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龍女皇陛下のお婿様  作者: 俄雨
キシミア編
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キシミア自治区4



 ヒナは物事に対して豪快であり、躊躇わない事を好としているが、その基本的な性格はやはり扶桑の文化的影響を受けた、扶桑女性らしいものである。


 借りた家はすっかり掃除してあったし、いつ客を招いても恥ずかしくない程整頓されていた。

 あのみょうちくりんな店も、珍品が並んでいるという奇抜さがあるだけで、雑然としている訳ではない。客に直ぐ席を用意し、お茶まで出すのだから、彼女の本来の慎ましやかな部分が伺える。


 あの国は、傍から見れば男尊女卑極まる社会なのかもしれない。家の事は女がやれ、男は外で働いて家ではデンと構えて居ろ。なるほど文字に起こすだけならばそう思えるが、実情は違う。


「エオちゃん、一人にしてよかったのかな」

「街の勝手を知るには、お使いを頼むのが一番ですよ。僕達は許可証を貰いに行きましょう」

「ん。ヒト多いね。男も女も忙しない」

「そういう国ですからね。性別に胡坐をかかない社会なのですよ」


 ……あの国を支配している女皇陛下というのは、女の、性差の権化なのだ。


 女は徹底的に女でいろ、男は徹底的に男でいろ、という。それは生半可な事ではない。数十年前までは、繁忙期以外の女の労働すら禁止されていた。農家すら例外ではない。


 女は家に居て家事をこなし、華を愛でて詩を歌って慎ましく清楚に、夜は旦那の娼婦であれと。


 逆に男は例えどんな身体的不利を持っていても、働かなければヒトとしての権利すら存在しないに等しかっただろう。


 極端極まりないのだ。決して男にも女にも優しい社会ではない。


「どーしたの?」


「いいえ。ここには色々な文化の影響を受けたヒトやモノがありますから、見聞を広める為にも、沢山触れてくださいね」


「うん。ねえよーちゃん」

「はい?」

「いつかは、実家に帰りたい? 西真夜や扶桑は、良い所?」


「意欲的に働ける男性と、慎ましくあれる女性ならば、幸せな国ですよ。それ以外にとっては、もはや地獄と言えましょう。自由意志は無いに等しい。勿論、昔に比べれば緩和されましたが。帰りたいかと問われれば、まあ否です」


「よーちゃんは、妹を残してきてるって。西真夜に」


「ええ。もう、二度と逢う事もありせんが。ああ、妹とは言いますが、イトコなのです。彼女の兄が死んでから、彼女を任せられたので、僕と一緒に住んでいました。親戚からは非難轟々でしたけどね。同居家庭教師と生徒、が妥当なニンゲン関係かと」


「美人?」

「貴女を除けば世界一です」

「わ、豪語した」


「……濡れた羽のように艶めく黒髪、おっとりとした優しい目に、小さく整った鼻。紅を引いたような唇は常に潤い豊かでした……触れたら傷が付くのではないかという白磁のような肌と……慎ましい……ちょっと慎ましすぎる胸……」


「よーちゃん気持ち悪い」

「――ハッ。失敬。いや、本当に、見せてあげたいぐらい美しい子なのです」


 我ながら可笑しいとは思うのだが、本当に美人なのだから仕方が無い。また、同じようにその美貌を持っていたのが、時鷹という男であった。


 彼女の下を離れてまだそう時間は経っていないが……幸せになって欲しい。どうか彼女の望む幸せを見つけて、静かに暮らして欲しいのだ。兄は死んだ。従兄の自分は逃げ出した。彼女の悲愴を思うと、胸が苦しくてならない。


「好きだった?」


「大切でした。僕は彼女が望むならばその身を捨てる覚悟すらあった。いや……結果、捨てたのかもしれませんが……」


「ふふっ」

「な、何か?」

「色々、話してくれるようになったから」

「いつまでもだんまり、というのも失礼ですしね。面白味の無い過去しか持っていませんが」

「辛い事は、忘れても良いと思う」

「なるほど?」

「エルフは長生きだし、これからも長いから、ちょくちょく忘れて、幸せな事、探せば良い」

「金言です。エルフ信徒向けの説教の一節としましょう」

「んー。そうだ、これからお役所」

「ええ。確か、神殿と一体になっているというお話でしたが」


 シュプリーア様語録集を認めてから手帳に挟んでいたキシミアの地図を取り出す。手帳はここに来て買ったものだ。


 海岸線を半円で覆うようにしてキシミア城塞は存在する。大ホロゥ河の主流は東の城塞外だが、支流は何本かが城塞内に流れ込んでいた。中州となる部分が二つ、他は全て地続きだ。


