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6.罪と罰

私達バンパイヤが生きていくには、それは......

ヤン司祭は色々な事を教えてくれた


 この国の主たる宗教は堕天使ルシフェルを祭るルシフェル教だ


 だが、かつての旧世界、1000年前の7日間戦争前まで、世界には主となる宗教があった


 その宗教が3つに分裂した


 一つがイスカリオテ教団、私達の教団だ。表向きは聖典にある裏切り者を祀っている


 しかし、真の姿はかつての神を今でも崇める宗教だ。この事はほとんどの人が知らない


 国王ですら知らない


二つ目がギリシャ正教会、7日間戦争前の古い世代から信じられていた教団だ


 彼らは未だに人間を滅そうとした神を公然と崇拝している。異端中の異端だ


 この教団とは友好関係にある。この教団の真の姿を知っているからだ


 それに、1000年前より、共に人類の為、戦い続けた盟友でもある


 魔法はイスカリオテ教団とギリシャ正教会の共同研究から生まれたのだ


三つ目がサロメ教団だ。この教団は比較的新しい


 500年前バラバラだった旧世界の主教が一つになった


 信心の根拠等は謎が多い、同じ神を祭るこの教団にも考えがわからない


 イスカリオテ教団を初め、かつての主教を端とする教団は全てが異端扱いだ


 だが、裏で、この国の中心に根付いている


 国王を初め、多くのものにとって、有能だからだ


 すなわち、魔物、魔族研究、討伐のプロフェッショナルだからだ


 そして、マスターの事、マスターは500年前迄、人の世界にひっそり住んでいた


 だが、ある時、1つの街を滅ぼし、イスカリオテ教団に討伐された


 だが、マスターは簡単に復活する事がわかったので、


 当時の第13機関の司祭と主従契約魔法を取り交わした


 マスターにとっても生きづらかったのだ。一人、人間の世界に住む事が


 お互いの都合、お互いの利益があった


 それ以来マスターはイスカリオテ教団で魔物や魔族討伐に尽力している。500年も......


 私の事も説明してもらった


 高位のバンパイアはパートナーを一人選ぶ


 それが私、この教団では、私の存在をバンパイアの花嫁と呼ぶ


 前の花嫁は亡くなったらしい


 その他、バンパイヤは血に狂う、激しい負の感情が起きると視界は真っ赤になり、殺戮を始めるバーサーカーとなる


 その為、自制心は極めて重要らしい


 又、吸血行為も程々にしないと血に狂い、こちらは果てしなく吸血行為を繰り返す事になる


 マスターは500年前、この血に狂った吸血鬼と化し、数千人を殺戮し、たくさんの人の血を飲んだらしい


 ヤン司祭と従属の魔法を取り交わした後、ヤン司祭は私に言った


「アリス、お前が我が命に背けば、魔法により、その身は滅びる


 例え吸血鬼であってもな」


マスターは


「アリス、しばらくは私の言う通りに従え、最初は納得できない事ばかりだ


 だが、しばらくすれば判る様になる


 人間の性もバンパイヤの性も根本は同じだ」


「マスター、わかりました」


私は答えた。その時、音が聞こえた。人が近づく音、女性だろうか?


 だが、足音は驚く程整然としている


「司教!」


「円城か、入れ」


ガタリ


扉を開けたのは女性の戦士だった。見慣れぬ出で立ち姿だ


「円城まなみ。入る!」


「円城、どうした?」


「例の魔法使いを捉えてやったぞ」


「ほう、逃げられたかと思ったが、良く、捉えた」


「俺様を見縊るな。あんな冒険者を捉える事など造作も無い」


この見慣れぬ女戦士は発言と見かけにかなりのギャップがあった


 豪傑の男の様な口調とは裏腹に、見かけは美しい少女だった


 多分20才にもなっていない


「円城、この娘がブラドの新しい花嫁だ。アリスと言う」


「よろしくお願いします」


「ふ〜ん、ロリ巨乳か?」


「な、なんて事言うんですか?


 そんな事言うとブッチめるんだからね!」


「なんだと俺様をブッチめるだと、聞き捨てならんな!」


「まあ、二人共、懇親会は後程考えるから、今は止めておけ、


 先ずは、今後の方針決定が教皇から数時間以内に来る、円城は出立の準備をしておけ」


「判った、全く、俺様が命令を聞かねばならんとは、悲しきは宮仕だ」


「それと、捉えた魔法使いをこの部屋へ連行しろ」


「ああ、判った。可哀想にな」


「円城!」


「ああ、すまん。聞き逃してくれ」


☆☆☆


魔法使いは少女の冒険者だった


「わ、私はただ、転移の魔法を使っただけで、関係無いわよ」


「お前、名前は?」


司教が冒険者に尋問した


「ベネディクトよ。オーシャスビークの冒険者よ


 この依頼もギルドの正式な依頼だったんだから」


「ギルドへの処分は追って行う」


「処分って、私は転移の魔法を使っただけじゃない!」


「獣人達を転移させれば、人に危険が及ぶと思わなかったのか?」


「思わなかったわよ。研究の為だって聞いてたから、


 それに依頼人は立派な身なりの人だったのよ!」


「お前の転移させた獣人はこの村の住人や冒険者約100名の命を奪った


 それでも、お前に罪が無いと言いきれるか?


