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龍女皇陛下のお婿様  作者: 俄雨
扶桑事変
314/329

68%



 実京の中心部へ、続々と雁道軍が入り込んできている。依然として岩石は街中に降り注いでおり、被害は増加する一方であった。


 真百合と赤城はこれを防ぐべく結界を張る為に街の中心に残っている。ヨージ、ゼロツー、シュプリーア、エオ、フレイア、フィアレスは日没宮外苑に向けて歩みを進めていた。


 ポータルで飛べば早いのだが……首都に到着して直ぐに岩石爆撃が始まった事から、これが亜空間魔法による攻撃であると察するのに時間は掛からなかった。つまりポータルへの介入が不安視されている。致し方なく徒歩で向かっているが……シュプリーアは気が揉めて仕方がない。


「シュプリーアさん、前を見てくださいまし」

「……でも、沢山のヒトが死んでる」


「お気持ちは察しますけれど、回復役の貴女がいなければこの先厳しいものになりますのよ」

「……そうだけど」


 岩塊に潰されて息絶えた人々を横目に走り去るのは、シュプリーアの存在意義を揺るがすものであった。自分は治癒の神としてこの世界に産まれたのだという自負を、踏みにじられている気がしてならない。


 雁道の正気を疑う。いや、ヨージの話からすると、既に正気はないかもしれないが。

 こんな事を発想するだけなら自由だが、実行するようなニンゲンなのである。


「人間を一網打尽にする術なら幾らでもあったでしょうが、チマチマ潰している事も考えれば、間違いなく嫌がらせの類であると認めます」


「どうしてこんな事するの」


「リュウでも人間でも他人に価値を見出さない者が居る事を認めます。翻って他人に価値を見出す人間からすると、邪悪でしかない。つまりヨージ様および愚妹達の足を鈍らせるのが目的です」


「助ける為に歩みを止めたら、思う壺ってこと」


「善良な神ですね。愚妹などはまあ、バケモノの類なので、なんとも思わない事を認めますが……フィアレス様は?」


「わたくしはニンゲンの価値にも寄り添う事の出来る竜精ですので。不愉快極まりないですわね。人的資源が……才能が……勿体ない限りですわ」


 先を急ぐゼロツーの背中を追っていたが、やがて歩みが遅くなる。暫くもせず立ち止まってしまった。意味は理解する。理屈も解る。非効率である事は承知だ。


 だが自身に対する否定に対して、矜持が許さない部分があるのである。


「シュプリーアさん、置いて行きますわよ」

「そうして」


「あのですねぇ、ここはまゆりと赤城に任せましたでしょう」


「私は大局的な視点を持つ事に向いてないと思う。だからたぶん政治も下手だと思う。悲しい声が聞こえたら、直ぐ振り向いてしまうぐらいには、周りが見えてないと、感じてる」


「……」


 視線がヨージに向く。彼は立ち止まり、こちらを優しく見た。


「我が神、神フレイヤ、フィア殿。この岩を降らせている敵を止めてくれますか」

「惟鷹様、戦力を分散している場合ではございませんのよ」


「何かあった場合の班割は最初に決めましたでしょう。何かあった場合が今です。それに僕は我が神の信徒ですから、我が神のなさりたいようにしていただくのが仕事でもあります」


「よーちゃん、ごめんね」


「とんでもない。むしろもっと早く決断するべきでした。こんな状況、治癒の神である貴女に対する挑戦でしかありません。助力したいのは山々なのですが、僕は僕で……ほら、もう聴こえて来た」


 外苑が近づくにつれて、雁道軍の気配が多く感じられるようになる。誰かが誰かと戦っている、命を散らせている気配を強く受ける。


 つまり、古鷹佐京が丁度暴れ回っている最中なのだ。

 ヨージにとっての一番の因縁と対峙しない理由が、彼にはないのである。


「終わったら追いかけるね。フレイヤ、フィアちゃん、手伝ってね」

「ヨージ様がお望みならば全くその通りにする事を認めます」

「妥当でしょう。ルルムゥ、でしたかしら。それの残り滓なんぞ直ぐ始末しますわね」


 配慮させてしまって申し訳ない。己の性分が足手まといになる事はたびたびあったが、今回は極まっている。しかし神が神で有る限りは存在意義を否定出来ない。苦しむ者、悩む者に手を差し伸べてこそなのだ。


 この世界で神とはそのような役割を担っている。


 ゼロツーが固有を発動し、自我が曖昧になった時間があった。あの時の彼女は――こちらの質問に対して、大まかにであるが"すべて"を答えてくれた。これはゼロツー本人にも、ヨージにも言えない事だ。


