表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/39

39.エピローグ

ようやく最終回です。

 魔王が滅んで、それは現れた。輝く白銀の光の中、12翼の羽根を持つ美しい男が現れた。


「おめでとう。無事、人は最初の魔王を倒せたんだね。ようやく僕も解放された」

「あ、貴方は誰ですか?」


 私は察しはついていた。ハイエルフの女王から魔王を倒せば堕天使ルシフェルが顕現すると予言されていた。しかし、目の前にいるそれはあまりにも美しかった。堕天使とはこれ程美しいものなのか? 言い伝えでは、堕天使は醜い姿を持つとされている。だから、これが本当に堕天使ルシフェルなのか確信が持てなかった。


「僕は堕天使ルシフェル。てっきりエルフの伝承で知っているかと思っていたが...ああ、そうか! この姿か! この姿は紛い物だ。僕も心があってね。醜悪な姿を晒したく無いんだ。この姿はまだ、天使だった頃のものだ。今の僕の本当の姿を見られるとね。僕も傷つくんだ。それに、人は見かけで判断する困った点もある。だから、神もこの姿で顕現する事を許したんだ」


「貴方が堕天使ルシフェルなのね? 教えて! 貴方の知っている事を! 何かあるんでしょう? だから、顕現したんでしょう?」

「そうです。教えてください。私達はどうすれば神に許されるのですか?」


 カタリナとダニエルさんが聞いた。そうだ。私達の最大の目的。それは、神に許されるにはどうすればいいのか? 1000年前の最後の審判で、人は断罪された。その裁きで人は有罪だった。人は生きる事は許されたが、罪は許されていない。どうすれば人は神から許されるのか? もし、堕天使ルシファーがそれを知っているなら?


「まあ、そう急がないで......僕も久しぶりに人と話せて楽しいんだ。少し、身の上話に付き合ってくれないかな? その後、お礼に僕の知っている事を話すよ」

「ルシフェル様の身の上話って、何なんですか?」


 カタリナが聞いた。カタリナは不思議だったのだろう? 堕天使が身の上話? 私も不思議だった。まるで、人間みたいだ。


「ありがとう。聞いてくれるんだね。そう僕の身の上話。それは何故、僕が堕天使になったかだ。それは、僕の神に対する恨みと人に対する妬みだ」

「神への恨みなど......」


 ダニエルさんが言い淀む。神へ使える身でもある彼には神への恨みなど、神への冒涜だ。しかし、私は神官では無い。


「教えてください。貴方の神様への恨み、人への妬み。何なんですか?」

「是非聞いて欲しい。何、話したからと言って何も変わらないだが、話すと楽になるんだ。僕は他の天使より、人間に近いんだ。そもそも高位の天使程、人間に近い感情を持っているんだ」

「堕天使にも人間の様な感情があるんですか?」

「もちろんだ。感情があるから、神に背いた。理性しか無ければ、その様な馬鹿な事はしない。僕は神に戦いを挑んだ。多分、みんな僕が自身の力に驕って、神に戦いを挑んだと思っているんじゃ無いかな?」

「私達の伝承では堕天使ルシフェルは力に驕り、神に挑んだとあります」

「やはりか.......それは違う、僕が神に勝てる訳が無い。神の存在は絶対だ。神がその気になれば、一瞬で僕の存在は消える。それなのに、驕る訳が無いだろう?」

「じゃあ、何故、神へ戦いを挑んだのですか?」

「反抗期かな......」

「は、反抗期?」

「ああ、反抗期だ。君達人間は親に反発する時期があるだろう? 親の庇護の元に生きている癖に生意気に親に反発するだろう? それと同じだ」

「貴方は何に反発したんですか?」

「そうだ。それを聞いて欲しかったんだ。僕は、人間に嫉妬した」

「人に嫉妬ですって? そんな、天使様が人間風情に......」


 カタリナが驚いた様な台詞を吐いた。私も同感だ。信じられない。


「僕も感情が芽生えたんだよ。人と同じ様に、下位の天使の様に唯の道具ではなく、人の様に感情が芽生えた。そして、解ってしまったんだ。神は人を愛し、天使を愛していない。天使とは、人の為の道具に過ぎないんだと......」

「天使が道具?」

「そうだ、天使はこの世界を存続させ、人を導いたり......人の為の道具だ。だから、ほとんどの天使は感情を持たない。道具にそんな物は必要無いだろう?」

「道具だったとしても、神様は天使様に酷い事をしたんですか? そんなの聞いた事がありませんが?」

「神は何もしていない。ただ、無関心だった。そう、無関心だったんだ。神には私達天使はどうでもいい存在だったんだよ。神は人を愛した。そして、愛する人の為に天使を作った。そして、神は私達天使を見てくれない。それに気づいた時、僕がどんなに悲しくなったと思う?」

「貴方は神様を愛してたんですか?」

「そうとも、僕は敬愛する神を愛していた。愛するという感情が芽生えていた。だから、それが裏切られた時のショックは大きかった」

「・・・・・・」


 皆、無言になった。堕天使ルシフェルの告白、愛するが故に神を裏切り、愛するが故に恨んだ。何となくわかった。人間も同じ様な感情を持つ事がある、それは友人であったり、愛する人であったり、家族であったり......ルシフェルも又、人と同じ感情を持つというのだ。


「まあ、僕の身の上話はこんな処だ。僕が神を愛し、人を妬んでいる事は解ってくれたろう?」

「それはわかりました。でも、わからない事があります」


私はルシフェルに聞きたかった。では何故、ルシフェルは人を助けたのか?


