26.カリン・シェルフィールド
目を向けるとまなみやカール、レオン、メルケルの3人が戦っていた
まなみ達が有利だった
カリンはまなみに妖糸を容易く斬られ、その隙に他の3人に斬り刻まれていた
だが、一瞬でもまなみや他の3人に妖糸が絡めば、逆転する
そして、カリンの傷は直ぐに再生していた
「まなみ、私が殺ろうか?」
私はまなみに声をかけた
3人は全力を出しきれていない
カリンを思いっきって斬れないのだろう
さっきまで味方だったんだ。当然だ
他人の私なら情け容赦なく。この若い吸血鬼を滅ぼせる
だが、まなみからは拒否の返事がきた
「アリス、これは俺様達の戦いだ。これは俺様達がやらなきゃいけないんだ」
「そうです」
「カリン、覚悟!」
「俺は心を鬼にする!」
4人はあくまで自分達の手を汚す気だ。それがカリンの為だとばかりに
私は見守った。私の入る隙は無い
私の知らない、このカリンという子と他の魔戦軍の人々の関わりがあるのだろう
まなみがカリンの繰り出す妖糸を斬る。
信じられない剣技だ。まなみは心眼で妖糸を見ている。心眼は5感と魔力、
つまり6感全てで感じて見る。だから、普通の人には見えない妖糸でも、
まなみには見える
「悔しい!
私の妖糸がこんな簡単に!」
「簡単じゃ無い!
少しでも油断したら、俺様にだって、見えない!」
「俺達には見えない!」
「そう!」
「団長にしか見えて無いんだ!」
私はカリンと言う子が哀れになってきた
「こんな筈じゃなかった!
最強の妖糸使いになる筈だったのに!」
「カリン、降参は許さんぞ!」
まなみはカリンに降参を許さない
当然だろう。降参しても、彼女は裏切り者だ。処分は当然・・・・・・
「わかってるわよ。どうせ、私は一度死んだのよ!
それを、おめおめ戻って裏切った卑怯者よ!」
カールの剣がカリンの胴を薙ぐ、血飛沫があがる
もちろん、傷は再生が始まるが、それ程早い再生では無い
『カリンは致命傷を受けたら、負けだ』
私は確信した
だが、誰も致命傷を与えられない
まなみは妖糸を斬る事に専念している
カリンに致命傷を与えるのはカール、レオン、メルケルの3人の役目だ
しかし、3人は明らかに躊躇している
思い切って、致命傷を狙えないのだ。カリンへの愛情がそれを阻止している
私はこの戦いの行方がわかった
まなみが無理を承知で、カリンを斬るだろう
3人が致命傷を与える事ができないのは、まなみにもわかっている筈だ
まなみは団長としての責務を全うするだろう
自身の部下を自身の手で・・・・・・
「カリン、覚悟しろ!」
「とっくにできてるわよ!
私だってわかってる!
私は弱い!
バンパイヤになっても団長には勝てない!
だから、早く殺してよ!
お願いだから!」
カリンの顔が痛々しい。目からは涙が溢れていた
諦め?
懺悔?
複雑な負の感情、その全てが顔に現れていた
「カリン・・・・・・
カール、レオン、メルケル、お前達がカリンの妖糸を斬れ!」
「「「そんな無茶な!」」」
「無茶じゃ無い!
心眼はお前達にも教えた。お前達3人ならできる!
できなければ、俺様が死ぬだけだ
俺様の為に頑張れ!
行くぞ!」
攻守が入れ替わった!
3人は必死に妖糸を斬る。あの3人、必死に妖糸を斬っている
まなみの言う通り、心眼で3人でなら、カリンの妖糸は抑えられている
そして、まなみが叫ぶ!
「おりゃーーーーーーーーーッ!」
ザシュー
ブシャーーーーーーー
血飛沫がカリンからあがった
致命傷だ。カリンの頸動脈が斬られた
「団長、それでいいです。でも、一瞬で終わらせてくれると嬉しいです
痛いのは、やっぱ嫌です……」
カリン、年は私と大して変わらないだろう。悟った事を言っても、本音はわかる
『死にたい奴なんていない』
強がりだ。私にはそれが良くわかった
彼女は生きたいのだろう・・・・・・
例え、バンパイヤとしてでも、15,6の女の子が死を覚悟するしか無いなんて
どんなに望んでも、元には戻れない。どんなに望んでも・・・・・・
彼女は裏切ってしまったから・・・・・・
団長であるまなみは許す事ができないだろう
裏切り者を許したら、更に裏切り者が増えてしまうだろう
例え、まなみがどんなにカリンを許したいと望んでも、それはできないのだ
カリンもわかっているのだろう
「団長・・・・・・
ダメですよ。団長優しすぎるんですよ
そこで、躊躇されたら、私期待しちゃうじゃ無いですか?
私、許されないですよね?
だったら、一思いに殺してください!」
カリンの声は震えていた
「カリン!
・・・お前、本当はこっちに帰ってきたいんだろう?
違うのか?」
「私だって、本当は返りたいですよ!
できるなら!」
カリンは泣き出した。両目から止めども無く涙が溢れる
「私、前みたいに皆さんに可愛がって頂いたら・・・・・・
でも、もう終わりなんです!
団長、許せんるんですか?
裏切り者の私を?
私を許したら、また裏切り者が出ますよね?
どうなんですか?
許される訳無いじゃ無いですか・・・・・・」
「カリン・・・・・・」
「私はもっと強くなりたかった。みんなの庇護の元生きるんじゃ無くて、
みんなを守る戦士になりたかった
でも、私はあの時、殉教したのです
今の私は裏切り者の偽物なのです
団長にご負担をかけるのは承知です
でも、団長の手で逝かせてください」
「カリン、わかった。覚悟しろ!」
まなみは涙を流していた
可愛い部下をその手にかけなければならない。その罪の気持ちは・・・・・・
まなみは両手で、刀に力を込め、魔力を貯める
そして、
「円城流刀剣術、飛燕斬!」
カリンの胴体に大きな傷がつく、それは簡単に再生できそうになかった
瀕死のカリンが最後に綴ったのは
「団長、最後のお願いです
アグネ師匠に伝えてください
ごめんさないと・・・・・
馬鹿な弟子でごめんなさい
そして、団長、ありがとう」
「カリン、必ず伝える」
「ありがとうございます。もう、思い残す事は無いです
止めをさしてください」
カリンは目を瞑った
「カリン、お前の事は決して忘れない」
まなみは懐から銀の短刀を取り出すとカリンの心臓に突き立てた
「やっと、逝ける・・・・・・」
カリンは灰になっていった
皆、涙を流している
「カリン・シェルフィールド、ここに殉教する」
「「「はい、私達は確かにカリンの勇敢な最後を見届けました」」」
「アリス・・・・・・」
まなみは私に声をかけた
「まなみ、私は一人の戦士が殉教するのを見た。それ以外は何も見ていないからね」
「ありがとう。すまん・・・・・・」
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