 報酬はいくらだった?


 法外な値段ではなかったのか?」


「それは、確かにとんでもなく高額な報酬だったけど、


 でも、信じて!


 知らなかったの、こんなに事に使われるなんて


 私だって、知ってたら......」


「お前の処分は先程、既に我が教団を通じて国王陛下の決定が出ている」


「しょ、処分って、私、牢に繋がれるの?


 嫌よ。私、悪く無い。利用されただけよ!」


「勘違いするな。お前の処罰は投獄では無い」


「な、な、な、なんなの?」


女冒険者、ベネディクトは怯えた表情で聞いた


「死罪だ」


「ひ、ひゃ


 わ、私、悪く無い、お願いです。助けて、何でもします。だから、お願いします」


「アリス、この女が憎いか?」


「憎いです。この女がいなければ、村のみんなが死ぬ事はなかった」


「では、処分はお前に任せる」


「アリス、お前の食事だ。俺達はこういう機会にしか、食事が出来ない」


私はペロリと舌なめずりをした


 この子、処女だ。わかった。血の甘い香りがする。どこか、怪我をしているのだろう


 だから、いい香りが漂う


 甘く、魅惑的な香りだ


「あ、あなた、酷い事しないわよね。ごめんなさい


 謝るから、何でもするから、だから、お願い、許して」


「許さない!」


ギリギリギリ


私の牙がせり上がる


「あ、あなた、人間じゃないの?


 ば、化け物!


 た、助けて、お願い、お願いだから


 私は、本当に騙されただけなのよ!」


トン


と地を蹴る、私の体は簡単に飛んだ。この子には見えなかっただろう


 一瞬にして消えたと思っただろう


フワリ


私はこの子のすぐ後ろに降りたった


「ど、どこに消えたの?」


「ここよ」


「!?」


ガブリ


私は後ろから無防備な彼女の首筋を噛んだ


「あっ。あっ.....」


彼女は涙を流していた


 後悔、それとも悲観?


 わからない。だけど、私の心にある復讐の炎はこの少女を殺せと言っている


 例え、自身のやった事の先が見えなかったとしても、犯した罪が大きすぎるのだ


コクッコクッ


私の喉を血が通る


 処女の血、これ以上に無い美味、そして


「あ、あん」


不思議な事に彼女は恍惚とした表情を魅せている


そして、私にもこれ以上に無い快感が襲っていた


「アリス、今日はそれ位にしておけ、これ以上飲みすぎると、血に狂う」


「はい、マスター」


牙を彼女の首筋から外すと私は答えた


「血の快感に酔うなよ。血の快感は飲めば飲む程大きくなる」


「ブラド、お前がそれを言うか?」


ヤン司祭が言った。それが500年前におきた事の原因なんだろう


「俺も飲ましてもらうぞ」


「ああ、お前、最近食事を摂って無いだろう」


恍惚な表情を浮かべるベネディクトはピクピクと痙攣していた


 そして、マスターの牙が彼女の喉を穿った


ゴクッゴクッ


ベネディクトはもう恍惚の表情をしていなかった


 血を失い過ぎて、もう、意識は無いのだろう


もうじ時期、死ねだろう


「この子も吸血鬼になるのですか?」


「ならん。吸血鬼にするには特殊な方法がいる


 噛んで簡単に吸血鬼になるのは何世代も後の劣化した吸血鬼だ


 アリス、お前は劣化した吸血鬼しか知らないだろう?


 お前は理性を失わない。だが、劣化した吸血鬼は理性を失う


 そして、吸血衝動だけがあり、誰でも襲い、犠牲者を増やす


 それだけでは無い、下等な吸血鬼に噛まれた非童貞、非処女は吸血鬼ではなく、


 更に下等なグールになる」


ヤン司祭が教えてくれた


「その子の亡骸はどうするのですか?」


「森に捨てておく」


罪人でも弔い位は許される筈だ・・・・・・


・・・・・・私はこの死罪の意味が判った


本当の死刑では無い。私達への食事を与える判断


 それがこの刑なんだろう

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― 新着の感想 ―
[良い点] 聖書の世界から派生したかのような世界感。 復讐の衝動と処女の生血を味わうアリス。 [気になる点] 円城まなみという女。 転移者なのか、それともこの世界に日本が存在しているのか。 あとベネデ…
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