第67話 ルーテリアの街へ
ハッと気づいた。今までオレは何をしていたのか……いや、死んでいたのか。
それだけは不思議と分かった。
意識がなかった……という状態に近い。改めて死亡という状態が怖くなる。確かオレは鬼霊と戦っていた筈だ。だが、あの最後の記憶……鬼霊の金棍棒が大地を激しく打ち据えるあの瞬間、おそらくあの必殺技が放たれたのだろう。そしてオレは恐らくそのダメージに耐えられなかったのだ。
意識を取り戻したオレの顔を覗き込んでいるのは、エルナに猫。そして、見覚えのある顔ぶれ。
「復活しましたね、ファクトさん。良かったです」
ランスロットだ。そうか……。
オレの中で繋がった。オレが蘇生できたのはランスロット達が持っていたルーテリアの街で手に入るという蘇生液のお陰だ。恐らくそれをオレにつかってくれたのだ。《あやかしの森》の中とはいえ、ルーテリアの街側までたどり着いていたことで、彼らに発見して貰うことが出来たのだろう。
オレはゆっくりと身体を起こす。
ちょっと身体の動きが鈍い。蘇生後の反動なんだろうか?それとも蘇生したばかりで耐久値がギリギリ……つまり瀕死の重傷状態だからなのか。いずれにしてもこの蘇生液による復活の感覚は覚えておくことにする。
オレの周りをエルナと猫。そしてランスロットのパーティであるミアとティアナによってオレは囲まれていた。
「すまない。ありがとう」
「借りを返すことが出来て良かったです。こちらにいらしたのはやはりルーテリアの街目当てですか?」
「あぁ、そうだ。厄介な敵に遭ったのが災難だったがな。あの鬼霊とかいう敵は、こっち側では時々現れるのか?」
オレの質問にキョトンとした様子のランスロットパーティ。一方でエルナと猫の表情はいつも通りだ。ということは『オレが変なことを聞いた』というより、ルーテリアのプレイヤーから変に感じる質問だったということか。
「あのぉ……もしかして!ちょって聞いてもいい?」
「うん?」
オレとランスロットの間に流れた気まずい空気をぶった切るように、ミアが口を挟んできた。
「ファクトさんはぁ、戦ってた鬼霊が条件討伐対象の敵だって知ってました?」
「「条件討伐?!」」
ミアの言葉に反応したのはエルナと猫だ。
オレも当然びっくりしたのだが、オレの小さなリアクションは彼女たちの言葉に完全にかき消されてしまった。
「あ、やっぱりぃ!知らなかったんですね!とするとぉ、どうして戦ってたんですか?」
ミアが少し首をかしげる。
「どうして……て。オラたちはルーテリアの街に向かっていただ。したら《あやかしの森》の出口で鬼霊が暴れてただよ」
「それでね!その脇をササッと通り抜けられるかな?とも思ったんだけど『気づかれないように』とか面倒くさいし、気づかれたらどうせ戦うんだし、それだったら先制攻撃しちゃおって私が提案したんだよ。そしたら思ったより強くって……ごめんね?ファクト」
ちょっとだけすまなそうな顔をするエルナ。その表情グッド!可愛いので問題なしっ!
……じゃなくって。
提案は確かにエルナだったけど、パーティとして先制攻撃で戦うことを決めたのはオレなんだから、謝られるようなものでもない。強さを見切れなかったのはオレの失敗でもあるし、そもそも範囲攻撃に自分が耐えられないことをわかってながら、近距離で行動したことも良くなかったと思う。
要するに『エルナは何も悪くない』ってことだ。
敢えて誰かが原因だったとしたら、それはオレ自身が招いたこと。……つまり自業自得である。
「でも!わかるわぁエルナさん!初めての敵とか珍しそうな敵見たら、戦わないと損だよね?!」
「でしょ?でも仲間もいるから、みんなの意見は聞かないとだけど……」
「え?そんなんきっと大丈夫よ!そこはササッとやってしまった方が勝ちって……」
ボグッ!
