13.シモンさん
私は再び大切な人を失った......
「まなみさん、気をつけて、誰か来た!」
私達2人はまなみの元に集結する
私達の前に現れたのは、白銀に輝く狼の顔を持つウォーウルフだった
「やはり、獣人風情では役不足だったか、全く、最初から私に任せればいいものを
上の奴らは、理解できん」
「あなた、誰?」
私は聞いた。敵なのは間違い無い、だが、少しでも情報を知っておいた方がいい、
もちろん、素直に吐くかどうかはわからないが......
男は何も言わなかった。用心深い男だ、危険な奴な事が想像できた
「私はお前らの司祭を殺しにきた」
「そんな事はわかっている!」
「我教団はついに、劣化した獣人やウォーウルフ、吸血鬼では無く、オリジナルの真祖の
ウォーウルフと吸血鬼製造に成功した。私が真祖ウォーウルフの第一号だ」
真祖、それは吸血鬼やウォーウルフの最初の世代
その力は下等なウォーウルフを凌ぐ事は容易に想像できた
勝てるだろうか?
「お前らに勝てる見込みは無い。無駄な殺生はしたく無い。ひけ!」
『ウォーーーーーーー』
男は叫び、いや、狼の咆哮をあげた
「そうは行くか!
俺達は依頼を受けた。最後まで任務を完遂する」
シモンさんが吠える。ここで引いたら、命を落とした人に申し訳がたたないからだろう
「シモンさん、まなみ、まずは私が仕掛ける。私、不死身だから」
私はこのウォーウルフの技を探る為、斬り込んだ
私は不死身だ。殺られても直ぐに再生する
ザザザザッ
絨毯の上を高速で移動し、剣戟を放つ、しかし
シュン・シュン
は、早い!
私の剣戟が命中する事はなかった。しかし、私も戦いには慣れてきた
『喰らえぇええーーー雷神剣!』
ウォーウルフはそれを横に避け、雷神剣の衝撃波が命中する事はなかったが、
雷撃は周りに四散した
「ちっ!
こっちが目的か!」
「その通りよ!」
雷撃で、ウォーウルフの神経細胞は一時、機能が低下する
そこに、更に!
『雷神剣!』
雷を伴う衝撃波がウォーウルフを襲う、
衝撃派はウォーウルフの肉体を切り刻んだ
しかし、傷は直ぐに塞がっていった
『再生能力!』
この程度の威力では足らない、もっと致命的な何かを与えないと!
そう考えて、ウォーウルフに肉薄した
しかし、突然激痛がはしった
『剣じゃ無い、魔法?』
ガフゥ
私は吐血した
『何が起こった?』
私は思案した。魔法詠唱はなかった。簡易詠唱でも、無言で発現する魔法は聞いた事がなかった
突然、何かが私を襲った
私の脇腹がバックリ割れている。綺麗に!
再生は直ぐに始まっているが、一体何が?
『ウォーウルフだけの力と思うなよ、吸血鬼!』
「なるほど、ありがたい、冒険者の技ね!」
私は理解した。この技はこの男の冒険者の頃の技術
突然私の身体に魔法以外で傷つけるとすれば、
『空間断裂だ!』
シモンさんが大声で怒鳴る
そうか、冒険者の事はシモンさんの方が詳しい
魔法は魔法詠唱しないと発動しない、だが、例外がある
私は以前、お爺ちゃんから聞いた事があった
最上級冒険者は身体能力を魔法で補う、
同じ要領で、魔法に似た技を使う事ができる
この男の使った技は『空間断裂技術』
この国に、ほんの数人しかいない希少な技を持つ、元最上級冒険者
『対処方法は一つしか無い』
そう、肉を切らせて骨を断つ、今までと同じ作戦
しかし、私は怯んでしまった
理性でわかっていても、懐に飛び込めない
人間、本能的な恐怖が理性を上回ると理性的な行動ができない
回避不能な技に身体が臆した
「うっ!」
まずい! 」
私からではなく、ウォーウルフの方から肉薄してきた
『ぎぁああああぁああああああ』
突然、私の頭蓋骨に激痛が走った
単なる痛みなら、それは大した痛みでは無い、痛みに慣れた私にとっては、だけど、頭蓋骨を粉砕され、
脳髄を破壊される痛みは、痛み以上に精神的な痛みを伴う、つまり恐怖だ
気がつくとウォーウルフは私の胸に、手刀を突き込んでいた
そして、ウォーウルフは私の心臓を掴んでいた
「ふふっ。感じるぞ、お前の心臓!