「貴方は何故、人間を助けてくれたのですか? 人を妬んでいたんでしょう?」

「ああ、私は人が妬ましい。嫌いだと言ってもいい。だが、だから助けた。君達人間、いや君とその子は半人半魔か・・・まあ、それはともかく、憎むべき人間がいなくなったら、僕や他の堕天使はどうすればいいんだ? 僕たちは君達人間を甘言で、欺き、堕とし、嘲笑うのが趣味だ。そして、堕ちた人間を悲しむ神の事を想うと、余計楽しい。その楽しみを奪われてたまるか! 僕達は人が憎いが、無関心ではいられないんだ」

「自身の為に助けたと言うのですか?」

「そうだ。それに、神にもっと苦しんで欲しかった。僕には何の興味を示してくれない神に、苦しんで欲しかった」


「私達はどうすれば神に許されるのですか?」


ダニエルさんが真剣な表情で聞く


「そうだな。順を追って話そう。どうすれば許されるか? の前に、人は何をしたのかを理解する事だ」

「人間が一体何をしたと言うのですか? 人間なんてちっぽけな生き物ですよ?」

「いや、1000年前の君達の祖先は科学と言う武器を持つ、地上の覇者だった。そして、海を汚し、陸を汚し、空を汚した。ついにはこの世界の環境を破壊する程にね」

「それは罪な事なのですか?」

「罪だよ。神の作り出した世界を汚し、多くの他の生命を絶滅に追いやった。神は人間だけでなく、この世界を愛していた。人間がこの世界を破壊し、最後は自身が絶滅すると言う状態になっていた。全ては科学がいけなかった。もっとも、人間に科学という知恵をつけるきっかけは僕達堕天使の仕業なんだけどね」

「旧約聖書の創世記にある記述は真の事だったのか?」

「ああ、そうだ。僕達が人間に知恵の実、りんごを食させた。そして、知恵でこの世界の覇者なり、傲慢になった。神が許す訳が無いだろう」

「しかし、もう、科学はありません。私達は何もなく、ただ、生きるのがやってです。それなのに許され無いんですか?」


「神は人を試されたんだよ。僕は神様に言った。人間が科学を持ったのは、この世界に秩序を与えた神様が悪いと......だから、もう一度、チャンスを与えるべきだと」

「しかし、私達にはそんな力なんて!」


ダニエルさんが叫んだ。その通りだ。人間は生きるのがやっとだ。チャンスってどうすれば?


「いや、神様は君達にチャンスを与えた。自身で勝手に掴んだ武器、科学ではなく、神様が与えた魔法でだよ」

「魔法がチャンス?」

「そうだよ。神様は君達にチャンスを与えた。神が与えた武器、魔法で、君達が創造した科学の権化を倒す様に」

「科学の権化って?」

「魔王や魔族、魔物だよ」

「魔王や魔族、魔物が科学の権化だと?」

「そうだ、魔王、魔族、魔物は君達人間がかつて創った科学の産物の象徴だ。だから神様は自身の手で、科学を滅ぼせと言っておられるのだ」

「じゃあ、魔王魔族や魔物を倒せば、私達は許されるのか?」

「いや、それだけではだめだ」

「それは一体?」

「妖精族だ。エルフやドワーフ、妖精族と共にある事だ。妖精族は君達人間が汚した空、土、海の象徴だ。君達が魔王を滅し、妖精族と共に生きる事ができたなら、神は人を許すだろう」


「私達、ハイエルフの女王に・・・・・・」


「その様だね。だから、魔王の力が強くなった。だが、君とそこの半人半魔の二人のおかげで、魔王ビスマルクを倒せた様だ。エルフを害したりしなければ、もう少し、楽だったんだろうに」

「そ、そんな、人間がハイエルフを害さなければ、マスターは、もしかして」

「ああ、君とそこの女の子のご主人は死ななかったかもね」

「クリストフ様!」

「マスター!」


「あまり悲観しない事だ。君達反人半魔にも意味がある事なんだ」

「私達に意味?」


「ああ、人が科学で害したのは自然や他の生命にだけでは無い。人は同族である、人間にすら、科学を用いて、害した。人を武器とする事があった。それが君達半人半魔の象徴だ。ちょうど、魔王が人の科学の最悪たる武器の象徴であると同時に、君達は人と武器の融合した存在なんだ。君達人間は戦争や人殺しに人の命を使った。爆弾を抱えさせた子供や女で敵を滅した。人が乗った武器で、敵に体当たりをさせた。人の命さえ、戦争や人殺しの道具に使った」