 彼女が何から出来ているのか。

 何故こんな状況なのか。

 どうして世界はリュウが支配しているのか。

 アズダハとはいったい何なのか。


 ――ヨージ・衣笠とは何者であるのか。


 であればやはり、今の自分はココを支えるべきなのだ。


「岩が降る瞬間、亜空間が開いているから、間違いなくルルムゥの仕業だと思う。けど私とゼロツーが撃破したルルムゥが一番強い個体だったから、残っているのはそこまで苦戦しないと思うけど」


「どこから放っているのか不明、ですわね」

「人が多すぎて魔力探知どころの話ではない事を認めます」


「強いルルムゥは一フルスぐらいが能力効果範囲だった」

「では残っているルルムゥの範囲は、多く見積もっても半分程度ですかしらね」

「人手がいるね――こんにちは」


 リーアの視線の端でちらつく幽体に声をかける。呆然とする男は自分の死体を見下ろしているばかりだったが、声をかけられて驚いた顔をしている。


『え、あ、俺死んだのか……これ死体か、ひっでぇな』

「あとで蘇生とか出来るから、手伝ってほしいな」


『お、そんな事が出来るのか? いまのルールすげぇな』

「他のヒトも集めて来て。手伝ってくれたら、みんな蘇生させるから」


『マジか、神様? 神様だよな、浮いてるし、わかったぜッ』


 死んだばかりで現実感も薄いのだろうが、男はよしきた、とばかりにあちこち声をかけて回っている。


「便利な能力ですわねぇ……死霊術士でしたかしら。現代にもおりますけれど、幽体との会話が本当に難しいと聞き及んでおりますわ。やはりお母様由来ですかしら?」


「たぶん。このルールが変更になった後でも、出来る自信がある」

「死霊の使役だなんて、ワルキューレみたいな真似をするのですね」


 自身の能力の広がりを如実に感じている。生命に対する認識が、ここに来て各段に上がっていた。最初は皆も出来るものだとばかり思っていたが、竜精すら小首を傾げる程度には、特異であるらしい。


 自分は生命の死と生、双方を扱えるようにならねばならない。それを扱った上で、下支えとなる倫理観を疎かにしてはならない。能力も、思想も、雑に扱えばきっと碌な事にはならないからだ。智慧と技術、相俟って修得するからこそ立派になれるのだと、ヨージは言っていた。


『集めてきたぜ、神様っ』

「ありがと。みんな、探して欲しいヒトがいるの。同じ容姿で、たぶん複数人いるから」


 扶桑人とは異なる見た目をしている事、予想される格好、目の色……出来る限りを伝える。集まった霊達は各々確認をし、勝手に各自班割をし、勝手に手分けをして探し始めた。いちいち指示する手間が消えてしまった。


「扶桑人、何も言わず集団行動しますのねぇ。手際が良いったらない」


「そういう教育が基本だからだと思う。ニンゲンは弱いから、出来る限り補って行きましょうっていう。十全皇、凄いよね」


「貴女が彼女を褒めますの?」

「……沢山、苦労して学んだんだろうから」


 十全皇という女は――基本、凡人であった。しかし必要に迫られたからこそ、学び、実践し、それ等を云百万年と繰り返して来たのである。


 彼女が優れているのは……悲しい程の努力の賜物であるからだ。

 シュプリーアはそれを知ってしまった。知ってしまったのだ。


 彼女はただの……力を持ちすぎた、一人の女に過ぎない。


「しかし脆弱である事を認めます。人間の策一つで国が傾くだなんて」

「それはわたくしも疑問でしたけれど、たぶんわざとですわね」


「と、言いますと」


「だって、鍵分身なんていうものを用意出来る訳ですのよ。あれぐらいの力がある分身を幾つか用意して、首謀者を暴いてボコにしてしまえば全部解決ですもの」


「ああ、ではこれは、御遊び?」

「龍神の思考回路なんて解りませんわね」


「御遊びじゃあないと思う。ただ手段自体は沢山あって、その内の一つなんだと思う」

「では何故、このような煩雑な防衛手段を取ったのですかしら」


「……女の子だから」

「――……はい?」


「女の子だからだよ。好きなヒトに……ピンチを助けて貰いたいから」

「……――」


 フレイヤ、フィアレス双方絶句。この答えこそが、一番合理的なものである確信がある。ここに至ったプロセスこそ不明だが。


『神様、あっちの路地裏に、ポケッと突っ立ってる手配の女がッ』

『空を見上げて避難もしないでいる女の子がいます』


 続々と報告が上がって来る。予想通り遠距離とは言ってもそこまで離れては居なかった様子だ。岩をどこから調達しているのかと思ったが……。


『街の南にある河原に、似た人相の女が』


 どうやら輸送役、攻撃役と解れているようだ。


「フレイヤ、報告が上がった場所で各個撃破。フィアちゃんは河原に。終わったらフレイヤに合流してね」


「了解ですわ」

「ええ、働きます、働きます」


 真百合と赤城が防御結界を完成させれば岩石攻撃は防げるだろう。質量攻撃であるからには、高さが必要になる、ニンゲンの頭上を覆うように結界を敷いてしまえば、低すぎて大した攻撃にならない。


