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イルグラード(VR)  作者: だる8
第一章 物語の始まり
29/349

第29話 決着

 愛用のクロスボウから、いつもとは違う鋭い(ボルト)がボス蜂に向かって放たれる。


 狙いは問題ない。

 エルナの攻撃によって一瞬動きを止めた大きな的。


 若干距離が離れてはいるが、このくらいは誤差範囲内だ。さっきから大量に(キラービー)を仕留めている距離とそう変わらない。


 クロスボウから飛び出した異形の(ボルト)は、ボス蜂に向かって真っ直ぐに突き進み、吸い込まれるようにその胸に着弾。そして貫通した!


『グギギィィィィィッッッ!!!』


 ボス蜂から苦悶の悲鳴が上がる。

 やったか?!とは絶対に思ってやらない。フラグなんぞ立ててたまるか。


 オレはすぐに『ウッドボルト』ではあるが次弾を装填し、背後に迫りつつある(キラービー)を2匹ほど撃ち落とす。即座に振り返ると表情……は分からないが、恐らく憤怒の形相でオレに向かってくるボス蜂の姿を捉えた。


 大丈夫、分かってたさ。あの一撃で倒せてないことくらい。

 でもな……オレの一撃だって痛かっただろ?ただそう言いたいだけだ。


 オレは更に次弾を装填する。


 拾った弾なんぞで勝負が決まるくらいならとっくにエルナが倒しているはずだ。どちらにしても、これ以上戦闘が長引けばオレ達の負けだ。今度こそオレに出来る最高の速度でクロスボウからボス蜂に向けて打ち続ける。迫り来るボス蜂にオレの射た(ボルト)が次々と襲いかかり着弾していくが、ボス蜂はその動きを止めずに向かってくる。


 エルナの言う通り、ボス蜂の速度は(キラービー)より速い。

 (キラービー)の攻撃は回避できてもボス蜂の一撃を完全に回避出来ない。ボス蜂の毒針がオレの肩を掠めると、その勢いでオレは後方に吹き飛んだ。


「ぐふっ」


 そのままフィールドの端に立っている木まで飛ばされ背中から打ち付けられる。


「ファクトッ!……くそっ!ファクトの会心の一撃を喰らったなら倒れとけぇっ!!」


 エルナの怒号が聞こえてくる。

 ふふっ……おしとやかとは真逆の性格だな、エルナは。


 そんなことを考えてオレの身体は地面に倒れる。絶体絶命のピンチだというのに口元には笑みが浮かんでしまう。


 身体が思うように動かない。かすっただけだが、致命の一撃を受けてしまったか?だが、諦めたわけではない。オレは倒れたままアイテムボックスから、手探りで回復薬小を取り出して飲み干した。だが体力が回復した手応えがあっても、相変わらず身体が自由に動かない。


 毒でも喰らったか?でも毒無効が装備に付いてるから普通の毒は効かないはずだが……

 どちらにしても残念ながら毒消し系のアイテムは持っていない。こんなときに毒でやられるなど……


「てやぁぁぁっ!」


 相変わらずの勇ましいエルナの声が聞こえてきた。


『ギギギギギギギギィィィィィィィッッッッ!!』


 その瞬間、ボス蜂の気味の悪い奇声がフィールド上に響き渡った。

 オレの目の前にピロンとウィンドウが立ち上がる。


『調合士のレベルが上がりました』

『調合士のレベルが上がりました』

《修練スキル……『必中』を習得しました》


 まさかの2LVUPだ。しかもなんか修練スキルを覚えてるし……ということは、勝ったのか!

