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29.残照

 あの日、まなみやカリンが殉教して、王都が燃え盛った 。私がサロメ教団最強の吸血鬼を倒し、マスターやクリストフさんも他の真祖・吸血鬼や真祖・ウォーウルフを滅し、この戦いは幕を下ろした


 国王にサロメ教団ホーカン司祭がサロメ教団の行った悪しき愚行を包み隠さず語り、ルシフェル教との関わりについても、語られた


 ルシフェル教との関わりについてはホーカン司祭も決定的な証拠を持っていなかった。その為、ルシフェル教への弾圧は見送られた。ルシフェル教徒はあまりにも多く、国王と言えど、簡単に処罰できないという点もあるだろう。ましてや物的な証拠が無い


 国王はサロメ教団の弾圧を決定した。サロメ教団の生き残りは司教イバルド・アクセルソンを中心にニュルンベルクの支部に潜んでいる事が判明した。王弟のシュツットガルト公軍の騎士団を中心にイスカリオテ教団第13課魔戦軍団、ギリシャ正教会聖戦士隊が随伴し、討伐する事になった


各地のサロメ教団も各公爵軍により、武装解除、司祭の確保が命じられた


ニュルンベルクのサロメ教団支部は僅かな真祖・吸血鬼、真祖・ウォーウルフしかいない事が判明していた


作戦の目的はサロメ教団の殲滅、司教イバルド・アクセルソンの確保だった


 出征の前に国葬が行われた。シュバリエ騎士団、王立魔法兵団、殉教したイスカリオテ教団、ギリシャ正教会の戦士も弔われた


まなみの墓碑には『日出る国の戦士、ここの眠る』と記された


カリンの墓碑には『愛されし戦士、ここに眠る』と記された


ここ2ヶ月の間で3回目のお葬式、私の心は沈んだ。今は復讐より、心を休ませたかった


まなみを失った事は大きかった。私の喪失感は果てしなく大きかった


あの時、私が『過去見』の技に囚われていなけれ・・・・・・


後悔が後を断たなかった


しかし、戦いは私を待ってくれなかった。私達は出征した


 ニュルンベルクへ向かう途中、ギリシャ正教会の聖戦士達と触れ合う機会があった。私は何故か、ギリシャ正教会の聖戦士達の馬車にマスターと一緒にいた


 初夏の頃、車窓は新緑の景色からトロピカルな夏の街へと変わっていった 。風が心地いい。私は馬車の窓から、美しい風景を眺めていた


 しかし、馬車の中は沈黙が続いた。何しろ、ギリシャ正教会の聖戦士とクリストフさんにとってはイスカリオテ教団の私達二人はどう接すればわからないのだろう。かくゆう私もわからない。マスターとクリストフさんでさえ、無言だ。だが、その沈黙を破った人がいた


 沈黙を破ったのはクリストフさんの隣にいる少女だ。私も何故この場にいるのかわからなかった。服装は「貴族?」という風にしか見えない。他の聖戦士はそれなりに戦士らしい格好をしている、しかし、彼女は貴族の令嬢の様な出で立ちなのだ


「ねえ、あなたがあの、吸血鬼の花嫁な訳?」


「そうなんだからね!


 なんか文句あるの?」


私は少々大人気なかった。年の頃は17,8位の年上の少女と言っても、無礼だろう。いきなり何?


「私は真祖・ウォーウルフ、クリストフ様の花嫁。あなたには負けないわよ!」


「???」


クリストフさん、いつの間に花嫁を迎えたんだ?


「アリスさん、先日の王都の戦いで、彼女は死にそうになっていたんだ。それで、我眷属に加えた。名はカタリナ・クライシスと言うのだ」


「そうですか。これから大変だね。私、一緒に頑張るんだからね!」


「なんで、大変な訳?


 わたくしが悪い奴ら、ビシビシ倒してやりますわ!」


「カタリナさんは不死身で、不老なんですか?」


カタリナさんは何の事?