 だが相手がルルムゥであるのは良くない。亜空間魔法が結界を貫通しないとも限らない上に、別に攻撃するだけならば岩でなくとも良いのだ。出来るのならば大本を断つのが最も効率的である。


「比較的早く片付くかな……そんなに都合良いかな」


 ビグで、キシミアで、ツィーリナで、フォラズで、南方で。敵対した者達は、常に必死だったろう。自分の出来る限りの精一杯を振り絞って、己の目的を達成しようと足掻いていた。故に実力勝負も搦め手も、有る限りを出して来た。


 ではあの男、雁道はどうかというと、そういった気配がない。

 なんなら考え無しという可能性すらある。


 あらゆる場所に手を伸ばし、自分の有らん限りをもって変革を志す……というような男には見えなかった。故に、手抜かりは多いかもしれない。つまり、都合よく、自分の仕事は今ここで終わり、すぐヨージに追いつける可能性も、あるのではないか。


「……無いか。無いよね。最初から嫌な予感はあったんだ。私の勘は、嫌程当たる」


 振り向く。そこには北東侍が一人。白目を剥き、刀を構え、獣のように唸りをあげている。彼は人間族であった筈だが、口は大きく裂け、白い牙を晒し、体毛を生やしていた。


「ぐ、ぐぅぅぅぅぅぅぅうぅるるるるるるぅぅ……」


 特徴的であるのは、全身が傷だらけである事、そして、胸には拳二つ分もあろうかという、巨大な輝石――純礎水晶プロトクォーツがはめ込まれている事だ。


「ヒトなんて殺したくない。死んでいるところも見たくない。ヒトに傷ついて欲しくない。元気に幸せに生きて欲しい。だけど、それを望まないヒトが居る。そしてそれは私が思っているよりも、各段に多い」


「ごが、がぁぁぁ……」

「可哀想に……貴方、大豆総兵衛おおずそうべえ。逃げられなかったんだ」


 二番鍵を手に入れたヨージ達を強襲した侍の一人だ。ヨージの配慮によって逃がされた筈だったが……捕まり、この有様のようである。ともすると、彼の家族も殺されただろう。


 どうしてこんな酷い事が出来るのだろうか。今まで、悪い奴とされる者達は見て来たが、雁道に関してはやっている事一つとっても、心を感じられない。邪悪だとか、惨いだとか、そんな感想も浮かぶが……何より、無機質なのだ。


 じゃあ報復。じゃあ斬首。じゃあ虐殺。


 そんな、感情も動かさず、流れ作業でヒトの命を蹂躙している気さえする。

 銃杖顕現。構える。


「殺して石を取り外して蘇生したら、元に戻るかな。だから今は、ごめんね、まず死んで」


 命をどうとでも出来てしまう己の恐ろしさを抱えながら、リーアは銃弾を放つ。総兵衛はそれを視認してから斬り捌き、リーアへと突撃してきた。


 常人の身体能力、反射神経ではない。寸でのところで避けた一撃は、地面を割り、背後にあった建物を一刀両断して見せた。膂力が狂っている。STRがカンストした上で補正がかかっているのだろう。リーアが避けられた事を考えれば、DEXは低いと思われる。


『スイッチホルスター・オン』


 登録された十四個のバフが一気に掛かる。総兵衛も呻きながら自バフを盛って改めて構えた。スキルを使うだけの理性がまだ残っている。


 ……ヒトを喰った鬼、犬原厳斎は助けられなかった。あんな状態であるにも関わらず、自分のわがままで出来れば助けて欲しいなどと口にした。だがどうだ。今、似たような状態にある総兵衛を前に、自分は躊躇いながらも殺す事を選択肢の一番上に持ってきている。


 蘇生させるからいいだろ、なんて理屈は用いたくない。

 ないが、ではこれを状態回復キュアで癒せるかといえば、無理だろう。


 不完全な状態であった犬原ですら、三倍掛けしてギリギリだったのだ、あれだけ大きな純礎水晶プロトクォーツを抱えていては、効き目など期待出来ない。


力量看破サーチ


 様子を伺いながら敵の力量を量る――レベル89。リーアにして顔を顰めそうになった。


(え……強すぎる。おかしい。そもそも純礎水晶って、適合者以外は死ぬんじゃなかったっけ。適合しちゃったのかな……もっと無茶苦茶なやり方をされたカンジ。ニンゲンの魔改造)