鈍い音とともに、ミアの脳天にティアナの杖が直撃した。そこでミアの言葉は強制的に中断される。
「痛いっ!ひどいよティアナ」
振り返ったミアが涙目で訴えるが、ティアナの目が笑ってない。
「暴走はダメです。ちゃんと確認すること!じゃないとランスが……」
「そっかぁ、ランスちゃんが怒っちゃうもんね」
「ミアちゃん。わたしも怒りますよ?」
「わわっ!ごめん。ちゃんとティアナの言うこと聞くから見捨てないで」
「……ボクの言うこともちゃんと聞こう?いいね?」
ランスロットパーティの内輪漫才にオレたちは大笑いだ。
彼らのおかげで、オレが死んでしまったことに対しての若干辛気臭かった雰囲気が一気に晴れた。復活できたのも彼らのアイテムのおかげであるし、本当に感謝しかない。
情けは人の為ならず……って、こういうことだな。人への情けは自分のためだと。
「ファクト!ファクト!私たち知らずに鬼霊倒しちゃったけど、条件討伐のクエストだったってことは報酬あるよね?!」
エルナの目が輝いている。
これが漫画だったら目が$でもなく¥でもなく、『報酬』の文字で描かれていることだろう。
「あぁ、あるな。確か条件討伐は……前回もそうだったが、後から受けることも出来たから、ルーテリアについたらみんなそれぞれギルドに行こうか」
「オ……オラももらえるだか?」
「もらえるだろ。パーティ組んでたから一緒にクリアしたことになってる筈だぞ……あ、いやまて。そういう意味だとそもそもどんな条件で討伐せよってクエストなのか知らないな。もし条件クリアしてなかったらクエストクリアも無効なうえに、下手したら鬼霊復活するんじゃないのか?」
自分で言っててオレは怖くなってきた。
条件をクリアせずに討伐したら、どうなるか?ちゃんと条件を満たしたパーティのチャレンジのために敵は復活してくるんじゃないのか?と。ここで悠長に談話してる場合じゃないじゃないだろうか。
「あ、たぶん大丈夫だよっ!条件クリアしてると思うし」
「ミア、そんな適当な回答じゃダメだ。ちゃんとファクトさんに条件を確認してもらおう。ボクがクエスト受けてきたので、確認してみてください」
そう言ってランスロットはクエストを見せてくれた。
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件名 :(条件)鬼霊討伐
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依頼者:探索者ギルド
内容 :鬼霊を討伐すること。
期限 :不定期
回数 :1回
条件 :レベル15以下で3人以下のパーティでの討伐
報酬 :ギルド別指定
コメント:あやかしの森の入り口で危険指定魔物である鬼霊を確認しました。街道の安全保持のため、速やかな討伐をお願いします。
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そのクエストを見てオレは驚いた。
偶然とはいえ、たまたま訪れたオレ達のために設置されたようなクエスト条件だったからだ。特に人数制限が厳しい。
まだ本格的なストーリー実装はこれからだが、既に仲間を集めて最大人数である6名になっているパーティが多いのだ。特にLV15に到達しようというプレイヤーなどはほとんどがそうだ。オレ達やランスロットパーティのように3名という構成は珍しいといっていい。
「うん。大丈夫……だな。LVもまだ超えてない。エルナも大丈夫だろ?」
「うん!まだ12だよ。もうすぐ13に上がりそうだけど」
ここでいつものサムズアップだ。反応がいつも通りというのはホッとする。
「そか。……ガドルも問題ないな?」
「オラ、今の戦いで一つレベル上がっただよ。スキルも一つ覚えただ。あ、もちろんクエストのレベル上限は超えてないから問題ないだ」
「本当か?!スキル習得とか、すごいじゃないか」
早々に死んでしまったせいか、オレはなんにもないが仲間が強くなるのは自分のことのように嬉しい。
「どんなスキルなんだ?」
「《鉄壁》っていう盾のスキルだ。詳細はまた後で説明するだ。そろそろオラもここから街に行きたいだよ」
確かに。猫の言う通りだ。《鉄壁》の効果は気になるが、この場でジッとしていても仕方ない。
もうオレ達の道を阻む障害はないのだから、目的地であるルーテリアの街に向かうだけである。
「じゃあ、ボク達がルーテリアの街まで案内しますよ。ここからすぐですから、一緒に行きましょう!」
「助かる。お願いしよう」
オレの言葉に軽く頷くエルナと猫。
ルーテリアの街はもうすぐそこだ。
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名前:ガドル
性別:男
種族:猫の獣人
称号:鍛冶マイスター:シルバー
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職業:鍛冶
LV:11
腕力:27 (21+ 6(STR+50%))
活力:73 (27+43(VIT+70%)+3)
敏捷: 5 (12-7 (AGL+70%))
器用:42
魔力: 8
運 :26
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武器:アイアンハンマー(STR+10) :スタン効果10%
盾 :スクトゥム(VIT+30/AGL-10) :New!
頭 :アイアンヘッドギア(VIT+6) :VIT値+1
手 :パワーグラブ (STR+2/VIT+4)
胴 :チェーンメイル(VIT+10)
下肢:レザートラウザ(VIT+4)
足 :アイアングリーヴ(VIT+7) :VIT値+2
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固有スキル
《鍛冶[シルバー]:付与効果小》
《装備鑑定:鍛冶》
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修練スキル
《鉄壁》
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