 自治区の名の通り自治府が存在し、本国の指示を受けつつも独立行政を執り行っている。

 キシミア市民の総人口は約四〇万。下手をすれば大国の首都程の人口だ。また出入りが激しい為、正確な数は把握しきれていない。


 一番多いのが人間族ヒューマン。次いで獣人族ライカン森林族エルフ岩窟族ドワーフは相変わらず少数派だ。本国の影響もあり、行政や軍には獣人が多い。


 そして更に珍しいのが人獣牙族オークだ。ノードワルト大帝国の前身となる国と覇を争ったのは神話の昔、今は人里離れた場所に村を作り小さく暮らしている者ばかりだが、ココでは船乗りとして職を持っている者が多い。エルフと同じくして森の民というイメージは、かなり古い考えである。


「……んっ。あれ」

「あー。ええ。あまり見ない方が良いです」

「でも、首輪つけられてる」


 リーアが指さす先にあるものは、大きな檻だ。人種様々だが、連合王国との戦争によってぶん獲られた奴隷であろう。ここには全てのものが集まり、世界に出荷される。奴隷も例外ではない。


「……? えっと? よーちゃん、ごめんなさい、分からない」


「奴隷と言います。主に戦争で捕まって売られるヒト達です。ビグ村のような場所にはいませんでしたが……中流階級以上の家は、奴隷を財産として持っていますね」


「ヒトが……ヒトを、売り買いしているの?」


「ええ。ウチの国にはありませんでしたから、ちょっと理解に苦しみますが、西国なら大体の国にいます」


「扶桑にはないの?」


「皆が役割を決められているのです。国民が女皇陛下の奴隷のようなものですから、要らないでしょう。陛下は自国にも他国にも厳しいので」


 まずこの場所に来るに至り、説明すべき事柄であった。リーアはまだ世を知らず、ヒトは皆ヒトとして平等であると思っている節がある。残念ながらそのような優しい世界は何処にも無い。


「同じじゃないんだ……」


「悲しい話ですが、そうなのです。我が神。彼等は他人の財産として扱われます。扱われ方は国の法によって定められているので、様々ではありますが」


「助けられないの?」

「奴隷商を殺せというのならば簡単です。僕に命じてみますか?」

「――……やめる」


「はい。彼等は大きな組織であり、また大半が所属する国家の一資金源です。彼等を害するという事は、国家と喧嘩するという事。僕達は簡単に殺されてしまいます」


 リーアは暫くと押し黙ると、静かに泣き始める。


 これは現実であり、大変な不幸であるが、一個人が立ち向かって何とかなる問題ではない。そのやるせなさ、理不尽さを感じて、リーアは涙するのだろう。まだまだ無垢であり、また優しい神なのだ、彼女は。


 リーアの頭を撫でる。動かなくなってしまったので、仕方なく、ヨージが背負う事にした。


「ごめんね」


「とんでもない。我が神。貴女は優しい神であり、ヒトの世の理不尽を軽減する為に生まれて来たのでしょうから、嘆くのも仕方が無い事です。全てを救う事は叶いませんが、我が神の信仰が増えれば、それだけ幸福になれるヒトも増える。そう思って頑張りましょう」


 ここなどまだ良い。檻は清潔であるし、奴隷に瑕も見当たらない。食事もしっかりと与えられているらしく、やせ細った者も居ない。


 見た所、エウロマナ共同王国南部の兵士だろう。北方大陸西部、つまりノードワルト大帝国の西にある巨大な王国群であり、軍事、経済的に結びついた同盟だ。


 皇帝はおらず、王による合議によって大方の政治方針を決めている。連合王国と形式は似ているが、愛国心より郷土心の方が強い為に、戦争では我先にと逃散する者が後を絶たないと聞く。


 今は連合王国と共同王国経済圏の間に位置する島を取り合って戦争していた筈だ。


(イナンナーの喧嘩っ早さときたら三国一だものなあ)


 これで指導者及び上層部が皆女だというのだから、ヨージは身震いする他無い。


「ほら、我が神、みえてきましたよ」


 通りを過ぎて開けた場所に出る。広場の正面にはイナンナ様式の荘厳な教会がそびえ立っていた。八芒星に七本の木を象ったシンボルがあちらこちらに散見される。八芒星が大樹『イナンナ』を示し、七本の木が各種七部族を象徴している。


 チラリと横を見ると、大きな一本の木を抱く竜の紋章が見える。イナンナーに比べれば控えめではあるが、大樹教会だ。ここは宗教施設を取りまとめた広場なのだろう。合理的だ。


「おっきい……これ教会? すごい」

「イナンナ教会はどこも派手でして」

「イナンナって、大樹でしょう。星マーク? 大樹の方が、下なの?」


「あ、いえ。イナンナは女神であり大樹で、それを示すのが八芒星。その下にある七本は各種部族を象徴しています」


「大樹自体の神様。今も居るの?」

「お隠れになられたと聞きます」


 大樹教神話と、イナンナ神話では互いに齟齬はあるが、双方とも『大樹教の竜とイナンナが戦いました』と書かれている。


 ユグドラーシルの竜が生きており、イナンナが消えた事を考えると、勝敗は明確だ。


 両国とも不倶戴天の敵であり、講和を結んでいるからと、決して火種が消える訳ではない。潜在的に敵対しているのだ。故にこの国境線であるキシミアは奇跡のような土地である。


