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イルグラード(VR)  作者: だる8
第一章 物語の始まり
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第10話 クエスト

 オレは目の前に並べられた三枚の板をのぞき込む。ぱっと見には、板にそれぞれクエストとしての依頼が記載されているようには見えない。


『この3枚のクエストはねっ、今のファクトにピッタリのものを選定してきたんだよっ!』

「どうやって中身を確認するんだ?見方すらわからないが?どうしたらいい?」


  板とクリエラを交互に見ながらオレが質問すると、クリエラがにまぁっと笑みを浮かべる。


『もちろんっ!これから説明するのさっ!まずは板の表面を触ってみてよっ!』


 オレは言われるがままに、並べられた一番右の板をちょんと触った。

 すると、ブンッと……音は鳴らなかったが、なったかような勢いで板の上にステータス画面が表示される。


「なるほど、こうやって依頼を確認するのか」


 オレは画面に記載されたクエスト内容をざっと確認してみる。


―――――――――――――――――――――

件名 :回復薬小の納品

―――――――――――――――――――――

依頼者:調合士ギルド

内容 :回復薬小を納入すること。

期限 :無制限

回数 :無制限

条件 :1個単位で納入を受け付ける。

報酬 :買取額25G/個

―――――――――――――――――――――


「クリエラ、安くないか?」

『えっ?』


 いきなりの反撃にうろたえるクリエラ。予想外だったのだろうか。


「回復薬小は店売価格50Gなんだろ?もちろん50Gで買い取ってくれとは言わないが、どっかの買取商に売り払ったらいくらになるんだ?それがもしどっかのゲームのように半額の25Gだとしたら……ギルドまでわざわざ持ち込む手間を考えたら、同じじゃなあ……って思うが?」

『そ、それは、1個単位だからだよっ!買い取り単位がもっと多いクエストなら1個あたりの買い取り率が上がってるはずだよっ!それに、ギルドに持ち込むことで貢献ポイントがっ……』

「貢献ポイント?なんだそれ。その説明、まだ受けてないが?」

『ああっ!うぅぅっ!』


 オレの質問にクリエラが苦悶の表情を浮かべる。しまった!という意味にも受け取れそうだ。

 これも……いまは話せない内容だったのだろうと容易に想像がつくので、詳しくツッコむのはやめておくことにする。


「まぁ、いい。じゃあ買い取り率の高いほうのクエストにしてくれ」

『え……とね?今はこれしか紹介できないんだっ!』


 クリエラはバツが悪そうに答える。

 なるほど、これも予想がついた。要するにちゃんとRPGしているということだ。

 あまりにもクリエラとのやり取りが流暢なものだから、ゲームであるという本質を忘れそうになる。


 『ファクトにピッタリの……』などと言っていたが、恐らくこの3枚のクエストは最初に紹介すると決まって(・・・・)いるクエストだ。これを3つクリアするか、もしくは1つ以上クリアしたり、レベルを上げたり。あとは、クリエラが口を滑らせた『貢献ポイント』という裏の値によって紹介できるクエストが変わるのかもしれない。


「そうか……じゃあ、これ」

『え、何っ?』


 クリエラはオレが差した先を見る。そこには先ほどチュートリアルで調合したばかりの回復薬小があった。


「これを納品するんで25Gくれ」

『!?そうきたかぁっ!これはねっ!最初からギルドのものだから、納品対象にならないよっ!』

「ダメなのか」


 まあ、ダメだろうとは思ったが、言ってみるのは自由だ。少なくともゲームキャラ相手に金銭的な交渉が出来るゲームではないことが確認出来た。とはいえ出来ないことでもクリエラの反応が面白いので、時々やってしまいたくなるのはご愛敬だ。


