優しい世界
2019-02-24
安価・お題で短編小説を書こう!5
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1541947897/
>>430
使用お題→『お気に入りの靴下』『リングガーター』『USB』『中学校』『優しさ』
【優しい世界】(1/3)
世紀末の風吹きすさぶ地、USB。United States of BBA。
BBA の、BBA による、BBA のための合衆国。
この国で生きていくのは難しい。不毛の大地に住む者は、頭のイカれたやつばかり。必要なのは、ただ強さのみ。
そんな国にも学校はある。とある地方の、とある中学校。
全校生徒が参加するデスマッチは、最終局面を迎えていた。
「はあ……はあ……いい加減、降参しな……」
「降参なんて……しません! 私は……絶対に……負けない!」
砂ぼこり舞うグラウンドで対峙するのは、黒いセーラー服の少女と、白い夏服の少女。
「コトコー! そんなやつ早く潰しちまえー!」
「琴子先輩頑張ってー!」
「負けるな若葉!」
「どうしたー! どっちもバテてんぞー」
戦いには敗れても、いまだ闘志を失わないギャラリー。
勝ち残った二人と、敗れ去った彼女らの違い。それは太ももを見れば分かる。
「おおーっと! ここで琴子選手、若葉選手のガーターをつかんだぞ!」
「下の名前で呼ぶなっつってんだろ! うぉらああぁああ!」
片足に着けたリングガーター、それを奪い合う。取った者が勝者、取られた者が敗者だ。
【優しい世界】(2/3)
黒いセーラー服の少女、琴子が、もう一人の少女、若葉のガーターを引っ張る。
「これで終わりだっ……!」
どちらの少女も疲労がピークに達している。そして攻撃は体力を消耗する。
このタイミングで仕掛けることは、同時に隙をさらすことにもなる。
「……取らせない! やあっ!」
琴子の引く力に合わせて、若葉が彼女を押し倒す。
「くっ、くそっ!」
「反撃です!」
琴子が尻餅をつく形で倒れる。その拍子に、彼女の靴の片方がすっぽ抜ける。
「あっ、駄目!」
「えっ?」
そこに見えたのは。
「う、うさちゃんだ! 琴子選手の靴下、ウサギのキャラクターの、すっごい可愛いやつだ!」
【優しい世界】(3/3)
強さのみが求められる世界。可愛さなど必要とされない世界。
「……これさ、お気に入りの靴下なんだ」
校内最強の一人。その本人がすっごく可愛い靴下を履いている。
「笑っちゃうよな。イメージ崩れただろ」
まだデスマッチの決着は付いていない。だが、そんな空気はどこかへ消えてしまった。
動きを止めた最強の二人と、立ち尽くす少女たち。そんな中、若葉が口を開く。
「琴子先輩。いいえ、琴子ちゃん」
「……下の名前で呼ぶなって言ってるだろ」
「実は私も……ほら」
若葉が片方の靴を脱ぐ。そこにはウサギのキャラクターがいた。
「……あんたはいいだろ。そういうキャラじゃん。あたしはさ、がさつなのに、かっこ悪いだろ」
自嘲の笑みを浮かべる琴子。だが若葉は反論する。
「そんなことない。そんなことないよ。可愛いのが好きって気持ち、優しい気持ち。絶対必要だって、私ずっと思ってた」
そして琴子の手を取って言うのだ。
「強さと優しさ。私、間違ってなかった。本当に強い人は、きっと優しいんだって。今ちゃんと分かったよ」
彼女たちは願うのだ。世界に、優しさを————
履物お題シリーズ最終回。これは単に締め切りに間に合わず。
作者なりに工夫したのだが、会話がどうしても不自然だ。それと『優しさ』の処理に無理がある。
当初は若葉が男の娘という設定だった。時間切れで盛り込めず、従って登場人物は全員女性である。
次の投稿は10月16日深夜を予定している。