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イルグラード(VR)  作者: だる8
第二章 この世界を冒険する!
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第70話 階層の街

「ファクトさん!ルーテリアの街へようこそ!」


 満を持して発せられたランスロットの言葉に迎えられて、オレたちはルーテリアの街に着いた。

 ランスロットはルーテリアの街並を紹介する……前に、オレたちを街の展望台に案内してくれた。最初は何故?と思ったが、その理由はすぐにわかった。


 山間の高地にあるこの街は傘下に広がるフィールドを見渡せるほど視界が開けている。今までこの世界(イルグラード)の世界のフィールド地図(マップ)を手にしたことは無いが、ルーテリアの南の端にある展望台からはこれまで冒険してきた世界が一望できる。


「ファクト!アカシアの街が見えるよ!ほら!湖も見えるし!」

「モルトの城壁も小さく見えるだ。ここからプレイ開始出来たら地図はあまり要らなそうだよ」


 エルナと(ガドル)の二人も眼下に広がる景色をみてはしゃいでいる。

 確かにここからスタートしたなら、細かい詳細の作りはともかくとして『どんな世界が広がっているのか』に関しては、ワクワク感をそそる。なぜモルトやアカシアが初期街であるのか分からないくらい『プレイ開始する冒険者』に『期待感を持たせる』景色を有していた。


 エルナや(ガドル)だけでなく、さすがのオレもこの景色には高揚感を感じる。


 オレが冒険を開始した『モルトの街』

 最初にゴブリンソードと戦って『(ガドル)と出会った平原』

 深いダンジョンであった『《あやかしの森》』

 果ての見えない『巨大湖』

 そして『アカシアの街』


 その全てがこの場所から一望できるのだから……

 いずれも平地から見てきた世界だが、こうして高所から見下ろすとまた(おもむき)が違うものである。


「すみません、ファクトさん。お楽しみのところ申し訳ないんですが、ボクたちは一旦ここで」


 街の雰囲気に浸っているオレ達に対して、意を決したようにランスロットがそう言った。

 進行の遅さから何から迷惑を掛けてしまっていたのだ。もっと前に自分のことをしたかったんじゃないだろうか。今更ではあるが非常に申し訳ない気分になるオレ。でもアレを聞くまでは行ってしまっては困る。


「あ、悪い。一つだけ教えて欲しいんだが……」


 そう言ってオレが切り出したのは、ランスロット達の言っていた『穴蔵の店』についてだ。

 オレにとってはコレが最大の目的であったに等しいので、これを聞かずに帰してしまうことだけは出来ない。


「穴蔵の店ですか?……それなら簡単に街の構造から説明していった方が早そうだ……よね?」


 ランスロットは背後にいる疲れた顔のミアとティアナに同意を求める。二人は無言でウンウンと頷いている。結果的には更に拘束してしまうような質問だったようで、本当に申し訳ないのだがここはしっかり聞いておくとしよう。


 ランスロットの話によると、山の麓の斜面をくり抜いてつくられた『ルーテリア』という街は、主に二層構造となっているらしい。


 今、オレ達のいる展望台から見える街の景色を第一層とすると、ここには主に住宅エリアと街の中心広場、とAIによる商業区画があるらしい。なお中心広場には冒険者(プレイヤー)用の掲示板というものがあるらしいが、そんなものはモルトやアカシアにはなかった……いや、アカシアには似たような機能のものがあったか。いずれにしてもそうしたプレイヤー間で情報共有の出来る掲示板があるらしい。


 これが第一層。

 次に第二層は、第一層の中央広場の裏手にある階段から行くことが出来るそうだ。要するに地下街ってことらしい。

 第二層の内部は魔法のランプで常に明かりが灯されており、夜がない『不夜城』だそうだ。デスマーチ化した仕事を思い出しそうな嫌なワードだが、ランスロットが使ったのだから仕方ない。


 第二層には主にギルドがあるとのこと。AIが経営している酒場などもあるそうだ。これはモルトやアカシアにはなかった施設である。

 ランスロットの話によるとこの酒場でしかやり取りされない裏情報などもあるようで、盗賊もよくたむろしているらしい。ただ、屈強なAIスタッフによって完全管理されているらしく、他プレイヤーとのもめ事は禁止されているとのこと。