今、ひねり潰してやる」
ぐじゅぐじゅぐしゅ!
私の心臓はあっさり握り潰された
そして、ウォーウルフは私の心臓を身体からえぐり出した
「ははは、お前ら、吸血鬼は心臓が弱点だ。心臓を潰せば、再生の速度は下がる」
「貴様、よくも、アリスちゃんを!」
「シモン、冷静になれ、アリスはそれでも死なん。それより俺様達が不利だ」
「ああ、わかった!」
「ここは俺様に任せろ!
円城流居合術の骨頂を見せてやる 」
まなみは刀を鞘にしまう
そして、シモンさんは一歩、後ろずさる
「ほう、これは珍妙な。敵を前に刀を鞘に収めるとはな」
「来い!」
まなみは目を瞑った
「行くぞ!」
ウォーウルフはとてつも無い速度で、まなみに迫った
「円城流、抜刀術、一の太刀!」
シュン・カチン
まなみの刀の一閃がウォーウルフを薙いだかに見えた
しかし、
「しまった!」
まなみはウォーウルフの空間断裂を斬った、しかし、
「馬鹿が、そんな罠に引っかかるか!」
ウォーウルフはまなみを避け、一直線にシモンさんを狙った
「そう簡単に行くか!」
『真・魔神剣』
おそらく、シモンさんの最終奥義、それをウォーウルフに放った
しかし、シモンさんの奥義はウォーウルフに十分な傷を追わせられなかった
僅かな傷はほんの僅かな間に治癒する
「無駄無駄無駄ー」
そう言って、シモンさんと切り結ぶ
「この太刀筋!
クルト先輩か?
いいだろう。剣士の本懐だ!」
「久しぶりだな、シモン。その通りだ。老人の我がままに付き合え!
私は羨ましいかったぞ。若いお前らが!
未来に成長があるお前に対して、未来に衰弱しか無い俺にはな!」
尚もシモンさんとウォーウルフは切り結ぶ
「あんた人格者だったのにな!」
「本音はこの様さ」
『魔神剣!』
今度はウォーウルフがシモンさんと同じ技を使った
シモンさんは咄嗟に離れるべく、後ろへ飛んだ
「くっ」
『魔神剣』の衝撃破は避ける。だが、ウォーウルフは更にシモンさんに肉薄する
ウォーウルフを振り切れ無い
シモンさんの胸に剣戟が入った
「ぐ、ぐはっ」
シモンさんは崩れ落ちた
「てめえ!」
まなみがウォーウルフとやり合う
まなみは激怒した。必殺の一撃を避けられ、あまつさえ、シモンさんが倒された
私の心臓はようやく、元の胸に戻っていた。
しかし、いつもの様の再生能力は発揮できていなかった
私は、血塗れの身体で這いつくばって、シモンさんの元に辿りついた
「シモンさん、しっかり!」
「アリスちゃん。俺はもうもうだめだ。ヒールなんかじゃ、もう、回復しない」
「シモンさん!
そんなのシモンさんらしく無いよ!」
「最後に・・・一つ頼みがあるんだ」
「なんなんですか?」
「俺の血を吸え・・・・・・吸血鬼は血を吸うと・・・力が増すんだろ?
・・・・・・俺の血で強くなれ!」
「そんな! 」
「俺の死を・・・・・・無駄にしないでくれ。俺はアリスちゃんと・・・・・・共にいる事になるんだ」
「シモンさん......」
「それとな」
そういうと、シモンさんは私の唇に口付けした。私は避けなかった
「やったぜ・・・・・・念願のアリスちゃんの唇ゲット・・・・・だぜ」
「もう馬鹿!
