10.使徒アンダース
ギリシャ正教会使徒、アンダース、新たな仲間が私達に入った
私達は無事オーシャスビークの街に着いた
宿はこの街で一番豪華な宿舎だった
なんと5階建てだ
大抵の街や村の建物は2階建てだ。3階建て以上はかなり職人さんの技術がいる
当然、建設費用はかなり高額となる
そんな豪華な宿舎の最上階に私達は宿泊していた
ヤン司祭はスイートルームに滞在する。実は私もスイートルームなのだ
シモンさん達はちょっと落ちる別の部屋だ
シモンさんは私の部屋に夜這いに行くから問題無いとかほざいてた
本当に来たら半殺しにしよう
☆☆☆
「という訳でヴラド、調査結果報告を」
「ああ、メランセル村にはサロメ教団支部も含めて、
獣人に関する物証、文献など一切なかった
サロメ教団支部員は全員殺害されていた」
「成程、メランセル村襲撃はおそらく証拠隠滅だな
事前情報では、サロメ教団支部に重要人物がいるとの事だった」
「それだけは無いぞよ」
「だ、誰だ?」
シモンさんが、剣に手をかけて、ヤン司祭の前に立ちはだかる
「シモン団長、安心しろ。顔見知りだ」
「しかし、どうやってここ迄、1Fからここ迄、俺達が警備してる
何の連絡もなく、この階に辿り着いただけでなく、
ましてや、この部屋に堂々と入ってくるなんて!」
「ワシは堂々とヤン司祭を訪ねて来ただけじゃ」
「アンダース殿、彼らをからかわないで下さい」
「ホッホホッホ
いつも、お前さんにやられておるから、たまにはいいじゃろう」
「どうせ、彼の力でしょう?
まぁ、その通りじゃ。お前さんがヴラドの力を使って良くやるでは無いか」
「......」
「ぐうの音も出ない様じゃな!」
「クリストフ殿も、いい加減姿を見せてくれ」
「突然、うちのヴラドと闘られても困る」
「承知した。アンダース使徒、宜しいか?」
「ああ、気分がスッキリした」
「それで、何がそれだけじゃないのだ?」
「知りたいか?」
「知りたい。それで対価はなんだ?」
「ルシフェル教の例の司祭の情報と引き換えじゃ」
「いいだろう。お釣りが来る内容だ」
ヤン司祭とアンダース使徒と取引が成立すると、アンダースさんは自己紹介してくれた
「それでは、改めて自己紹介させてもらおう、
私はギリシャ聖教団の使徒、アンダース、ほぼ仲間と思ってもらって構わない
たまにそうでも無い時もあるのじゃがな
それと、さっきからいつの間にかいる男が、
我がギリシャ聖教団の聖戦士クリストフじゃ!」
「以後、お見知り置き下さい」
クリストフと言う男、私達と同類だろう。だけど、吸血鬼でも無さそう、何者?
アンダースさんとクリストフさんはこの5Fの警備を無視して入って来た
クリストフさんはおそらくマスターと同じ様な何か......
「先ずは今回の騒動の中心地での事を話そう
我らは北の街ハーンでサロメ教団の人工獣人化の証拠を密かに抑えた
獣人化工場はこのオーシャスビークの西のダンジョンにある」
「オーシャスビークの西って!」
私は思わず叫んだ。だって
つまり、メランセル村の近く!
「そして、メランセル村のサロメ教団支部は、その運営に携わっていた
サロメ教団支部だけでは無い。かなりの人数が関係していた」
「じゃ、メランセル村が襲われたのは!」
「そうだ。口封じと証拠隠滅だ。それも大規模な」
「我らの行動がバレていたかもしれない」
「おそらく、そうじゃろう。よりにもよって、ヴラドを動かせば、奴らも焦る」
「北の街ハーンの人口の半分が死んだんだぞ。動かさない訳にもいくまい」
「まぁ、それもその通りじゃ
だから、今回、共闘しようというのが、我が教団の提案だ
我らの北の街ハーンの情報があれば、もっと、内密に調査出来た筈じゃ
我らも強く反省しておるのじゃ
もう、力強くで解決するより無い、だから我らもクリストフを動かした」
「わかった。信用しよう。古よりの仲だ」
「では、更に重要な話しじゃ。奴らの本当の黒幕はおそらくルシフェル教だ」
「なんだと!?
ルシフェル教とサロメ教団に接点があるのか?」
「ある処か、おそらくサロメ教団はルシフェル教の使いっ走りじゃ」
「わかってきた
何故、このようなおぞましい人体実験を行って、万が一、明るみにでたら?