 オレは次のクエスト板(プレート)を確認することにした。


―――――――――――――――――――――

件名 :ゴブリンの討伐

―――――――――――――――――――――

依頼者:商人ギルド

内容 :ゴブリンを討伐すること。

期限 :無制限

回数 :無制限

条件 :1体単位で討伐報酬を支払う。

報酬 :20G/体

―――――――――――――――――――――


「……ゴブリン、回復薬小より安いのか。ていうか、依頼者が調合士ギルドじゃないが?」

『そうだよっ!このクエストみたく他ギルドからの依頼もあるんだっ!調合士ギルドも他ギルド宛に依頼を出しているよっ!アロエの収集とか』


 クリエラの説明に、オレはなるほどと納得する。


 ゲームベースなので実際のところどうにでもなりそうな気はするが、いちおうそこは一つの街や組織として流通や協力を意識した世界になっているようである。このゴブリン討伐クエストなんかは『商人が行商をするにあたって、ゴブリンがいると安全に旅ができないから……』などという裏背景からのクエストなのだろう。


 そこまで理解できたオレは最後のクエスト板(プレート)を確認する。


―――――――――――――――――――――

件名 :新作武器の材料調達

―――――――――――――――――――――

依頼者:鍛冶ギルド

内容 :以下材料を集め、納品すること。

    アイアンインゴット 5個

    クロムインゴット 1個

期限 :無制限

回数 :1回のみ

条件 :一括納品

報酬 :新作武器

―――――――――――――――――――――


「これはっ!」


 思わず声を上げる。


 材料は……記憶が間違ってなければ、これはステンレス鋼を作るための材料だ。こんなところをこだわらなくてもいいのにとも思うが、それはそれ。

 そして『新作武器』という言い回し。要するに自分のための武器を作ってもらえるというクエストだ。


 今まで明らかに目の色を変えているオレに対して、クリエラがまた覗き込んでくる。……近いよ。


『どおっ?やる気でたかなっ?まあ、すぐにこれ集めきるのは難しいけど、このクエスト自体はうちのギルドでしか紹介してないからねっ!』


 オレは初めてクリエラがいい仕事をしていると思ってしまった。

 実に失礼な感想だが、クリエラは最初からこのクエストのことが頭にあって、武器の紹介をしていたのだろう。つまりこのクエストの報酬は……銃だ。


 と、同時に一つわかったことがある。

 このクエストをクリアしない限り、少なくともこの街……モルトではゲーム上、銃が手に入らないということだ。


「クリエラ。この3つのクエストを受けたいんだが」

『了解だよっ!じゃあクエストステータスを表示させてくれるかなっ!』


 言われたとおりにクエスト板(プレート)を再表示させる。まずは回復薬小のクエストだ。


『そしたら表示の下の方にサイン欄があるから、そこへ手をかざしてくれるかなっ!』


 オレはクリエラに言われるがまま手をかざすと、サイン欄にオレの名前……『ファクト』が入力された。


『オッケー!これでクエスト契約成立だよっ!同じことをあと2回やってってねっ!あ、契約した板は持ってってね。なくしてもクエスト契約がなくなることはないけど、報酬を受け取るときに必要だからっ!』


 報酬がなくなるのは痛い。

 オレの中でこのクエスト版(プレート)は重要アイテムにランクアップした。そして残り二枚も同じように契約する。


『よっし!これでボクの説明は一通り終わりだよっ!頑張って楽しんできてねっ!』


 クリエラは最初に会った時と同じような眩しすぎる笑顔を放った。


==========================

名前:ファクト

性別:男

種族:ドワーフ

==========================

職業:調合士

LV: 1

腕力:10

活力:15

敏捷: 7

器用:22

魔力: 0

運 : 1

―――――――――――――――――――――

固有スキル

 調合

 アイテム鑑定:調合士

―――――――――――――――――――――

修練スキル

 虫の知らせ

―――――――――――――――――――――

レシピ

 回復薬小

―――――――――――――――――――――

受注クエスト

 回復薬小の納品

 ゴブリンの討伐

 新作武器の材料調達

―――――――――――――――――――――


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