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第一話

 俺の名前は男気猛(オトコギタケル)。異世界転移して世界を救った男だ。向こうの世界で勇者として剣を振るい、見事に魔王を倒して見せた。

 女神はその見返りに力を授けると言った。ご褒美というやつだ。

 俺は躊躇なく、一つの願いを口にした。


「持続力MAXのデカ〇ラを頼む」


 女神は少々顔を赤らめたが希望を聞いてくれた。

 そうして手に入れた相棒に、俺はビッグマグナムと名付けることにした。

 女神が転移魔法を唱えている間、俺はこれからの現実世界での生活に思いを馳せていた。

 俺の異世界(こちらの世界)での経験人数は優に1万人を越える。ここで培ったテクニックにビッグマグナムが加われば、現実世界の女を制覇してしまうのは時間の問題だろう。たぶん一ヵ月もあれば一人残らず堕とせる。

 そんなことを考えいる間に転移魔法が完了した。

 暗転していた視界が開ける。

 俺は自室に立っていた。

 カレンダーを見る。2008年3月――俺が転移した日付と同じだ。女神は転移寸前の状態に戻してくれたようである。


「それでは勇者よ。名残惜しいですがお別れです。私たちの世界を救ってくれてありがとうございました」


 女神の声が遠退いて行く。

 異世界に置いてきた亜人の女の子たちに会えないのは名残惜しい。だが悲観する事はない。何故ならこちらの世界にも女の子はいるのだから。

 朧げな記憶を辿る。

 ――そうだ。俺にはかつて好きだった女の子がいた筈だ。名前は確か安東ゆーみ。あだ名はユーミンだった気がする。

 転移前と同じ時間に戻ってきたのなら、ユーミンはまだ俺と同じクラスにいる。

 俺は思わず小躍りしてしまった。ユーミンにこのビッグマグナムを捧げられるのだ。これを嬉しいと思わない男がいるだろうか。

 顔を綻ばせる俺。脳内は明日のスケジュールを立て始めている。壁ドンからの膣ドンでいける筈だ。というか異世界の女の子たちもこれで堕ちてきた。


「……何だこれは」


 ふと自室の勉強机の上に置かれた一枚の冊子に目がいった。

 表紙には”肉体マッソゥ男子高校”と書かれている。どうやら男子校のパンフレットのようだ。

 何故こんなものが自分の机の上に置いてあるのだろう。疑問に思った俺は階下に下り、数十年ぶりに再会した両親に尋ねてみた。


「母さん、何だこれは」

「猛……?なんだかいつもと雰囲気が違うじゃない。いったいどうしたの?」

「今は俺が質問している」

「え?何言ってるの。あなたが進学する高校のパンフレットじゃない」

「俺は男子校に進学するつもりなどない。共学の高校に行って女の子とイチャコラするんだ」

「ちょっと本当にどうしたのよ。頭でもぶった?」


 やれやれ。

 俺はため息混じりに肩を竦めた。


「本当に俺が男子校に進学するという証拠があるのか?あるのなら今ここで見せてほしいな」


 ここで母が本気で心配そうな表情を浮かべた。そしてリビングから出て行った。

 それからしばらくして、手に何やら一枚の用紙を持って戻ってきた。


「これ、肉体マッソゥ男子高校の合格証明書。あなた共学は女子が苦手だから無理って言って男子校を選んだんじゃない。今更変えようったって無理よ?」


 母の言葉を聞き、転移前の記憶が徐々に蘇ってきた。

 そういえば当時の俺は女性が苦手だったのだ。話せば脇汗は滝のように溢れ出てくるし、顔面だって一瞬でオイリーになった。

 ――あぁ、何て事だろう。どうやら俺は男子校に進学しなくてはならないようだ。カレンダーの日付を思い返せば現在は3月。入学式は4月。男だらけの監獄にぶち込まれるのはすぐそこではないか。


「やれやれ……」


 俺は顎を軽く上げ、人差し指を立てて眼鏡を上げる動作をした。

 眼鏡などしてはいないが。

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