キドニーパイ
Nobukazu Takemura - Child and magic
を 聴きながら
””
キドニーパイを作ろうと思い、子供たちの数を数えた。ひーふーみー。
ひーふーみー。
……そうして、思い立つ。
……椅子が必要だわ、って。
子供用の足がついた高めの椅子の数を数えた。ひーふーみー。
ふわふわっと、部屋にたちまち充満する子どもたちの声。
食器とそろいのフォークやナイフも子供用の可愛いものを綺麗に食卓に並べる。
今朝がた、頂いたばかりの小鹿の内臓を柔らかく煮詰めたものを、特製のパイ生地の中におさめて、パイ生地で網模様に蓋をする。
出来上がったものをそれぞれ切り分ける。
子供達の歓声が、ふわふわと上がる。
カチャンッ
あ、フォークが落ちてしまった
””
何もない荒れ果てた部屋のそこは台所で
焼きあがったばかりのキドニーパイが添えられていました。
””
透明なこどもたちと透明な母親が、ふわふわと笑いながら手づくりをしている
キドニーパイ。
お祝いのそれを。
いつまでもずっと幸せな時の中でとどまりながら。