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イルグラード(VR)  作者: だる8
第二章 この世界を冒険する!
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第56話 上位職への道

 土下座……まではいかないが、手を合わせて祈るようにお願いしているるージュと、困惑の猫顔を見せる(ガドル)。そしてそんな両者を交互に眺めるオレ。

 依頼内容にもよるだろうが、受けるかどうかは(ガドル)が決めればいいことだ。既にその結論に達しているのか、そもそも興味が無いのか、エルナの興味はギルド内に陳列されている装備品に向かっているようだ。


「えっと?何を作ればいいだ?」

「作ってくれますか?」

「だから……何を作ればいいだ?」


 うん。微妙に噛み合ってないが、横から聞いてると面白い。ちょっとニヤニヤしそうになったが、(いかつ)い顔では不気味にしか見えなさそうなので慌てて顔を引き締めてみる。


「作って欲しいのはですね?クロスボウなんですよ!」

「ブッ……」

「??」


 しまった!思いもよらない依頼品にオレが吹き出してしまった。折角の締まり顔が台無しである。そしてオレが何故吹き出したのかわからずに、るージュが怪訝な表情でオレを見る。

 そんな失礼極まりないオレをあまり意識しないように、(ガドル)は淡々と答えた。


「ん。クロスボウはまだ作製できないだ。作ってあげられないだよ」

「そう……ですか」


 明らかに意気消沈した様子のるージュ。エルフ族はそんな落ち込んだ様子すら美しい。反則である。

 気づけば(ガドル)の視線は完全にオレの方を向いていた。もちろんオレがクロスボウで戦闘をしていることを知ってるからであろう。もしくは先ほどの失礼な反応に対しての無言の抗議かも知れない。反省しきりである。


 ふぅ……と、深呼吸をして(ガドル)の方を向いたが、まだ(ガドル)はオレの方を見ていた。

 もし作成できない装備品の出自をオレ(ファクトさん)が知っているなら、あとは任せただ……と、完全にそういった空気を出している。


 オレのクロスボウは調合士のクエスト達成数に対してのギルド報酬である。


 クリエラの説明では確か調合士の初期装備の一つだと言っていたハズだ。でも探索者であるるージュが作成を求めているということは、調合士の初期装備であっても探索者の初期装備ではないのだろうか?そこはよく分からない。

 そもそもオレの場合は特例でクエストクリアもせずにクリエラからもらったものなので、完全なイレギュラーゲットである。


「一つ、聞いていいか?」

「……あ、ハイ。なんでしょうか?」

「そもそもどうしてクロスボウなんて必要なんだ?探索者用にはもっと別の強い武器があるだろう?」


 オレはるージュに聞いてみることにした。分からないことはストレートに聞くのは一番だ。下手に配慮して回りくどく言ったところで、どうせどこかで直接的な表現になる。とはいえあまりにぶしつけでは問題だろうけど。


「実は……クエストに必要なんですよ。クロスボウがないとクリア出来なくて」

「どういうことだ?」


 クエストにクロスボウが必要?

 そんな条件のクエストが『探索者』にあるのか。『調合士』ではなく。


「実は……『探索者』の上位職である『レンジャー』への昇格資格を得られるクエストなんです。『ラミーラ坑道』というダンジョンがあるらしいんですが、そのダンジョンの奥に生息する『キラサカスコ』っていう魔物をクロスボウ(・・・・・)を使って討伐するっていう内容なんですが……」


 レンジャーだと?オレの目がキラリと輝く……いや輝いているに違いない。

 確か以前クリエラが口を滑らせた上位職だ。ここで繋がってくるか。やっぱりクエストで昇格資格を得るんだな。では調合士はどうなんだろうか……?

 オレはるージュの話を聞きながら、自分の思考に入ってしまった。


「……で、あの……聞いてますか?」


 しまった。見透かされたか。


「あぁ……すまない。ちょっと思うところがあってな」

「と言いますか、そもそもですが質問に答えちゃいましたけど、あたしはこんなことをファクトさんにお話する必要がありました?」


 不信感を露わにするるージュサマ。

 だが、オレには彼女が必要としている決定的なモノを持っている。


「あるぞ。クロスボウならオレが持っている」


 オレはアイテムボックスからそれ(クロスボウ)を取り出すとるージュに見せた。するとるージュの表情が一気に変化する。


「おぁあぉおぉぉおあぁぁお!それっ!ください!いや、違う!売って下さい!いや、違います!貸して!いえ、貸して頂けませんでしょうかっ?!」


 目的の品を目の前にして、大興奮のるージュ。

 『それくれ』とかとんでもないことを口走ってるが、だんだん冷静になっていく様子がわかるのは実に面白い。

 だがこのままでは会話にならないので、落ち着くようにジェスチャーで伝えたところで口を開いた。


「……悪いが、こいつはオレの虎の子の武器なんであげることも売ることも出来ん。貸す……くらいなら多少考えてもいいが、もう少し正確な条件はないのか?例えば『クロスボウでトドメを刺す』とか『資格を得る者がクロスボウで戦う必要がある』とか。もしパーティ内に『クロスボウを使用する者がいればいい』だけならオレがついていくだけで貸す必要もないわけだろう?そもそも『貸す』にしたって、んな長期間貸せないしな。(ボルト)も持ってないだろうし?」