 何がどう運営しているのか知らないが『平和利用しようぜ?』ということらしい。

 モルトやアカシアで酒場(それ)がないのは、管理運営がしっかりしてないからだろう。たぶん。


 オレはなんとなく初期街として実装された順なのではないかと思った。

 『モルト』が最初に実装された街。次に『アカシア』最後……かどうかはわからないが、その次が『ルーテリア』というわけだ。整備されてる順である。

 実験的に作っていったんだろうけど、新しい街を作るだけじゃなく、既存街のアップデートもしておいて欲しかった。……これもいまさらか。


 で、肝心の『穴蔵の店』なんだが、商業区画ではなくて第二層の更に奥にあるそうだ。第三層?

 すぐに行けるわけではなく、ルーテリアにある専用のクエストをクリアすると利用することが出来るらしい。あとは自分で……とランスロットが締めた。まあその方がゲームは楽しめる。


「わざわざありがとう。いろいろすまなかったな」

「またよろしくね~!」

「ありがとうだ!」


 オレ達は疲れた表情のランスロット達を見送ると、展望台のスペースに車座……といっても3人だが、互いに向かい合って座り込んだ。


「で。どうするの?これから。さっそく穴蔵の店に向かう?」

「オラ、クエスト報告して報酬を受け取りたいだ」

「あ!そうかぁ。私も私も」

「二人ともちょっと待った。オレの話を聞いてくれ」


 オレはあさっての方向に向かいかける二人の会話に割り込んだ。


「まずは住宅エリアに入る。で、何をするかというと『拠点移動』だ。この街に初めて来たオレ達が住宅エリアに入ると『レンタルルームを利用』するか、『拠点移動』をするかを聞かれるはずだ。そしたら迷わず『拠点移動』を選んでくれ」

「どうしてだ?」


 オレの説明に(ガドル)が首をかしげる。


「『拠点移動』はレンタルルームより高いが、アリ……えっと支援AIから街の地図をもらえる。つまり新しい街に着いたら地図を得るために『拠点移動』が必須ってことだ」

「あぁぁっ!そう言えば、モルトの地図持ってない!」


 エルナが声を上げる。

 通過点として通り抜けてしまったので、確かにエルナに地図を取らせることを忘れていた。


「今度、近くを通る時に立ち寄って、忘れずに入手していこう……で、地図を入手したあとの動きだが、合流場所は『穴蔵の店』ということにしよう」


 オレは二人の表情を見る。


「つまり、しばらく自由行動ってことだか?クエストも必要なようだし」


 (ガドル)はオレの意図をくんでくれたようだ。エルナもコクリと頷いている。


「その通りだ。それぞれギルドで報告をしたりクエストしたりする必要がある筈だ。そして条件をクリアすると『穴蔵の店』に行ける。……であるなら、その店を合流場所にしよう。もちろん入店できたらフレンド通信でお互いに連絡な」

「わかった!」

「わかっただ!」


 オレの言葉に二人が同意した。

 『穴蔵の店』に行くためのクエストはそう難しくないはずだ。ランスロット達が低レベルで当たり前のようにクリアしているのだから。面倒くさいおつかい系である可能性はあるが。


「そうだ。オラついでにログアウトしてお手洗い行ってきたいだよ。それに明日も仕事だ。だから寝ないとだよ」


 なんと、(ガドル)様は土曜出勤のある仕事のようだ。


「エルナはどうだ?」

「私?私は学校休みだし部活……もないし、まだまだイケるわよ!だって明日はいよいよ初のシナリオ配信でしょ?遊ばないわけにいかないわ!」


 ニッと可愛い笑顔を見せるエルナ。

 どうやら部活はサボるようだ。


「わかった。じゃあまあもろもろ含めてオレ達の拠点はしばらくルーテリアで確定な。タイミングはいつでもいいが、『穴蔵の店』に入店出来るようにはしておいてくれ」

「「了解!」」

「じゃあ、とりあえず解散」


 オレ達は思い思いにルーテリアの街に散っていった。


お待たせしました。

ここ数日、完全に風邪でダウンしてしまいまして、なんとか1話分書き上げたところです。今日もまだ体調は万全ではないです。

寒暖差の激しい日々が続くようです。みなさまも風邪などひかぬよう……風邪っぴきは自分だけで充分です(汗)

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