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イルグラード(VR)  作者: だる8
第一章 物語の始まり
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第17話 レベルアップ

 道中、(ガドル)と互いのこれまでについてや、知り得たことなどについての情報交換をした。

 オレにとって最も大きかった情報としては、装備品には通常品の他に良品があり、追加効果や性能の上乗せ効果がついているものがあるということだ。その効果については、鍛冶職が持っている『装備品鑑定:鍛冶スキル』で分かるらしい。


「ファクトさんの装備、凄い効果がついてるだよ!こんな装備はオラ初めて見ただ」


 とりあえず、アニキと呼ぶのはすぐにやめさせた。ガチムチドワーフが『アニキ』なんて呼ばれてたら、あらぬ疑いをかけられかねない。

 全くもってそっちの気はない。新婚数ヶ月で離婚届を突きつけられるバツイチ甲斐性なしではあるが、ちゃんと女性が好きな一般的な男のつもりだ。……引き籠もってしまったが。


 それはそれとして、(ガドル)に、盗賊(ガキ)から奪った装備を鑑定してもらった時の最初の反応がこれだった。


 なんでもハンティングダガーには『即死効果50%』。ハードレザージャケットには『毒無効』。ハードレザーブーツには『移動速度20%UP』がついているそうだ。移動速度20%UPがついていても、ゴブリンからすら逃げられない速度の『調合士』の貧弱ステータスにやや戦慄したが、これは上位互換装備が見つからない限り手放せない逸品だ。


「そんなにいい装備品だったのか。でも、オレの当たらない短剣(ナイフ)捌きじゃ宝の持ち腐れか?」

「そんなことないだ。不得意だからこそ、攻撃が当たった時の効果を支援してくれる追加効果はありがたいだよ」


 他に鑑定出来る装備品としては、クロスボウがある。


これ(クロスボウ)は、ファクトさんの専用装備だ。『命中精度80%UP:調合士装備時』って効果がついてるだよ」


 なるほど。ギルド報酬らしい装備品だ。

 もちろん他職が装備することは出来るが、その効果を最大限に引き出せるのはギルド所属の職業のみというのはありがたい話だ。面白いようにゴブリンの急所に当たったのは、恐らくこの効果ゆえに違いない。


 ちなみに先ほどゴブリンが落としていったチェーンメイルとライトバックラーには何の追加効果もついていなかった。


「残念だったな」

「これが普通だ。追加効果付きの装備品の方が珍しいだ」


 と、あっさりしたものである。


 そのほかに分かったのは装備したときのステータス値変化だ。

 クロスボウなどの遠隔攻撃関連には影響はほとんど無いが、ナイフなどの直接攻撃は威力半減。その他身につける防具などの装備品の効果も7割程度の効果しか無いらしい。


「職業によって変わるらしいだ。詳しくはわからねぇだ」


 (ガドル)は、細かいステータス変化にはあまり興味がないようだが、覚えておく価値はあるだろう。


 モルトの街に戻る頃にはすっかり辺りは暗くなっていた。

 オレたちは真っ直ぐ住宅エリアへとむかう。


「せっかくパーティになっただが、オラはいったんここらで落ちるだ」

「そうか。またな、お疲れ」

「えっ!?」

「ん?」


 ログアウト宣言をした(ガドル)に別れを告げて、さっさと住宅エリアへと入ろうとしたオレを止めたのは、(ガドル)のやや悲しそうな声だった。


「そ、そのまま行っちまうだか?」

「?……どういうことだ」

「フ、フレンド登録……」


 あぁ、なるほど。全く意識していなかった。

 もともとソロプレイ(ぼっち)がメインだし、他ゲームでもめったにフレンド登録などしなかったものだから、完全に意識外だった。


「そうか、このゲーム(イルグラード)でも出来るのか」

「知らなかっただか?」


 オレの反応に微妙な表情を浮かべる(ガドル)。心の底で呆れているのかもしれないが、まあこれは100%オレのせいだ。仕方ない。


「知らん。やり方を教えてくれ」

「AIが教えてくれなかっただか……」


 そうなのか。本来ならアリスが教えてくれるのか。

 まあチュートリアルも彼女が担当だったし、自然なことなのだろうが、彼女からフレンド登録の話は欠片も感じなかった。あとで聞いてみることにしよう。


 教えられるがままにフレンド登録を完了すると、(ガドル)は住宅エリアへと姿を消した。

 要するにログインしているかどうかがわかるスマホのようなものだ。ゲーム内(イルグラード)でプレイしてさえいれば、遠隔通信も可能というシステムである。


 しばらく登録画面を見ていると、(ガドル)の表記がフッと暗転した。ログアウトしたということだ。

 なるほどね……と呟きつつ、オレも住宅村に入った。


……


『申し訳ありません、ファクト様。勝手にファクト様はソロプレイヤーかと思い込み、フレンド登録説明の優先度を下げてました。こんなに早く登録されるとは思っておりませんでした』


 アリスがオレに三つ指ついて謝っている。

 いや、そんな風に謝ってもらわなくてもいいんだが、むしろ謝りながらぼっちであることを軽くディスられているような気がするのは気のせいだろうか……いや、追求するとこっちが悲しくなりそうなので、それはやめておく。