「そう……ですよね。貸せないですよね」


 『貸せない』の単語だけ切り取って勝手にしょんぼりしているるージュ。意外と面倒くさいヤツだな。


「お前、オレの話をちゃんと聞いてたか?条件次第で協力してやるって言ってるんだ」


 今度は話を聞いていないことをオレが指摘する番だ。


「本当ですかっ!」


 急にるージュの顔色が明るくなる。

 うん。間違いない。こいつは面倒くさい上にテンションの浮き沈みが激しい。


「代わりに、オレの質問にも答えてくれるか?情報交換だ」


 オレはまず上位職昇格の資格を得られるクエストの発生条件を聞いた。


 どうやら職業差があるようなので調合士や戦士も同じとは言えないが、少なくとも探索者の上位……レンジャーに関してはLV15でギルドマスターから紹介されたそうだ。その他のクエスト達成率なども関係しているかもしれないが、るージュ自身そこはあまり気にしていなかったようで分からないらしい。これはまあ仕方ない。

 そもそも鍛冶のように上位職がなく、(ガドル)が取得したマイスター:シルバーなどのランクで表現する職もあるくらいだ。こうした情報は参考になるが、根本的に同じとは考えない方がいいだろう。


 ただ、オレにしてみればいわゆる『上位職』の話を始めてプレイヤーから聞いたので、いろいろ掘り下げて聞いてみたくなったのだ。ちなみに、今のところ『レンジャー』に昇格したプレイヤーはまだいないらしい。LV15をとっくに超えた『探索者』はそれなりにいるようだが、いずれも『クロスボウ』の存在が障壁となっており『チャレンジしている』という話自体をるージュはまだ聞いたことがないようだ。


 これ、もしかして調合士がいないと『クロスボウ』は手に入らないんじゃないか?いや、そんなことはないか。恐らく装備自体は鍛冶が作成出来るハズだ。ただ、いつ作成出来るようになるのかはわからない。マイスター:シルバーを取得しているとはいえ、(ガドル)だってまだLV10だ。LV15で探索者が必要となる装備だし、同じLV15くらいで製造出来るようになるのかもしれない。

 鍛冶は調合士と違ってレシピ板からの取得ではなく、LV依存のようだし……。


 次に上位職に昇格するとステータスがどうなるのかを聞いた。

 るージュの話では細かい仕様はよく分かってないようだったが、探索者ギルドのマスターの話ではある程度ステータスの引き継ぎをするらしい。

 ということは、探索者でそれなりにLVをあげてから昇格した方が強くなれると……そういった仕組みのようだ。そのため資格を得たからといって、るージュもすぐに昇格をするつもりはないとのこと。でも、残して置くのは気持ち悪いので昇格資格は先に取っておきたいそうだ。


「ところで……クロスボウについてはとりあえずオレが持ってるから条件クリアとするぞ?でも『ラミーラ坑道』ってなダンジョンは初めて聞くし、討伐しなきゃならない『キラサカスコ』という魔物がどんな魔物でどのくらいの強さなのかが全然分からないんだが、その辺の情報はあるのか?」

「いえ、全く無いです」


 にっこりと笑うるージュ。いや、そこは笑うところか?開き直り過ぎじゃないか?


「お前なぁ……」

「だってですよ?そもそもクロスボウが手に入らないのに、行き先なんて捜しても仕方ないでしょ?だから調べたことなんてないです」

「そうなのかもしれんが。……じゃあ、早速調べてきな。とりあえずクロスボウに関してはオレがいれば条件クリアの目処がたったんだろ?ちゃんと分かったら協力してやる。もちろん討伐対象が強すぎる相手だと分かったなら、オレ達のLVが上がるまで待って貰うけどな?」


 オレの言葉を聞いたるージュの表情が一気に明るくなり、ガッツポーズを決めた。


「手伝ってくれるっすか!やっほー!ありがてえ!……いや、ありがとう!」


 なるほど?間違いない。こいつはエルフ女キャラだが中身は完全に男だ。つまりネカマさんですね?

 ま、どうせゲーム内での付き合いなのでプレイヤーの性別なんてどうでもいいんだけどな。姿と話し方にギャップがありすぎるので違和感があるというだけだ。


「じゃあ!早速調べてくるっ……きます!まだここにいらっしゃいますよね?待っててくださいね!」


 オレ達の返事も聞かずにるージュは『鍛冶ギルド』を飛び出していった。


「いいんだすか?ファクトさん。オラにも正直見当はつかないだすが、話を聞く限り『キラサカスコ』ってボス級じゃないだすか?」

「……まあ、そうだろうな。が、まあいいんじゃないか?オレ達だってダンジョン攻略の真似事してみたいだろ?オレとエルナはこないだ流れでクリアしてしまったが、ちゃんと目的をもって攻略してるみたいし」

「オラ、ついていけるか心配だよ」


 不安そうな(ガドル)だが、恐らく大丈夫だろう。オレ達には今のところ『ブーストLV2』がある。

 さあ、予定通りエルナと(ガドル)の装備強化をしよう。オレは(ガドル)の肩をポンポンと軽く叩いた。


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