こんな時に!」
「もう、俺には時間が残されていない・・・・・・最後の我がままだ
さあ、俺の血を吸え、そして・・・・・・あのウォーウルフをやっつけろ!」
「シモンさん。ごめん!」
私はシモンさんの喉笛に噛み付いた。そしてシモンさんの血を飲んだ
「俺、人生に後悔はしない・・・・・・最後にこんな美少女に看取られて、最高だぜ」
「シモンさん・・・・・・」
シモンさん。必ず、仇をとる
シモンさんの血を飲んで、私の力は増幅した
S級の冒険者の血を飲んで、私は更に進化した
気がつくとまなみは一人、ウォーウルフと戦っていた
互角に見えた。だが、不死身のウォーウルフとまなみではやはり、まなみの方が不利だ
まなみの必殺の一撃があっさり、回復する
ウォーウルフの空間断裂をまなみが斬る
技量はまなみの方が上だ。だけど、 ウォーウルフに致命傷を与えられない
直ぐ回復してしまう、一方、まなみは一度でもミスをすれば、死ぬ
『男なら、危険をかえりみず、死ぬと分かっていても行動しなくてはならない時がある
負けると分かっていても戦わなくてはならない時がある』
マスターは良く、この言葉を言っていた
私は男じゃ無いけど、このマスター言葉は共感する
『お前はお前の信じるものの為に戦え。誰も強制はしない。お前の胸の中にあるものの為に戦え』
マスターの言葉、
私は、まなみの為に、自身の恐怖心を克服する事を誓った
私はもう二度と仲間を失わない!
仲間の為に戦う!
それが私の信じるもの!
私は、いきなり、シモンさんの技を使った
『真・魔神剣』
ズシャー!
ドカン!
階段の奥に穴が開いた
「なんだと!
吸血鬼、貴様、心臓を握り潰されてもう、再生したのか?
それにこの技?」
「シモンさんの技よ!
あなたとシモンさんが知り合いなのはわかった
ただ、言える事があるわ
シモンさんの技でシモンさんの仇、取る
『生まれてきた事を後悔させてあげるんだからね!』」
私はウォーウルフに斬りかかった。早い、以前より早く動ける
血を飲んだばかりの吸血鬼、シモンさんの技を引き継いだ私は更に強くなっていた
だだだっだだっだだ
ウォーウルフに近づき、オリハルコンのショートソードを振るう
ガキン
頭蓋骨に激しい痛みが走る!
「もう、頭蓋骨を壊された位で!」
構わず前進する。守るものがあるから、進める
ウォーウルフの『空間断裂』は次に心臓に来た
「何がどうなろうが、構うものか!」
私は恐怖に勝った。頭蓋骨を粉砕され、心臓を潰されても、
なお、進んだ!
そして、
『真・魔神剣!』
シモンさんの最終奥義、剣の衝撃波に風に刃の魔法を乗せた武技
ウォーウルフの四肢を切断した
「グォォォォォォ
だが、こんなもの!
再生能力は吸血鬼だけの特権では無い!」
ウォーウルフの腕や脚は私と同じ様に血が逆流し、再生しようとしていた
「心臓を抉り出せば、いいのでしょう?
いい事教えてくれて、ありがとう!」
『ガキン』
衝撃が再び、私を襲う
二度目の頭蓋骨への『空間断裂』で、私の脳髄が吹っ飛んだ様だ
だが、構わず、私はウォーウルフの左胸に手刀を叩っこんだ
ぶしゅーーーーー
血飛沫が上がる
「若者に嫉妬し、最後は幼い少女に滅ぼされるのか・・・・・・あの世で笑い者だな」
ウォーウルフは自嘲気味に言った
ニヤリ、かなり凶悪な顔だろう。私の今の顔は!
鼓動する心臓、それを
ぐちゃぐちゃぐちゃ
私は心臓を抉り出した
「アリス、任せろ」
まなみはそう言うと、懐から小刀を取り出した
「銀の短刀だ」
ズン
まなみはウォーウルフの心臓に銀の短刀を突きこんだ
「うぉ、うォぉぉぉぉーーーー」
ウォーウルフは倒れ、そして朽ちて行った
「勝ったのか?」
「ああ、だが、シモンが、俺様とした事が......」
「......」
シモンさん。エッチだったけど、憎めない人だった
シモンさんの亡骸を見て、私の頬には一筋の涙が流れた
しかし、私達は油断していた。勝ったと思い込んでいた
よろしければ評価・ブックマーク登録をお願いします




