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イルグラード(VR)  作者: だる8
第七章 変異
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第277話 フレアヴェール観光

 エルナに腕を引っ張られて歩くことで、オレは改めてフレアヴェール市街の構造を確認する。


 まず市街で最も目を引くのが中央の城。最初に賢者イムリやコレット姫と共に訪れた現在の拠点である。

 そして次に目を引くのが最初にやってきたときに通過した大門だ。その巨大な門と扉は見る者を圧倒するスケールである。最後にこのフレアヴェールという都市の特徴として忘れてはならないのは、地底都市の利点を活かすべく縦方向にも居住空間が広がっている。


 目に見えるところから順を追って説明する。当然まず触れるべきは分厚い壁に設置された大門だ。


 通常はこの大門が開くことはなく、人が通過する場合も脇にある通用口を通過する。この城壁ともいえる壁が分厚いことは通用口からのトンネルが長いことで実感できる。

 ……といっても、最初に訪れる時以外は使うことは無いだろうと思う。封鎖されているわけではないので、移動は自由だが。


 話を大門の内側……市街側に戻す。


 大門……いや、通用門を出たところ。城に向かって左側に転移ゲートがある。ここが外から転移指輪(ワープリング)で戻ってきた際に戻ってくる場所だ。一斉に冒険者(プレイヤー)が戻ってきても大丈夫なように、かなりのスペースが確保されている。

 そしてここが、フレアヴェール市街全体の高低差から判断して中層(・・)に相当する。


 わりとだだっ広い空間で転移ゲート以外の施設がほとんどない。ので、オレは中央広場と勝手に呼ぶことにした。

 実装されるかどうか不明だが、他のMMPRPGでよくある『冒険者(プレイヤー)間のワールドバザー』とか開くならここが適当かもしれない。もっともフィ―ロのように個人的に商売することは自由な世界なので、そうした実装はされないかもだが。実際に商人職と思われる何名かの冒険者(プレイヤー)が露天商まがいのことをしている姿も見受けられる。


 そして中央広場を抜けると上にも下にも巨大な空間が現れる。上部に行くにしたがってやや広がる形状はすり鉢というよりコップに近い形状だ。そしてその中央には天然風の岩石が台座のようにそそり立っており、その上に城が建っている。

 城から見たら周囲は断崖絶壁だ。現実世界(リアル)で、どうやったらこの城を建設できるのかを考えてはいけないレベルである。空でも飛ばない限り守りは強固だろう。


 高低差的な話で言えば、この城の建造物部分は中央広場より高い位置にあるため、上層に位置する。

 オレの勝手な解釈で、この居城のことを中央城と呼ぶことにした。まあ、わかるよな。


 そして中央城を取り囲む内壁に沿って、中上層~中層~下層にそれ以外のエリアが広がっている。きっと真上から見たら、前方後円墳のような鍵穴状の街なのだろう。真ん中にどこぞの目玉のオ○ジのような点がある以外は。


 ちなみにこれもやっぱりオレが勝手に呼んでるだけであって、明確に上層中層下層と分かれているわけではない。他の冒険者(プレイヤー)に『中層が……』とか説明しても通じないから気を付けような。ってオレは一体誰に向かって話してるんだか。


 まあそれはそれとして、今度は市街のアクセスについて。


 ここ大門&転移ゲートから中央城に向かうためには、まず中層の大門前広場の中央から掛けられている螺旋(らせん)状の橋を使う必要がある。反時計回りにぐるりと上り、一周したあたりに中央城の入り口がある。

 ちょっと遠回りな点は面倒だが、ぱっと見で中央城への行き方が分からないやつはいないだろう。人間なら。


 次に中央広場の橋のない場所だが、ここも断崖絶壁になっている。中層から崖の一番下までの高低差だが……正直言って上からは底が見えない。残念ながら市街として移動できる一番下まで下りたとしても、この円筒形空洞の下まで降りることが出来るわけではないようだ。


 この底なし谷との境には一応手すりのような柵があるのでオレは怖くないが、ここから下層の街を眺めるのはかなり圧巻だ。高所恐怖症の人だったら下を見られないのではないだろうか。……余計なお世話かな。


 なお上層市街へと下層市街への移動は、中央広場から向かうことが出来る。

 向かって左が上層へ上る道。右が下層へと下る道だ。こちらは一般的な螺旋状構造となっていて、時計回りに上っていく仕様になっている。城への道が逆回転なのは意図的なのかな?まあデザイナーさんの感性なのだろう。


 と、ここまでがフレアヴェールという地底都市のざっくりとした構造説明だ。


 この市街の中でオレがエルナに腕を引っ張られながらどこへ向かっているかというと……どこへの道でもなく、手すりのある断崖絶壁だった。


「見てファクトっ!全然ゆっくり見ること出来なかったけど、ここの景色すごくない?」


 断崖絶壁にたどり着いたエルナは、手すりから身を乗り出すように円筒形の街を見下ろしている。エルナは高所恐怖症ではないようだ。うん?オレは……少し怖いぞ。いくらイルグラードという幻想世界での高所とはいえ。