 第四鍵分身相当のレベルを超えている。もはや野生に生えて来たボスだ。

 これは個人でなんとかなるものなのだろうか。遭遇して良い類の敵ではない。


精霊弾丸エレメンタルバレット


 総兵衛の頭蓋を狙い放つ。しかし弾丸は彼をただすり抜けて行った。一瞬判断が遅れる。


(あ、分身術……)


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」


 分身に気を取られている中、総兵衛の本体による全力の一太刀がリーアに直撃する。防御魔法が貫通、自動反撃が発動、数発の弾丸が総兵衛を貫くが、彼は意に介さず二の太刀を繰り出す。


 左手で受け止めるも、STR対抗に負け、その刃は深く、リーアの腕を二つに割いた。


「ぐぅぅぅ……っ」


 自動回復が発動、傷はじわじわと治り始めるが、遅い。治癒効果不活性を付与された攻撃と考えるのが妥当だ。


 攻撃方法、攻撃手段、攻撃効果が、どれも悪辣極まっている。総兵衛の腹へ蹴りを一撃して距離を取る。ダメージは見込めないだろう。あったとしても……HPが多すぎる。


「――ん、結界が」


 明らかな強敵に戦慄と痛撃が響く中、自分達の頭上に結界が張られたのが分かった。岩石は結界を貫く事なく、屋根に当った雨粒の如く、流れてどこかへ転がって行く。


 一先ず安心だが、こんな怪物を放置していたら、岩石落下とは言わずとも、大きな被害が出てしまう。また、自分の攻撃は高威力だが、まき散らす事が多い。全力を出して迎撃した場合、洒落にならない被害を生んでしまう。


 ヨージが民衆や仲間が居る中での戦闘に苦労する理由を、身をもって理解した。

 潜んで戦いたいが、そうなった場合彼は手あたり次第を攻撃し始めるだろう。


(ヘイトを集めながら戦って、せめて行動を止めないと)


分身隠形インビジブルハイド


 自分の分身を五体放ち、攪乱する。魔力探知に優れていれば見破れるものだが、総兵衛は突如として現れた分身の見分けがついていない。


状態回復キュアスリー


「が、グゥゥゥゥゥガアアアッ」


 動きが一瞬止まる。彼の状態異常を回復するには至らないが、精神に感応して自己矛盾を起こしているのだろう、十分な効果と言える。


『死霊縛陣』『死霊弾丸ネクロバレット・カウント30』


 魔力で強化した魂を召喚、総兵衛の動きを完全に止めに掛かる。その上で短期最大火力を出せる弾丸を装填、魔力充填を開始。


 周囲とニンゲンに被害を出さず、最小限に戦うとなれば、このような戦法になる。分身隠形インビジブルハイドによって召喚された分身が一斉掃射を繰り返している為、拘束を解く方にリソースを割けていないと見える。


 これならば――


「えっ」

「ぐあ、がああああ、あああっ、アアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」


 総兵衛が攻性魔力を放出、拘束が一気に解かれる。純礎水晶プロトクォーツが輝き始め、総兵衛の肉体が……三倍、四倍と膨れ上がって行くのが見えた。


 鼻は猛獣が如く伸び、牙がより鋭くなる。衣服が破れ鎧を破壊し筋肉が膨張、薄っすら生えていた体毛は白銀の長毛へと変化して行く。


 周囲に異常な魔力が波及している。突如として世界が暗くなり始めた。何の冗談か、昼だというのに、空には月が輝き始めたのだ。


「なに、なにこれ」


 分身は既に破られ消え、自分だけが残される。


「くぅ……『ショット』ッ!!」


 死霊弾丸ネクロバレット発射。総兵衛の腹を狙った一撃は禍々しい色の魔力と共に放たれ突き刺さるが――効かず。


(嘘でしょ)


 冗談のような耐久力に、リーアは目を回した。


自動復活オートリヴァイブ』『固有・治癒の雫』


 判断は早かった。総兵衛が攻撃モーションに入るよりも速く唱え保険を掛ける。


 総兵衛が刀をかなぐり捨て突進。避けきれず直撃した。膨大なVITとHPを誇るリーアだったが――悲しいかな、紙屑のように吹き飛ばされ、自動復活と自動回復が作動する。


「いっっ、ぎ、いぃぃ……ッ」


 全身を引き裂くような痛みで脳が混乱する。首を刎ねられても耐えられた筈であるのに、彼の攻撃は持続的に、強烈に痛覚を刺激してくるのだ。攻撃自体にそのようなデバフが乗っているのだろう。そして、死なないのであるからには、総兵衛が攻撃を緩める理由がない。


「ガアッあああ、ッ!! ガアアッ、ゴアッゴアッ、!! ガアアアアアアアアアッ!!」

「いっ、ぐ、ぶぐっ、ギッ!!」


 胸部を殴打され、鋭い爪が腹を裂く。防御した右腕が千切れ飛び、防御を失った顔が潰された。自動回復すればする程に死ねず、痛みは続き、回避も出来ない。死んだとしても後七回は自動復活する筈だ。