 オレは改めてエルナの底力に感服する。


「ファクトッ!勝ったよ!って、大丈夫??」


 倒れたまま動けないでいるオレの元にエルナが駆け寄ってきた。


「どうやら毒みたいなのにやられたようで……アイテム持って無くて動けないんだ」

「あはは。深刻じゃなくて良かった。治療薬あるよ!ていうか、ファクトも変だよね!あんな凄い薬を持ってるかと思えば、治療薬みたいな基本のアイテムも持ってないとか」


 エルナはそう笑いながらオレに治療薬を使ってくれた。実際にはオレが受けていた毒は『麻痺毒』だったようで、エルナの『麻痺治療薬』のお陰ですっかり動けるようになった。


「いや面目ない。確かに治療系アイテムのストックくらいあった方がいいな」


 ゆっくりと立ち上がったオレの視界に、何か光るモノが入り込んだ。フィールドの中央……そう、ボス蜂と戦っていた中央部分に光っている玉が浮かんでいる。


「エルナ。あれはなんだ?」

「え?……知らないwなんだろうね?!」


 オレが指し示した方を振り向いてエルナも首をかしげる。エルナもみたことは無さそうだ。


 とりあえずオレとエルナは中央の光の玉のところまで歩いて近寄ってみる。

 《あやかしの森》の、入り口へのワープゾーンとかだろうか?もしそうなら、触る前にそこら中に落ちている大量の蜂蜜や、さっき射撃で使った『ニードルボルト』を回収しておきたい。


「よっと!」

「あ……」


 オレの思惑をよそにエルナが光の玉に触れた。

 その瞬間、周囲が光で満たされる。


『おめでとうございます!あなたたちは《あやかしの森》を踏破致しました。お一人ずつ『踏破報酬』がありますのでお受け取り下さい。なお、報酬は一部職業によって異なりますのでご了承下さい』


「おぉぉぉぉ!やったよ!たなぼただっ!」


 エルナが飛び跳ねて喜んでいる。そんなエルナを見ているとオレも楽しくなってくる。

 ていうか、これ鬼人(グレン)が狙ってた報酬じゃないのか?意図せずとはいえオレがクリアしてしまった……ということは。


(……街で顔合わせたら、嫌味言われそうだな(汗))


 ブチ切れるだろう鬼人(グレン)を想像するとちょっとだけ憂鬱だが、純粋なゲーム名誉としては非常に嬉しい。

 ちなみにオレの報酬は、レシピ板だった。これも地味に嬉しい。調合士が自身の価値を高めるための最短がレシピの取得だ。あとこれも報酬なのかもしれないが、称号として『クイーンビーバスター』という表記が追加されていた。


 そのお陰で、ボス蜂がクイーンビーだったんだな。と遅まきながら理解する。


「凄い!この報酬!凄いいいっ!」

「エルナは何をもらったんだ?」

「これよ、コレ!」


 エルナが赤く輝くクリスタルをどや顔でオレに見せた。オレのアイテム鑑定によると『スキルクリスタル』と表示されている。


「スキルクリスタル」

「そうよ!これで無条件にスキルを一つ追加できるわ!あーん、楽しみ!何が覚えられるんだろう!」


 どうやら、調合士にとってのレシピ板のようなものらしい。使用することでランダムにスキルを一つ習得出来るようだ。覚えられるのは多分修練スキルだ。


「よし!せーので使ってみよう!ファクトのクリスタルは??」

「いや、オレの報酬はソレじゃないから」


 オレはエルナにレシピ板を見せる。


「これなに?」

「これはレシピ板といって、オレのような生産職にとってのスキルクリスタルのようなもんだ。新しいアイテムの調合レシピをランダムで習得出来る」

「おぉぉぉ!じゃああのドーピング剤のような薬をまた作れるようになるの?!凄いじゃん!」

「いやまぁハズレアイテムのこともあるらしいから」

「じゃあ、ファクトが使うのはそれねっ!せーのでいくよ!」

「ちょまっ……《ウィンドウ》」

「せーのっ!」


 オレは慌ててステータスを表示させる。もちろんレシピ板を発動させるためだ。

 そしてエルナの合図から一瞬遅れてレシピ板を発動させた。オレのかざしたレシピ板はいつものようにステータスに消え、レシピ欄には一つ項目が追加された。


「『スタンダードボルト』……か。要するにクロスボウの弾だな。攻撃力UPってことか、悪くない」


―――――――――――――――――――――

名称  :スタンダードボルト

材料  :ブロンズインゴット×1、鳥の羽×1

―――――――――――――――――――――


 いつもの『ウッドボルト』に比べると素材が明らかにいい。それだけでも戦力UPであることが窺える。

 他にもオレは今回のボス戦で習得した修練スキル《必中》にも注目していた。


―――――――――――――――――――――

名称  :必中

効果  :射撃を行った際の命中率が

     常に90%を切らない。

習得条件:射撃による攻撃を行い、

     1時間以内に50回命中させること。

―――――――――――――――――――――


 スキル効果の言い回しが独特だ。

 今の射撃命中率が90%未満であれば90%に上がる。仮に90%以上の射撃命中率を維持していても、それを下げられるような異常状態……例えば盲目とかになったとしても『敵を狙う』意識を持っていれば、最低限の命中精度として90%を確保出来るという事に違いない。


