殺されている
解らない。あの時は自身が吸血鬼だと、知らなかった
先輩に気持ちを聞けなかった......
お葬式の後、マスターが私に色々教えてくれた
「アリス、ステータスの魔法を使ってみろ」
「ステータス魔法?
ですか?」
あれはかなり魔力がいる魔法、私の様に魔法を満足に修練していない人間が使える筈が......
「ステータスと唱えるだけだ。今のお前の魔力なら、使える筈だ」
「わかりました」
『ステータス』
魔法の言葉を唱えると、私の頭に文字が浮かんで来た
「何!
何これ?」
「それがステータスの魔法だ」
「私、魔法なんて使った事が無いのに」
「お前が血を飲んだお前の先輩と冒険者の女の魔法や技だ」
「わ、私、先輩の雷神剣が使えるんだ」
「その様だな」
「????」
私のステータスが見える?
そんな訳が、ステータスの魔法は他人には見えない筈
「アリスのステータスの魔法を見てるんじゃ無い
私の魔法でアリスのステータスを見ている」
「あ!
そういう事ですか」
マスターは私が怪訝そうな顔をしているので、答えをくれた
「お前の先輩の技、なかなかいいな。
それにあの魔法使い、あの歳でよくこれだけ魔法を覚えたものだ」
私はマスターが、先輩やあの冒険者の女の血を飲ませた理由の一つがわかってきた
「これから、たくさんの人の血を飲まなければならないんですか?」
「私達は人の血を飲まないと生きていけない
それに私やアリスは血を飲む事で、他人の魔法や技を習得できる
吸血鬼は血を飲む事で強くなるが、私やアリスの様に、これはできない
1000年以上生きた私の花嫁のお前は、他の吸血鬼には無い能力を持っているんだ」
「罪を犯して無い人の血だったりしませんよね?」
私は聞いた。先日の少女、私は憎かった。だけど、本当に死んで当然の人間だったのだろうか?
本当に罪を犯しているのは獣人を操った人間だ。彼女じゃ無い
「......」
マスターは無言だった。それは私が何も罪を犯していない人の血を飲む可能性の肯定だ
私は泣き出してしまった。たくさんのみんなの死、そして自身のこれからの生き方
「私、こんな事になるって、聞いて無いんだからね、えっ、えっ、」
「すまん。私が巻き込んだ。私がアリスを見染めたからだ」
「ふぇ、ふぇーん。えっく、えっく」
私は子供の様にギャン泣きした。今まで、ずっと我慢してきた
でも、その張り詰めた糸が切れた
私は泣き続けた。そんな私に
「泣け、たくさん泣け。辛い事は誰にもある。そんな時は泣くといい」
そういうとマスターは私を抱きしめた
私はマスターに甘えて、マスターの胸の中で泣いた
たくさん泣いた。そんな私の頭をマスターは撫でた
普段なら、こんな子供扱い、嫌だけど。今はただ、マスターの胸の中で泣いた
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