 まともに呼吸が叶わない。苦しくて息をしても出て来るのは血液ばかりだ。折れた骨が内臓に突き刺さる痛みに、失われそうになる意識が無理やり戻される。荒い刃物で切った野菜のようになった腕からは蛇口をひねったように血が噴出している。


 脳味噌が出そうだった。穴という穴から痛みの液体が流れている。流れれば流れるだけ、電撃のような痺れが漏れて来る。


 死なない、気絶しない。つまり終わらない。奴を退ける手段もない。


「アオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン………………ッ!!」


 暴力と血に酔い、総兵衛が疑似的に造られた月に吠える。


(よーちゃん、よーちゃん、助け……)


 いつも、何時も、どのような時も、彼は助けてくれた。彼を信じていた。だが、今彼を呼んで、それは許されるものなのだろうか。彼は大局を決する為に奮闘している。自分は自分の存在意義の為に留まり、こうしているのだ。彼が信用してくれているとも言える。


 そんな勝手が許されるものか。彼はいつも助けてくれた。見返りすら求めなかった。彼が居なければ、あの冒険はとっくの昔に終わるものだった。


 彼に頼り続けて来た。だからこそ、もっと自分を求めて欲しかったのに。

 本質的に、自分は彼の一部には成れない。


 それは真百合も望んでいた。恐らくエオも、十全皇も、彼に関わった女達皆が、彼の一部になる事を望んでいたのだろう。それは恋か、愛か、そんな判別もつかず、自分は彼を求めた。


「ぐるるるるるるる……」

「ぶっ、ぎぃぃぃぃいあぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」


 総兵衛……いいや、獣の視線がリーアに向く。鋭い爪を伸ばし、リーアの胸に突き刺した。フォークでゼリーを掬うようなものだ。


 支命柱、神を形作るそれを、引き抜こうとしている。


 それを引き抜かれれば、恐らく、このルール下でも蘇生は叶わない。主依代からの復活は、可能性としてあるが、リーアクラスの神を蘇生するとなれば、莫大な魔力を必要とする。竜精クラスを復活させるのに必要な魔力程度で済めば、むしろ御の字だ。


「い、いやっ、やめて、やめて、やめてやめてやめてぇ……ッ」


 なんと無力だったろうか。本物の暴力の前では、これだけの力を蓄えようと意味がないのだ。

 強さに自信があった事は間違いない。ただ慢心だけはすまいと心にとめていた。


 だがこの獣の存在は、完全にイレギュラーと言える。考慮の幅は無かった。


「あっ」


 支命柱――実際、自分にそれが入っているのか、どうなのか。解らなかったが、自分という存在に、大きな亀裂が走ったのが、直感で理解出来た。



 68%



 脳裏に数字が浮かぶ。同時に意識が塗り潰され、闇に融け始めた。




冥界竜脈ヘルズコード解放リリース




 自身の口からそのような言葉が漏れる。占有根幹魔力帯オールドパルスラインの使用は制限されていると思われるが、しかし、自身の中に、馴染みのある、まるで全てが自分のモノとしか思えない、懐かしく温かい、強烈な魔力の奔流を捉える事が出来た。


「ぐる、ぐっ……っ」


 突如の事に獣が慄き、生存本能を刺激されたのか、高速度で退ける。滅茶苦茶にされたリーアの肉体が闇色の光の粒と共に再生し――その手には、知らない銃が握られていた。


「おかあ、さん?」


 起き上がり、銃を見つめる。


 明らかに、この場に存在していてはいけない、固有の魔力を感じる。この武器が自分の物でない事、そして今自分へ継承されたという事実だけが理解出来た。


 獣が怯えている。先ほどまで、あれだけ嬉しそうに女体を引き裂いていたというのに、叱られた犬の如くめそめそと、地面に這いつくばり頭を抱えていた。


 この銃で何が出来るか。

 そんなものは決まっている。


 これは、死そのもの、死がカタチを造った物体だ。


 構え、狙う。

 リーアの双眸に光が宿った。明らかにルール外の挙動をする魔力を制御する。


「"謳え"」


「"謳え狂気の嗚咽を、踊れ我が爛熟の欲望よ。組み編まれるは死の喧騒、延べ敷かれるは魂の筵。我が愛は留まる事無く、我が熱狂は無限と失われず、ただひたすらに――叙述者イミティショナーの檻は世界の栄華を食い潰す」