 射撃をメインウェポンにしようとしているオレにとって最高のスキルじゃないだろうか。


「ねぇ、これ役に立つかな?」


 オレがレシピを眺めているとエルナが《旋風刃》を覚えた時のようにステータスを見せてきた。


―――――――――――――――――――――

名称  :魔物鑑定

効果  :魔物の名前、耐久概要、

     行動特性、弱点属性が分かる。

習得条件:100種類以上の魔物に対して

     弱点属性でとどめを刺す。

―――――――――――――――――――――


 オレはそれを見て目を輝かせる。

 役に立つ立たないどころの騒ぎではない。大当たりだろそれ。てか、こういう報酬アイテムで習得しても習得条件が記載されるんだな。まあ当たり前か。


 今回ご褒美習得した《魔物鑑定》の習得条件も、普通に狙ったら鬼だ。

 《魔物鑑定》がなかったら弱点なんて分からないのに、その弱点で100種類の敵にとどめだと?ゲームの過渡期……プレイヤー達によるシステム攻略が進んで、初めて存在が明らかになるようなスキルだぞそれ。


「大当たりのレアスキルだな」

「ほんとっ!良かった。本当は必殺技的なスキルが欲しかったけど、ファクトがそう言うならわたしはグッジョブだよね?」


 やっぱり脳筋だったか。いやまあ戦士だからある意味それでいいのだけど。感想の言動が不思議ちゃんなのはいつものことだし。


「あ、そうだエルナ。今更だけどさ、なんでここにいたんだ?《あやかしの森》踏破が目的だったようにも思えないんだが」

「迷ってた」

「え?」

「だから、迷って《あやかしの森》に入っちゃって、気づいたら(キラービー)にたかられてて、倒しながら出口を探してたらここに来てたってこと」


 そういうことらしい。

 つまりエルナは極度の方向音痴だと。……クリアしたはいいけど《あやかしの森》から出られるんだろうか?オレは急に不安になってきた。



====================

名前:ファクト

性別:男

種族:ドワーフ

称号:クイーンビーバスター

--------------------

職業:調合士

LV: 7

腕力:17+ 6(STR+50%)

活力:19+13(VIT+70%)

敏捷:18+ 5(AGL70%)

器用:32+ 1(DEX+50%)

魔力: 7

運 : 9

--------------------

武器:ハンティングダガー(STR+12):即死効果50%

盾 :

サブ:クロスボウ(STR+10):命中精度80%UP:調合士装備時

弾 :ウッドボルト(STR+5)

頭 :レザーヘッドギア(VIT+2)

手 :レザーグラブ(DEX+2)

胴 :ハードレザージャケット(VIT+12):毒無効

下肢:レザートラウザ(VIT+4)

足 :ハードレザーブーツ(AGL+10):移動速度20%UP

--------------------

所持金:

 490G

--------------------

固有スキル

 調合

 アイテム鑑定:調合士

--------------------

修練スキル

 虫の知らせ

 必中 new!

--------------------

レシピ

 回復薬小

 ウッドボルト

 スタンダードボルト new!

 ブーストLV2

--------------------

受注クエスト

 回復薬小の納品(束)

 新作武器の材料調達

--------------------


====================

名前:エルナ

性別:女

種族:人間

称号:クイーンビーバスター

--------------------

職業:戦士

LV:11

腕力:45+15(STR+100%)

活力:42+25(VIT+100%)

敏捷:13+ 5(AGL+50%)

器用:25+ 1(DEX+30%)

魔力: 6

運 :10

--------------------

武器:ブロードソード(STR+15)

盾 :ライトバックラー(VIT+5/AGL+2)

頭 :サークレット(VIT+1)

手 :レザーグラブ(DEX+2)

胴 :ブレストプレート(VIT+15)

下肢:レザートラウザ(VIT+4)

足 :レザーブーツ(AGL+8)

--------------------

固有スキル

 パワースラッシュ

--------------------

修練スキル

 剣撃

 旋風刃

 魔物鑑定 new!

--------------------

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 重複しない四種類以上の職業で構成されたパーティでの攻略が踏破条件ではなかったのですか?
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