 と言う感じだ


 クリストフさんが説明してくれた


「私達ウォーウルフには永遠の命は無い。バンパイヤと違って、いずれ死は迎える


 私達はアンデッドでは無いんだ。だが、不死身に関してはバンパイヤと同様だ


 基本、寿命以外で死ぬ事は無い」


「そうなんですか。私てっきり、マスターみたいに永遠に生きているかもと思っていました」


「それは誤解だ。そして、私は寿命が来る。人間よりは長生きだ、だが、いつか死が訪れる


 それで、頼まれて欲しい事がある」


「何ですか?」


「カタリナと仲良くして欲しい。彼女には友達がいない。そして、彼女はいつか私の能力をついで、真祖のウォーウルフになる。その時、支えてあげて欲しい」


「クリストフ様、なんで、私がこんなロリ巨乳に支えられなきゃいけないんですか?」


「まあ、時期にわかる。お互い必要になるだろう」


「嫌ですよ。こんな小娘に!


 仮にも貴族の私がこんな庶民の女と友人だなんて嫌です」


 この子、貴族か・・・・・・ しかし、凄い高いプライドだな。今は私と同じ化物だという自覚が無いのか? それにしても、私が庶民出身な事知ってる訳だから、ある程度私の事、知ってる訳か


「アリスさん、気を悪くしないでくれ、彼女は家族をサロメ教団の吸血鬼に殺されたんだ。彼女自身、死にかけていた」


クリストフさんが説明してくれた。


『そういう事か・・・・・・』


 この子は吸血鬼が嫌いなんだ。でも、仲良くする気にはなれないな。何、この子、感じ悪い。特に貴族感出過ぎで、嫌な感じ。でも、家族を殺されたばかりなのか・・・・・・ 感じ悪いのも家族を殺されたばかりで、当たってるだけかも


「カタリナさん。そうは言わ無いで、仲良くしようよ


 私も家族をサロメ教団に殺されたんだからね!


 私達、仲間なんだからね!」


「嫌よあんたみたいな貧乏臭い子。願い下げだわ!


 それに気軽に名前を呼ばないで頂戴、カタリナ様と呼んで!」


ちょっと、傷つくんですけど。確かに私は貧乏出身だけど。はっきり言われると腹がたつ!


「マスター、ちょっと、この子、ブッチめていいですか?」


「待ってくれ、アリスさん。非礼はお詫びする。根はいい子なんだ」


クリストフさんがフォローする。察するにこの子と私を友達にしたいのはクリストフさんの意向なんでは無いだろうか?


 魔戦軍団にも聖戦士にも女性は少ない。以前なら、まなみやカリンがいたんだけど。今は、私、位か・・・・・・それでか・・・・・・


「アリス、お前にとっても友人は必要だ。仲良くした方がいい」


「はい、マスター」


マスターが私の頭を撫でながら、言い聞かせる様に言った 。そうか、まなみを失った、私への配慮でもある訳か・・・・・・


 ただ、この高飛車な貴族のお嬢様はどうも好きになれそうに無いな。まなみみたいに、気さくで、優しくて、それでいてどこか抜けてるまなみ・・・・・・


 止めよう。まなみの事を考えると涙が出てくる。まなみの事を思い出すと、一緒にアーネ先輩やシモンさん、お爺ちゃんや弟ラーシェの事が自然と思い出される


「カタリナ、アリスさんに謝罪しなさい。言っていい事と悪い事があるぞ」


クリストフさんがカタリナに謝罪する様促した


「嫌よ、例えマスターの命令でも嫌ですわ」


 私はこの高飛車な貴族出身の女の子が好きになれなかったけど、これから戦友となる事はわかっていたから、一つだけ、お願いを言う事にした


「カタリナ様、どうか、死なないでくださいね。私、これ以上誰かが死んだら、もう、生きているのが嫌になっちゃうんだからね・・・・・・」


カタリナは驚いた様な顔をした。私は笑顔を彼女に向けた

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