「がっ、あ、あぐっ、あああ、ひぅ……ひっ、ヒッ、ヒッ、ヒッィッ!!」

「世界名『ニブルヘル』の名において、歓喜に終止符を打たん"」



          『現世粉砕てんかたいらん真贋超越しんりこんとん



 黒と深い紫色、金の装飾が施された拳銃から、どす黒い一発の弾丸が打ち放たれる。


 魔力の帯を引いたソレは獣の腹に着弾すると、収束、全てが静まり返る無音の中、"死"を開始した。


 獣の腹を中心として、空間が渦巻き、破砕機にでも掛けられたかのように、少しずつ肉がミンチされて行く。ぐるぐると、ぐるぐると肉と骨と血液が空間を循環してから着弾点へと吸い上げられて行くのだ。


「が、ああ、あ……なん、なんで……なんで……こんなことに……」


 それは何者かの意図も、本人の意識も、純礎水晶も、肉体も、全てを飲み込み、空間の狭間へと消えてなくなっていった。


 ――魂の気配すらない。そこにあった全てが、死んでいる。


「――あっ、まずい」


 占有根幹魔力帯オールドパルスラインの発動は周囲の魔力を吸い上げる。ニンゲンに対しても確実な悪影響を及ぼす為、気が付いたリーアは直ぐ留めるよう気を込めた。


 とても、治癒と蘇生の神とは思えない禍々しい気配は鳴りを潜め、術者を失った世界はまた昼に戻って行く。


 拳銃を見つめる。恐らくはヘルが所有していた武器――『終末兵器ラグナロックウェポン』だ。竜の固有武器である。


 目の前で起こった出来事は、規模こそ小さいが、あれは自分がそのように――周囲に被害を出さないようにと、願った故のスケールだったのだろう。自分が願えば、あの一発でこの周辺の……いいや、街一つ、生命の全てを奪い去る事が出来るだろうという確証がある。


「……総兵衛、ごめん」


 魂ごと消し飛ばしてしまった。現ルールでの復活は叶わない。元のルールとなれば、リーアの規格外な蘇生も適用されるだろうが……これは、嫌ではあるが、十全皇へ相談となるだろう。


『か、神様。なんか、すげぇのと戦ってましたけど、無事ですか?』

「あ、オバケのひと」


『オバケ……あ、オバケだ。そうです』


 役割を終えた霊達が集まって来る。自分の仕事は……ヨージを追いかける事ではなく、死んだ皆を蘇らせる事になるだろう。


「シュプリーアさん、ご無事ですかしら? とんでもなくエゲつない気配が、ありましたけれど」

「フィアちゃん。特等兵がいたの。頑張って、その、殺しちゃって……」


「単独で? まあ、お強いこと。ああ、ルルムゥは処理致しましたわ」


「はあ……はあ……愚妹一人だけ仕事が多かった気がする事を認めます……まあ、大したものではありませんでしたが……」


 能力の低いルルムゥと言っても、亜空間を飛び回るような真似は出来た筈だ。それを難なく処理したのは、フレイヤのスキルが有るお陰だろう。彼女固有の『セイズ』は探知不能不可視の魔力糸を操るもので、索敵、防御、攻撃、操作と全てにおいて万能であり、敵にしたならば厄介極まるだろう。


「うん、ありがとう、フレイヤ。二人はよーちゃんを追いかけて」

「シュプリーアさんはどうされますのよ」


「私は、手伝ってくれたヒトを蘇らせないと。よーちゃんとエオちゃんをお願い」

「ええ、畏まりましたわ……それにしても、あまり、顔色が優れませんけど」


「……強かったから、疲れちゃった。行って。時間もないから」


 二人を見送り、自分のステータスを確認する。総兵衛を倒しただけでレベルが五つも上がっていた。魔力も気力も体力も、彼と戦う前より充実している。


 ただ、気持ちだけが、果てしなく疲労していた。


『神様、蘇生なんて後でいいから、休んだらどうだい』


「ううん。いいの。ええと、一人ずつ自分の肉体の場所に案内して。石に潰れたまま蘇生したら、また死んじゃうでしょう」


 とても時間のかかる行いだ。そうなれば、何もかも間に合わないかもしれない。

 しかし、今はそれで良い気がした。


 この手に握られた武器は、あまりに、大きすぎるものであるからだ。自分が何者であるのか、それを如実に知らしめている気がする。


 この力は現段階においても、頼りになるものだろう。これから先、雁道と衝突する場合、大きなアドバンテージである事も違いない。


 が、これを大樹の真下で使うのは、実に憚られる。首都で使ってしまった事自体も、正直不安要素なのだ。


 終末兵器などつまるところ、他の竜を葬る為にある。それを他竜のお膝元でぶっ放すなど、今のような緊急事態でなければ正気の沙汰ではなく、なんなら確実に敵対行為であり、リーアが国を治める者であったのならば、宣戦布告以外何物でもないのである。


 根幹魔力帯パルスラインに対して極度に負荷をかける。現状不安定な扶桑にそれを行って、良い目では見られないだろう。


(ああ、うん)