「お役所の入り口はアチラのようですね」

「ほんとにお役所と一緒なんだ」

「政教一致という考えが強いのですよ、連合王国は。名前もそのままですしね」


 ヨージの肩から下りたリーアの手を引き、教会内にお邪魔する。

 正面入り口に礼拝は←手続きは→という看板があり、それに従って進む。役所内は何の変哲もないお役所カウンターだ。番号札を握ったヒトや神が順番を待っている。


「以前サウザの役所に行った時は、ヒトが多いとグズッていましたね」

「むー」

「成長しているのですよ、そう膨れないでください、可愛いので」

「一二番」

「はい。行きますよ」


 番号を呼ばれ、指定のカウンターに出頭する。声を聴いた時点で分かってはいたが、ぶっきらぼうでやる気の無さそうな女性が爪を弄りながらお待ちあそばしていた。


 第一種別の獣人女性は爪やすりが手放せないと見える。祖が肉食の獣人には、お役所仕事は暇であろう。


「何?」

「キシミアでの宗教活動許可証を頂きたいのです。資料はこちら」


「はー、えーと、イナンナでも、大樹でも、皇龍樹でも、ロムルスでも、ない。どこにも加盟してない単品の新興宗教ねえ」


「何が問題でも」

「そういうのねえ、手続き面倒でさあ」

「ヒトとお話するときは」

「あ?」

「顔を見ながらにしてください、お姉さん」

「――……うっ」


 受付女性がやっと顔を上げる。

 そこには、外面の良さにかけては右に出る者が少ないヨージの笑顔が待ち受けていた。


「それで、お手続きは」


「あ、うん。まあ、やっておくよ。へえー。東国エルフなんて久々に見た。こんなところまで来て宗教活動とか、大変じゃない?」


「ええ。慣れない土地ですしね。貴女はずっとここで?」

「ううん。本国からの派遣。つかコネでさ。お母様がココで神官するってんで、ついて来たワケ」

「成程、では上流階級なのですねえ」

「ね、ね。手続き終わったらさ、どっかいかない? 美味しいお酒出す店知ってるんだけど」

「あはは。お誘いは有難いのですが、都合一人と二柱を養う立場でして」


「え、生活力あるぅ。アタシそういうの気にしないから。息抜きも必要だって絶対。あ、ちょいまってねー……はいこれ、いつもここで呑んでるからさ、いつでも来てよ」


「酒場に行く事もあるでしょう。その時は宜しくお願いします。はい、手数料です」

「あい、許可証。あ、あたし五法時上がりだから」

「そうですか。お仕事頑張ってくださいね」


 受付女性に愛想を振りまき、さっさと退散する。リーアはキョトンとしたまま手を引かれるままである。


「はあ……本国のヒトはぐいぐい来るなあ……まだあれで優しい方だから、恐ろしい」

「よーちゃん、お誘いされてたよ。行かないの?」


「連合王国本国において、男性の地位は低いのです。本国出身の彼女と一晩過ごした暁には、それこそ自分のものであると権利主張されかねません」


「も、モノ?」


「極端に言うとそうです。全部がそうではありませんけども、あちらの女性は男性所有欲が大変強いので。そういう文化的地盤で育ったヒトですから、あれで悪気も無いのですよ。むしろ礼儀ぐらいに思っていそうです」