と考えたら......」
「そうだ。ルシフェル教は強い力が欲しいだけだ
そして、悪者にはサロメ教団になってもらう
サロメ教団は旧主教を崇拝しておるからな」
「ルシフェル教には痛くも痒くない
むしろ我らの方が困る」
「その通りじゃ
だが、問題はそれだけではない」
「なんだ?」
「奴らは獣人だけでは無く、ワーウルフや吸血鬼を既に製造しておる様じゃ」
「まさか!?」
「そのまさかじゃ。奴ら、人工の吸血鬼やワーウルフを大量に作る気だ」
「そんな事をして、万が一神の逆鱗に触れる様な事にでもなれば!」
「その時は奴らが崇拝する堕天使ルシフェルが助けてくれると信じておるのじゃろう」
「そんな保証が何処にあるのだ!」
「ある訳、無いじゃろう。彼らは力を欲しているだけじゃろう
民の大半がルシフェル教を信じておる
だが、彼らが信者から得た布施は彼らの懐を潤わせただけだ」
「その間に我らは魔物や魔族の九尖兵としての地位を確立した」
「国王も我らイスカリオテ教団やギリシャ正教会には一目置いている」
「その通りじゃ。彼らは、金はあっても、力が無いのじゃ」
「卑怯者めが、我らがどれだけの犠牲を払って、この1000年、力を蓄えてきたのか?
どれほどの人間が殉教したのか・・・・・・」
「血を流していないものにはわかりはせぬよ。彼らは手取り早く、非人道的な魔法で
普通の人を人工ウォーウルフや人工吸血鬼にしているのだ」
「だが、人工獣人を見ると、果たして成功しているのか?
報告によると、力はある様だが、彼らは人間らしい心を失くしている
彼らは元からあの様な者達だったのか?」
「おそらくじゃが、獣人化の魔法で、理性を消失するのじゃろう
下等な吸血鬼やウォーウルフの血属が理性を失うのと同じだろう」
「それは多いにあり得るな
何故、いく世代も経た吸血鬼やウォーウルフが理性を失うのかは
未だに解明されていない。だが、魔法による獣人化は下等な獣人しか作れないなら、
合点がいく」
「なあ、話が全然見えないだが......」
「シモンさん。シモンさんは頭悪いから、知らなくていいです」
私は冷たく言った
「アリスちゃん酷く無いか?」
「まあ、詳しく知らない方がいい。だが、安心しろ。お前達への依頼は、
私がこの宿舎で滞在中の護衛のみだ」
「それはわかってるが、相手が獣人ならともかく、人狼や吸血鬼は勘弁して欲しい」
「まだ、研究段階の筈だ。実戦投入できる者はダンジョンを守護するだろう
それに、私の警護には、魔戦軍団長、円城まなみも加える」
「ワシらギリシャ正教会は別の宿舎なので、敵の戦力を分散できるじゃろう」
「わかった。それなら、依頼を継続する
ところで、その魔戦軍団長とのは誰だ?」
「俺様だ!」
「て!?
何?
この変な格好のねーちゃんなのか?」
「貴様馬鹿にするのか!
我ら日本人の出で立ちを!」
まなみさんは侍装束と言う変わって姿をしている。彼女の生まれ故郷の衣装らしい
「彼女の力は保証する。アリスと同等と思ってもらっていい」
「わかった。納得した」
シモンさん達には私が吸血鬼な事を告白していた。私の実力は先日の襲撃でわかってる
「俺様とこのロリ巨乳が同じ位だと、聞きづてならないな!」
「まあ、親睦会はいずれやるから、それまで我慢しろ」
「だから、俺様はこう言う、計算高い女が大嫌いなんだよ!」
「女として負け犬の遠吠えなのかしら?」
「貴様まぁあぁぁぁぁ!」
「まなみ、お前が悪い、先に暴言を吐いた。失言を撤回しろ」
ヤン司祭はまなみに厳しく命じた
「わかった。アリス殿、無礼済まなかった
畜生、俺様がこんな小娘に!!!!」
「まなみ、心の声がダダ漏れだぞ」
マスターが珍しく突っ込む
「まあ、ずいぶん脱線した様じゃが、
ワシらの提案はお主らのブラドと我らのクリストフで、
オーシャスビークのダンジョンを攻略して、
奴らの人工獣人、吸血鬼、人狼の生産工場を壊滅させて欲しい
もちろん、サロメ教関与の証拠も見てけ出して欲しい」
「俺達はあなたの護衛と言う訳だ」
シモンさんはかなり渋々引き受けている様だ......
声色で判る
「その通り、報酬は法外だっただろう?」
「ああ、危険な事は十分わかっている」
「なら、頼む」
「ああ」
マスターとギリシャ正教会のクリストフさんはダンジョン攻略で、私とまなみのボケと、
シモンさん達で、この宿舎のヤン司祭を守る訳か......
よろしければ評価・ブックマーク登録をお願いします