 そうだ。

 とうとうここまで来てしまったという意味でもある。


(お母さん、引継ぎ進めてるんだね)


 シュプリーアという存在が、竜及び大樹に対する攻撃力を持ってしまったという意味だ。


「あっ……ッ!! しゅ、シュプリーアさんッ!!」

「ん? あ、まゆり、赤城、おつかれー……誰それ」


「治癒、出来ますでしょうか」


 まゆりと赤城が仕事を終えたのだろう、ボロボロの様相でこちらへ近づいて来る。二人に肩を支えられているのは、雁道の兵であるようだ。


「北東侍……? あ、うわ、ええと、幸田なんとか?」

「はい。命令に忠実だっただけで、せ、誠実な方なのです。治療出来ますか」


 まゆりの顔が必死だ。彼は上洛軍の殿を務めながら真百合の護衛を担っていた。ゼロツーによってポータルで放り出された筈だったが、生きていたのだろう。


「まゆり殿と拙生を守って瀕死なのだ。どうか、頼まれてはくれまいか」

「……――今、物凄く強い侍を倒したの。第二鍵分身の調査に来たヒトだった」


「拙生等も襲撃を受けた。して、幸田殿が追い返したのだ」


 覚醒して居なかったとはいえ、総兵衛を押し返したのか。特等兵の中でも、格段に実力があったとは思っていたが、そこまでとは。


 幸田を横にして治癒を施す。成程、回復薬だけでは効かない筈だ。治癒効果不活性を強烈に喰らっている、自分と同じだ。デバフを取り除き回復する。傷は直ぐに治ったが、魘されている。


「まだ朦朧としてるね。寝かせておこう」


「すまぬ。敵対者とはいえ、事情さえ理解すれば正しい判断を下せる男だ。この男が居なければ、拙生達は無事では済まなかったろう……しかし、奴は」


「……巨大な純礎水晶プロトクォーツをはめ込んでた」

「ああ、尋常ではなかった……それを、倒したのか。ひとりで?」


「死ぬかと思った。あと、まゆり、それとこのヒトだけど」

「ああ」


「日没宮には近づけない方が良い」


 その意味について、二人に語る。純礎水晶プロトクォーツを持っているという事は、大きく雁道に支配を受けているという意味であり、何かしらの命令が下れば、例え仲間であろうと即座に敵対する可能性が大いにある。


 ヨージ達の負担を減らす為にも、まゆりは留まるのが正解だろう。あのような化物になられても困るし、何よりヨージは真百合を守ろうとする。それは彼の足かせそのものだ。


「……そんな気はしていました。故に後方支援を願った訳ですから。ええ、大丈夫です。まゆりはワガママを言いません」


「うん。私も、ちょっと日没宮には近づけない」

「うん? そもそも回復役が何故ここに。パーティの要ではあるまいか?」


 言われ、少しだけどうするか考え、あの銃を顕現させる。

 赤城はギョッとし、まゆりは顔を引き攣らせた。


「しゅ、終末兵器、ですね。一度、我が龍に見せて頂いた事があります。雰囲気は勿論異なりますが、その危うい気配は、間違いないかと」


「さっきも言ったけど、死にかけたの。そしたらコレが出て来て」


「これが……竜に伝わる、世界を裂く武器。ほ、本物……ああ、うん、理解した。日没宮には、近づかない方が良い。なんなら、雁道より厄介になり得る。神シュプリーアは今から神ではなく、竜という扱いになるであろうからな」


「竜そのものが他竜の本拠地に乗り込むなんて、外交上差し迫った状態での会談か、ラグナロック末期だけですからね。それに他竜の侵入は、十全皇の他の防衛機能が働く可能性もあります。現状をかき回せません」


 自分の直感を論理的に説明され、むしろほっとする。

 同時に、自分が既に神という領域にない事を、明確にされた。


 自分はここに留まり、全てが済むまで自分の役割に徹しよう。もし、本当に何もかも、ヨージ達が失敗してしまったのならば……その時は、また新たに自分の役割が産まれるだろう。


「ん、じゃあこれから死んだヒト達を蘇生させるから、手伝って」

「ええ、解りました」


「拙生もそうしたいが、幸田殿をどうしたものかな」

「ご、御心配なく……」


 そのような話をしていると、幸田が目を覚ます。軽く頭を振り、周囲を見回す。


「忝い。して、自分は何をすれば良いでしょう。今更雁道側にも戻れませんし」

「幸田様は休んでください。まゆり達を庇ったのですから」


「皆が大変な中、そうは言っていられません。助けになるならば、助けねば」


 その言葉だけで、彼がどれだけ善良な臣民であるかが解る。武人然としていない事から、やはり一般臣民から取り立てられて純礎水晶プロトクォーツを埋め込まれたタイプだ。


 そうだ。敵だからと皆が邪悪である筈などない。雁道軍の皆も、可笑しいと思いながら戦っている人々は沢山いるだろう。被害を抑えて、せめて彼等の罪を軽減出来れば、また社会復帰が叶う。