 だが、エルナの感想には全面的に同意する。ルーテリアの街の景色も美しかったし、アカシアの街だって素晴らしい。イルグラードの景観デザイナーはかなりこだわって創ってそうだ。


「あぁ。覗き込むと怖いくらい迫力ある景色だよな」

「ほら!今度はあそこに行ってみようよ!」


 YesともNoとも言う前に、再び腕を掴まれた……いや言い方が悪かった。腕を組んだ状態のオレとエルナ。巨ドワーフのオレとエルナが腕を組んだらエルナがオレの腕に掴まってるように見えるだろ?まあそういう状態なわけで。そして見た目とは異なり職業上の都合でオレよりエルナの方が単純な()が強いので、さらに違和感があるというだけのことだ。


 これは最初にエルナが言ったようにデート(・・・)のようなものなのだから。


 その状態でエルナが行きたいと言って指差したのは、この街の最下層。移動できる一番下だ。

 オレたちは中央広場の右端から伸びる螺旋状の道(階段ではない)をグルグルと下っていく。壁沿いに武器や防具を始めとしたショップが並んでいるため、冒険者(プレイヤー)の往来がそれなりにある。(ガドル)という頼もしい鍛冶職人が仲間にいるオレ達にはあまり縁がないが、通常の冒険者(プレイヤー)にとっては必須な施設である。


 そして……意外と言っていいのかわからないが、男女キャラで行動しているペアが結構いる。おかげでオレ達も全く目立っていない。るー坊の例があるので、リアルの人間まで見た目の通りとは限らないのだけど、イルグラード内だからこそ開放的になれる……ということもあるのだろう。まさにオレがいい例だ。


 市街の外周を一周して最初の中央広場の真下あたりまで戻ると、円の形が変わることなく中央広場の真下に潜り込むように道が続いている。そしてちょうどそのあたりが、いわゆる『冒険者の酒場』だ。ルーテリアにもあった酒場施設のようなものだ。が、ここはさらに規模が大きく多くの冒険者(プレイヤー)達がここにいる。


 ミゲル達も恐らくここに来ている筈なのだが……外からじゃ見えないよな。


 それにエルナが酒場には全く興味を示していない。それならオレもここはスルーする。そして外周の2周目に入った。


 ここからがギルド街になる。フレアヴェールには、元々存在する基本職ギルドの他に上級職専門のギルドも存在する。


 つまりオレの例で……いや、例が良くない。残念ながら調合士ギルドは魔導技師も薬師も兼任している。

 理由は考えるまでもないな?過疎ギルドにスペースはいらないのだ。


 ということで例をエルナにする。

 エルナは『戦士』から派生した上級職である『剣士』だ。そしてここにはエルナが利用できるギルドとして『戦士ギルド』も『剣士ギルド』も存在している。


 過密を避けるという意味だけでなく、ちゃんとギルド内で受けられるサポートも少し違うらしい。そういう話を聞くと少しうらやましいかな。調合士(こっち)はどこにいってもクリエラが出てくるだけだからな。


「あ!ほら見えてきたよ」

「そろそろだな」


 ギルド施設街を抜けるとその先には特に目立った施設はなく、住宅エリアに相当する入り口がいくつかあるだけとなる。そうした外周をさらに2~3周すると最下層が見えてきた。 ここらまで来ると冒険者(プレイヤー)はもちろんNPCの姿もほとんどいなくなる。たまに見かける冒険者(プレイヤー)は、今のオレ達と目的は同じだ。


「着いた!」


 最下層の展望エリア(・・・・・)まであと少しというところでエルナがオレの隣から飛び出して走って行く。


 そう、この町の最下層には観光スポットと言ってもいい展望エリアがある。

 展望(・・)というと、本来は広く高いところから眺望(・・)を楽しむものである筈だが、ここは真逆。下層から天高くそびえる中央城とそれを取り囲む壁の街並みを下から(・・・)楽しむためのスポットだ。


「凄い……凄いよ。ファクト」


 とっくに先に到着したエルナが、谷に張り出した展望エリアの中央で顔を上に向けて立っている。

 オレ達の他にも2~3組の冒険者(プレイヤー)が居たが、いずれも仲睦まじげなカップルだ。親娘みたいなオレ達とは少し印象が異なる。シナリオがリリースされて以降、そういったスポットとしてここは有名らしい。


 エルナが立っている場所に追いついたところで、オレも視線を上に向けた。

 眼前に広がる突き抜ける塔と、周囲の街並み。その造形の出来映えに圧倒される。中央城は数回訪れている場所の筈だが、こうして眺めるとまた違った趣がある。


「たしかに、これは魅入ってしまうな」

「でしょお?来て良かったでしょお?!」


 興奮冷めやらないエルナ。


「今度は上よ!上!」


 そう。下があれば、当然上にも展望エリアがある。

 折角下りてきたばかりなのに……なんて思うこと間もなく、今度は上の展望エリアへと向かったのだった。


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