 どこの世界にだって、あのようなニンゲンは居る者だが、少なくともヨージは役所の仕事中に男を口説くニンゲンは見た事がない。見るとすればそれは酒場で、しかも男だ。


 分かってはいたものの、ギャップというものに慣れるには時間がかかりそうだ。


「さて、審査もおざなりにサクッと終わりましたし。礼拝堂でも覗きますか?」

「うん。神様居るのかな?」


 この土地で布教活動をするならば、一応お目通りしておきたい相手だ。礼拝堂の入り口に建てられた看板には主祭神と副祭神の名が有る。


「キシミア守護神、エーヴ……まあ女神ですよね」

「エライ?」

「村どころか、一応一国家の神ですからねえ」


 村神ではなく、都市神。この土地四〇万の民を護る守護神である。御利益は海上安全が主であり、貿易都市らしいものだ。船乗り達が胸からお守りを下げていたのを思い出す。


「うお」

「すごー」


 重厚な扉を押し開いて礼拝堂に入ると、まずその彫刻群に圧倒される。

 三階建ての建物に匹敵するであろう彫刻が両脇に配置され、正面にはイナンナシンボルと、色とりどりのステンドグラス、タイル画が訪れた者を威圧感で押し潰す。


 金がかかっている。凄まじい。手入れも行き届いており、大樹教の大きな教会ですら、ここまではしないだろう。華美が過ぎる程だ。


 礼拝堂に椅子は無く、教徒達は皆地面に正座して頭を下げていた。両拳を地面に交差させて突き立て頭を下げる礼法はイナンナ独特だ。


「これ、倣った方が良いのかな?」

「いえ、他宗ですからね。礼儀上それは必要ありません。僕達はご挨拶しに来ただけですから」


 基本、他宗の神の拝殿や教会に訪れた場合、他宗の者がそれに従う必要は無い。ヨージ達が他の教徒達の邪魔にならないよう脇に避けると、礼拝堂の正面に幼い姿の者が、神官を伴って現れた。


(獣の神か。ニンゲンでいう所、第一種別)


 子供程の大きさで、純白に波をモチーフにしたであろう刺繍があしらわれた衣を纏っている。

 青い髪に耳。幼い顔立ち。一見すれば普通の獣人にも見える。


 神樹イナンナの子『グガランナ竜(四脚竜王)』は獣人の祖だ。種別深度が深ければ深い程尊いとされる為、獣神として祀られている神は第二種別(一般的にはヒトと同じ身体で、部分部分の毛が濃く、また鼻や牙が大きい)以上である事が多い。


 しかし良く注視すると、第一種別の見た目で神をしている理由が理解出来た。


(驚いた。あの耳は狼か。随分高位だな……)


 獣人が大帝国やエウロマナ、そしてイナンナーなどで『ライカン』と呼ばれる所以は、この狼型を基礎としているからだ。当然、オオカミに近ければ近い程偉い。獣神でも獣人でも狼型は少ない為、彼女が相当高位の神である事が分かる。


 本国から派遣された神であろうから、キシミアの戦略的重要度が伺える。


「神エーヴが施される。面を上げよ」


 高位神官が宣言する。獣人の神、エーヴは一柱で階段を降り、手前の信者からその手に持つ杖で何かしらを施している。


(御利益は海上安全なのに、神は狼なのか。まあ、見た目と奇跡が一致するとも限らないけど)


「我が神、アレは何をしているのでしょう。神の扱う魔力……神気は知っての通り、高次元なので知覚出来ないものですから」


「ん。おまじない。溺れ難くなるっぽい」

「そこまで分かるのですか」

「何となく。それに、あれは、専門じゃないみたい」

「狼ですものねえ」


 やがて神エーヴがこちらへと近づいてくる。ヨージは一般的な神への作法として頭を垂れた。


「お初にお目にかかります。わたくし達は治癒神友の会。こちらは我等が神、シュプリーアです」

「リーアだよ」

「――新しい神……それに東国エルフ。ふふっ。不思議な組み合わせ」


 思っていたよりもずっと幼く、また優しい声だ。所作は余裕があり、長い間生きている神である事が伺える。


「エーヴ。御年千を超えたの。お年寄り。エルフ、貴方は?」

「ヨージと申します」


 おっとりとした口調、コケティッシュな雰囲気は、確かにニンゲンの子供ではあり得ない。


「まあ。不思議な気。龍も見える」

「うっ……」


 ……エーヴが鼻をすすりながら言う。流石は狼型だ。そんなものまで嗅ぎ取れるか。


「常人ではない。ヒトでもない。カミでもない。リュウでもない。そんなヒトが……神を連れてる。しかも、従えているのではなく、従っている。不思議、不思議」


「か、神エーヴよ。ご容赦ください」

「うん。良い。すき。夜伽を許します」


 ……。


 夜伽。


 なるほど、と頷く。そして首を傾げる。


「……はい?」

「昼は好きになさい。夜はわたしが貰うから。リーアといった?」

「うん。どういう事?」

「夜は貸して欲しいの」

「よーちゃん、夜お暇?」

「それ、そういう問題ですかね……? い、いや、神エーヴよ」

「? 男なのだから、従うでしょう」


 しまった。

 完全に失念していた。

 そうだ。彼女は本国から来た神だ。つまり、イナンナー思想の権化である。


 彼女達にとって男というのは、労働力であり、戦力であり、奴隷であり、主夫である。彼女達が拝む神が、生易しいお考えである、訳が無かった。


「ではお約束。今夜は楽しみね」


 くすくすと、蠱惑的に笑い、何事も無かったかのように、彼女は施しを再開し始めた。


「わ、我が神ぃ……」

「まあー、大丈夫じゃないかな?」

「え、かるぅい! 我が神かるぅい!」

「そこ、五月蠅いぞ」

「スミマセン」


 女性が怖すぎる。ヨージの人生において、これほど不可避の恐怖は他に無いのであった。




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