 ちなみに……雁道軍が通った道筋で死んだ人々の大半は、リーアが蘇らせている。故に、単純な話ではないが、実際を見てしまうと彼等の乱暴狼藉といえば、暴行と略奪くらいになる。


 還せる。まだ彼等はヒトの道に戻る事が出来るのだ。


「じゃあ、蘇生して回るから、潰れてる死体を見つけたら、岩とか家とか退けてあげてね」


「……――」

「ぅん……?」


 無事に済んでくれれば良いが、自分達の旅の中で、状況が素直に済んだ例は一件もない。雁道ともかく、彼の中に潜む者、バルバロス、そして統春が、全力で全てを引っかき回そうと考えたならば、穏便に行く事などないだろう。


 彼等は彼等なりの考えがあり、こんな場所まで来てしまったのだ、はあ、負けました、で終わらせるつもりなど、有る筈もない。


「まゆり、胸を押さえて、どうしたの」


 皆に見えないようにしていたが、嫌な気配を感じて視線を向ける。


「いいえ、何も。では、手分けをしましょうか」


 彼女にも、純礎水晶プロトクォーツは埋め込まれている。彼女本人がそもそも、十全皇の因子を持っている為、ただのニンゲンより格段に頑丈であろう事は明らかだが……不安はある。


 大豆総兵衛のように、ならないと良いのだ、が。


 日没宮側へと視線を向ける。

 背後に控える巨大な木、扶桑雅悦が、嫌に静かに枝葉を揺らしていた。





「あれも違うこれも違う」


 廃材を集めて何かを作るのが生前からの趣味だった。ゲーム機のニコイチ修理から始まり、自作パソコンの組み立て、漂流物を組み合わせたアート作品に、ひたすら集めていたドールの非正規パーツから一体組み上げてみたり、果ては廃棄ガイノイド部品を修理して男性に売りつけるなどもしていた。


 ただ捨てるのは勿体ない。それは正規品には遠く及ばないかもしれないが、自己満足と他人の妥協が合致した中の需要という隙間に居られる事は、自分にとって幸福な事だった。


 フォールンを患う前までは。


 このような力を手に入れて、何でも自作可能になったというのは、大変に喜ばしい。だから薄暗い闇の中に押し込められても、自分は……武蔵野ヒルダは、辛くなどなかった。


「おい、ヘル」

「なあに、将君」

「ミドガルズオルムと呼べ」

「ごっこあそび、好きねえ。私も好きですけれど」

「ユグドラーシルの一部、隠しているだろう」

「葉かしら、枝かしら」

「実だ」

「でしたら外に。既に朽ちて種しかありませんよ。回収します? 素材に少し欲しいのですけれど」

「……なら種だな。二つ置いておく。他は回収するぞ」

「まあ優しい。流石お兄様、ふふふふふふっ」

「薄暗い女だよ、お前は。反省するつもりはないのか」

「実質幽閉ですけど、ここが馴染みます。放っておいてくださいな」

「……わかった。好きにしてくれ」


 ミドガルズオルムは数十年に一度来てはこちらの様子を伺う。彼は優しいので、ヘルを外に出す機会を与えようとしているのだろうが、こちらはもう闇に馴染んでしまったし、今更外に出たところでする事もないので、このままでよい。


 それよりも種だ。そうだ、種を忘れていた。

 しかし二つしかない。良い素材だ。巧く使わなければならない。


「アイツは素材に解体してしまったし、しっかり封印したから探知もされないかな。後は構想通り、最後の素体部分だけど……お願いしたら素直に死んでくれるかしら、彼女」


 まずは端材を使って組み立て実験だ。種の一つはそのように使おう。

 力を与えすぎても面倒であるから、そこそこの……治癒能力の実験はしたい。


「実験体の名前はイルミンスル、でいいかしら。ユグドラーシル派に捧げれば、種の返却にも、ご機嫌取りにもなるし」


 問題は本命だ。これを造るには、竜を一匹殺す必要がある。完成品をぶっ壊してパーツ取りしようというのだから、何か本末転倒のような気もするが、ここはジャンク好みではなく、アーティステックな部分なので、仕方がないと納得する。


 あと何万年かかるだろうか。娘を作るというのは、本当に大変な作業だ。

 出来上がる娘は、うんと愛そう。うんと捧げよう。

 これさえ出来てしまえば良い。自分等本当にどうでも良い。

 彼女が目を覚まし、本当の意味で立ち上がる、その日を目撃出来たならば。

 自分の全てが、報われる気がするのだ。

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