 というより、AI(アリス)がオレの性格やプレイスタイルから『ソロプレイヤー』の可能性をはじき出したという事実に驚きである。

 そしてその分析は基本的に間違っていない。フレンド登録をしている自分にオレが驚いているくらいなのだから。


 土下座されたままでは、オレも居心地が悪いのでいつも通りにしていてもらえるよう、何故かオレが懇願してしまった。まあ、いいや。


「アリス、材料を大量に仕込てきたんだ。調合するんで見ててくれ」

『はい、ファクト様』


 フィールドで採集してきた大量のアロエをまず二つ取り出すと、その場で『回復薬小』を登録したジェスチャーで調合する。

 ギルドで調合のチュートリアルをした時のように、2本のアロエが小さく発光してその場から消え、代わりに薄青の透き通った液体の入った瓶が現れた。が、それだけで終わらずに、ファンファーレが鳴りウィンドウが目の前に現れた。


『調合士のレベルが上がりました』


『ファクト様!おめでとうございます!』


 アリスが祝福の言葉をくれる。

 これがレベルアップか。って……あれ。調合でレベルが上がるのか。戦闘ではどうなんだろう?経験値?のようなものはもらえているのだろうか。


 ステータス上には『経験値』に相当する値は表示されていないので、詳しいことは分からない。が、まさか初級の調合一回でレベルが上がるとも思えないので、今日のゴブリン戦もカウントされていると考えていいだろう。

 そう言えば、経験値だけではなく他にも、他のゲームとの違いとしてHP『生命力』に相当する値も表示されていなかった。オレ個人としては違和感しかないのだが、制作側の意図的なものなのだろうけど……。


 その後、フィールドで採集してきたアロエ総数122本を全て調合し、計61個の『回復薬小』が手に入った。

 ちなみに最後の一つを調合した時にレベルがもう一つ上がったので、オレのレベルは3になった。生産職だからなのか、戦闘するより調合する方がレベルが上がりやすいのだろうか?この情報は後で(ガドル)にも伝えてやろうと思う。


 不得手な戦闘ばかりして、レベルも上がらないのでは非効率すぎる。仲間になった以上、(ガドル)にも強くなって貰わないといけない。


『ファクト様、お休みになられますか?』


 大量に出来上がった回復薬小をアイテムボックスにゴソゴソしまい込んでいると、アリスが話し掛けてきた。


「ん?いや、まだ落ちないよ。ゲーム内時間はまだプレイ開始してから二日目だろ?ということは、まだリアルでは二時間くらいしか経ってないはずだし」

『あ、いえ。そう言う意味ではなく、外出先から帰られましたので体力回復致しますか?という意味でお尋ねしました』


 そういうことか。

 確かに外では戦闘をしてきたわけだし、ゴブリンに背中を噛みつかれている。自覚症状がないうえにHP表記がないからか、ダメージを負っている自覚がない。


「アリス?もしかして、アリスにはオレのHPが見えているのか?」

『HP?……が、なんのことかは分かりませんが、ファクト様の《体力値》が減っていることはわかります』

「多分アリスの言う《体力値》ってのはオレが聞いたHP(生命値)のことで合ってるはずだ。……そうか。自宅に帰らないと分からない仕組みか。意外と厄介だな」


 オレは腕組みをして考える。

 詳しい値は、自宅で支援AIに聞かないと分からない。目に見えて低いときだけは名前表記の色変化で分かる。……そういうことのようだ。


「分かった。じゃあアリスの提案通り、少し休ませてもらうよ。どのくらい休めば全快するんだ?」

『はい。ファクト様の現状から計算しますと、イルグラード時間で2時間程度お休み頂ければ全快致します』

「了解。じゃあその頃に起こしてくれ」

『承知致しました』


 オレはログインしたときに目覚めたベッドの上で、ファクトの巨体を横たえた。



====================

名前:ファクト

性別:男

種族:ドワーフ

--------------------

職業:調合士

LV: 3

腕力:12+6(STR+50%)

活力:16+8(VIT+70%)

敏捷:10+5(AGL70%)

器用:27

魔力: 3

運 : 3

--------------------

武器:ハンティングダガー(STR+12):即死効果50%

盾 :

サブ:クロスボウ(STR+10):命中精度80%UP:調合士装備時

弾 :ウッドボルト(STR+5)

頭 :

胴 :ハードレザージャケット(VIT+12):毒無効

下肢:

足 :ハードレザーブーツ(AGL+10):移動速度20%UP

--------------------

固有スキル

 調合

 アイテム鑑定:調合士

--------------------

修練スキル

 虫の知らせ

--------------------

レシピ

 回復薬小

 ウッドボルト

--------------------

受注クエスト

 回復薬小の納品

 ゴブリンの討伐

 新作武器の材料調達

--------------------


====================

名前:ガドル

性別:男

種族:猫の獣人

--------------------

職業:鍛冶

LV: 1

腕力:10+2(STR+50%)

活力:10+11(VIT+70%)

敏捷: 5+1(AGL+70%)

器用:20

魔力: 0

運 :10

--------------------

武器:ウッドハンマー(STR+4)

盾 :ライトバックラー(VIT+5/AGL+2)

頭 :

胴 :チェーンメイル(VIT+10)

下肢:

足 :

--------------------

武器防具の性能表示は半角表記にしました。

⇒装備欄が本来の性能でステータスに追加された数値が実際の効果値ってことです。

分かりづらいですかね……

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