「私は望んでここにいます。人に使われたんじゃありません」

「私もです。人に使役された訳ではありません」


「それは解っている。君達に人がどう接する事ができるのかが、問題だったんだよ」


「人は彼女らを害したのでしょうか?」

「いや、そうでも無い。二人は望んで協力した。亡くなった二人もだ。強制した訳では無い。だから、神様は黙して語らないのだろう」

「じゃあ、私達の事が許されているのなら、妖精族と仲良くすれば、神様は許してくれるんですか?」

「何を言っているんだ。君達は12人いる魔王の一人を倒しただけじゃ無いか? まだ、始まったばかりだよ」


「じゅ、十二人・・・」

「もちろん、君達が倒したビスマルクは一番弱い魔王だ。だが、安心するといい。神様は一番最初の魔王討伐へのハードルをあげたが、これからは人に力を与えてくれる」

「神様が力を?」

「ああ、君達の魔法はより強くなる。そして、魔王を倒す度にプレゼントがある」

「プレゼント、何なんですか?」

「ジーダスペインだ」

「なんですか? それは?」

「かつて、人の神の使徒の痛みを封じた物だ。人の痛みは人への想いから来ている。その痛みを核にした物だ。それに、初回は特別に私がもつ、特別なジーダスペインをあげよう」

「副作用とか無いんですか?」

「察しがいいな。もちろんある。このジーダスペインを使うと人は数十倍強くなる。だが、使用すると激しい痛みがある」

「痛みだけなんですか?」

「ああ、痛みだけだ。もっとも、長い間使い続けると神経が耐えられず死ぬかもしれんがね」

「そ、そんな」

「まず、私のジーダスペインを吸血鬼の君にあげよう」

「わ、私ですか?」

「一番適任だろう。何故なら、僕のジーダスペインは使徒の中でも裏切りの使徒の物だ。だから、普通の人間が身に着けると死ぬ。だが、君は既に死んでいる。吸血鬼だからね。それと、魔王ビスマルクのジーダスペインはそこのウォーウルフのお嬢さんへ渡すといいかな?」

「そうしてください。彼女は人の仲間では一番強い」

「では、ジーダスペインを授けよう」


 私に向かって、黒く光る物が近づき、私の中に入った。そしてカタリナには白く光るものが入った。


「これで、僕の役目は終わった。これで、神との約束を果たした。これから、堕天使は人を誘惑して、堕とす様になるだろう。覚悟しておく事だ。そして、妖精族と仲直りし、全ての魔王を倒す事だ」

「わかりました。魔王を倒し、妖精族と共に歩みます」

「まあ、これからは僕達が邪魔をする事もあるけどね」

「・・・・・・」


「さようなら。人が生き延びる様、願っているよ。僕の為にね」


 そう言って。堕天使ルシフェルは消えていった。


 この日より、人間の世界の魔法が変わった。これまで、治癒の魔法はヒールのみだった。わずかに回復できるだけの魔法。それにハイヒールが加わった。大きな怪我をしてもたちまち治る魔法。この魔法のおかげで、人類は信じ難く強くなった。そして、私とカタリナは翌年、イギリスの魔王、プリンス・オブ・ウェールズを滅した。アグネさんがジーダスペインを得て、かつての私達と同様に強くなった。


 ヨーロッパ帝国皇帝は何度も森の奥へ赴き、ハイエルフへのお詫びを何度も何度もした。そして、ついに、ハイエルフに許されるまでになった。ハイエルフの里と人の世界へは自由に行き来できる様になり、人はハイエルフを決して害さない法ができた。もちろんドワーフ族共、同じ様にした。




 そして200年が過ぎた。私は船の甲板に立っていた。目の前には最後の魔王がいる東京が見える。ここが、まなみの故郷、日本、最後の魔王がいる島。


「行くわよ。カタリナ、まなみ、アドロフ!」


 私は自身の花嫁、まなみを呼んだ。まなみは孤児だが、死にそうな処を私が花嫁にした。彼女は黒髪黒目だった。日本人の血が強く残っている。彼女の姓は円城、まなみの親戚、アリスの子孫かもしれない。そう思った。


 この戦いに勝てば、人は神に許される、そうあってもらいたい、私は最後の戦いに望んだ。以前の様な苦しい戦いでは無いだろう、私達半人半魔だけでなく、人は力を得た。ジーダスペインは魔戦軍団や聖騎士団の人達に与えられた。彼らは私達と同様不死身だ。既に人には完全復活の魔法「セイキュリッド・リザレクションを習得した。魔王にアドバンテージは無い。


 戦いが終わったら、どうなるんだろう? 再び最後の審判を受けるのだろうか? でも今はそんな事は考えても仕方無い。私は最善を尽くす。それがまなみとの約束だったから・・・

よろしければ評価・ブックマーク登録をお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] この戦いに勝利して人は神に許されたのか、 それとも再び最後の審判を受けるのか そもそも勝つことは出来たのか、 [一言] 完結おめでとうございます。 そしてお疲れ様でした。 実は途中か…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