むかしむかし
むがし、むがし、あったどさ。
八金の村さ、金奈どいう娘がおった。
金奈は、それはそれは美しい娘で村の中で評判だったど。
んだけども、金奈がある時、病気っこさかがったど。
どんな医者にかがっても治らね病気であって、泣く泣く金奈は床さ臥していたどや。
「いづまでも美しくいてぇ」
「死にたぐねぇ」
涙で枕を濡らしで、そんなこどを金奈は考えでおったどさ。
そんなある日、金奈の夢ん中さ神様がきたど。
「そんたにいづまでも美しくいてったば、太平の沼この水飲めばいい。まんず、行っでみればいいごとしゃ」
夜中だったばって、金奈はマタギであった親の山の地図ど灯りっこ持って太平の沼こさ向がったど。
山越えでようやぐ太平の沼こさ着いだ金奈は手で沼の水っこすくって飲んだど。
したっけたちまち喉が渇いでしまって、もう一杯、もう一杯とすんごい勢いで水こを飲んだど。
ようやく渇きがなぐなったばって、金奈はその時気づいだどや。
「―竜がおる」
水面さうづったのは、一匹の大ぎな大ぎな竜であったど。
そしてその竜を見で、ようやぐ金奈は自分が竜さなってしまっだこどさ気づいだど。
「金奈、どこさいだったぁ」
人間でねぐなってしまっだ悲しみにくれる金奈のもどさ、母さん追いかげできたどや。
そして竜さなってしまった金奈の姿を見で、どでんしてしまったど。
「母さん、わだしは戻らいねぇ。こごさ残るは。」
「待っでけれ、金奈、待っでけれぇ」
したども母さんの叫びもむなしぐ、金奈は沼こさ潜っていってしまったど。
それがら村の人だちは竜さなっだ金奈のこどを祀ったど。
それがら八金の村でだば米っこも野菜っこもたぐさん採れるようになったどさ。
とっぴんぱらりのぷぅ。