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龍女皇陛下のお婿様  作者: 俄雨
扶桑事変
306/319

推断章3


 衣笠真百合の追尾魔法を躱しながら、赤城選王宗達は苦悩し、懊悩する。状況から察するに、衣笠真百合は何かしらの洗脳を受けた状態にあるだろう。恐らくは、統春の策である。


 これを突破するにはシュプリーアの『状態回復キュア・スリー』ないし、ゼロツーの『能力遮断アンチスキル』を叩き込む他無い。自分に出来るのは簡易の『無効化ディスペル』のみであり、これが統春のスキルもしくは固有スキルに通用するとは思えなかった。


 簡易で計測しただけだが、真百合のレベルは明らかに70を超えている。東部諸島鍵分身と同等という話になる。どんな原理でそこまで高レベルであるのかは知れないが、現実として立ちはだかったからには、それに対処せねばならない。


 そして自身個人だけでは到底彼女に近づく事も出来ない。協力が不可欠だ。

 が、相手は衣笠真百合だ。


 青葉惟鷹に『なんかまゆり洗脳されてるけど?』とは、とても言えない。彼が真百合に刀を向けるような場面は、絶対に見たくないし、させたくもない。


 これは勝つ負ける以前の話だ、絶対条件とも言える。


「くおっ……ッ!! 追尾がいやらしすぎる……空気に目でもついているのかッ」


 自分が普段用いた『くらあて』とて、ここまで執拗ではない。しかも物理矢ではないので、叩いて落とすという真似も出来ない。明らかに3フルスは離れた筈であるのに、真百合は赤城を一撃で戦闘不能にし得る魔法を息つく暇もなく放って来る。


 旧ルールにおいて、衣笠真百合は超高度の召喚使役魔法師だ。一般的に召喚使役と言えば、地元の精霊格や契約した肉体を持たない自然神の力を借りるモノを言うが、彼女が扱う神は扶桑における原始自然神、天、地、人に影響を及ぼすレベルの神であり、しかもそれを手足の如く扱う。


 魔法冠位において三位、魔法での戦闘能力で言えば、間違いなく扶桑一と言える。


 本人がただのお嬢様であるから、本格的な戦闘となれば経験不足であると言えるが、影響力と威力だけを考えるならば、むしろ考えたくない相手だ。


 今彼女がどういった魔法を扱うかは知れないが、これだけの技量がありながら、まだ一撃も赤城に当てられていないという事を考慮すると、やはり戦闘自体は素人なのである。


 逆に言えば、弱点がそこしか見当たらない。


(とにかく落ち着かねば、逃げても逃げてもこれでは……ポータルを出してもら……えないな。拙生が慌てて駆け込んだから、青葉君に事情を知られ……)「ぬおッ」


「ギュ……ギィィ……」


 赤城から約3大バーム先にいた鹿に魔法が直撃する。暫く動いたかと思ったが、次に一歩で炭のようになり、バラバラと崩れ去った。何の防御もないとはいえ、一撃で生物が炭化とは恐れ入る。


(誤射か? いや、明確に当った気がする)


 真百合が何を見て、どのように攻撃を繰り返していたのか、ふと気が付く。一か八かであるが、このままではじり貧だ。


『狩人の矜持……ッ』


 物陰に隠れ、スキルを発動。己の生体反応を限りなく抑えて野生動物および魔獣からの感知を掻い潜る為のスキルだ。結果は――……


(真百合の魔法が、遠くの哺乳類に当ったな……はあ)


 相手が超越した魔法使いで有る為に、こちらが理解出来ない使い魔か、魔力を感知しているものだとばかり思っていたが、どうやら大型の生物を自動追尾する魔法であったようだ。もはや木か岩に同化している現在、魔法の襲来が無くなる。


 ともすると、アチラもコチラが赤城宗達であるとは認識してはいまい。生体反応を察知して反射的に魔法を打ったと思われる。


(しかし、何も解決していない。拙生如きがどうすればいいのだ? 自分は、青葉君にそこまで配慮しなければならない存在か? 国の存亡がかかっているのだ、例え相手が真百合でも、大事を取るべきなのではないか?)


 というのが赤城王としての立場の論だろう。


(まさか。どうあれ真百合を放置出来ないし、友を悲しませる真似もしたくない)


 己の情という不確定要素に、今もなお赤城は悩んでいた。国の歯車であるならば、そんなものは捨てるべきだが、しかし個人の全てを投げた先に残るものは何かと考えると、想いというものをその辺りに放置出来る程自分は機械にはなれなかった。


 怖いのだ。個人でなくなる事が。


『分身殿、赤城です』

『あら、パーティではなく、個人通達?』


『青葉君に知られたくない。青葉君に暇を出して貰えますか』

『承知しました。工作いたします、少々お待ちになって』


 ゼロツーは即座に事態を把握してくれたようだ。掛ける想い遠からずである、青葉惟鷹に余計な心配事を抱かせない為とあらば、ゼロツーは直ぐに動くだろう。


 それから暫く。


『では宗達殿、続けて敵の監視をお願いしますね。僕は少し気分転換に行きます』

『ああ、ゆっくりしていてくれ。何かあったら直ぐ声をかけよう』


『お願いしますね、では』


 胸を撫でおろす。丁度レベル50に達したタイミングという事もあり、惟鷹は余暇を与えられた事に疑問を持たなかったようだ。また、こちらを信頼してくれている証でもあろう。個人で話す時は宗達、と呼んでくれるのが、なんだかむず痒くて嬉しい。


『敵は』

『攻撃がなくなりました。拙生の場所まで、ポータルを』


 あれから半法刻、周囲に魔法の嘶きはない。程なくしてポータルを潜り、ゼロツーとシュプリーアが現れる。ゼロツーは解るが、シュプリーアなのか。てっきり惟鷹の余暇は彼の神と過ごさせるものだと思っていたが、違うようだ。


「忝い。竜精公は?」

「惟鷹様に宛がいましたわ」


「私もデートしたかったけどー。でも、こっちのが大事そう」


 という事らしい。納得し、状況を掻い摘んで説明する。これを聞いた二柱は、その美しい顔を歪めていた。


「雁道、愚かな」

「……――これ以上よーちゃんに、親族を手にかけさせられない。赤城、有難う」


 シュプリーアの顔は、いつになく険しい。惟鷹の事情をある程度聞き及んでいるからだろう。二柱と一人の決意は、確認するまでもなく硬い。


 彼に察せられる間もなく、少なくとも真百合を無力化して確保する。




「真百合の推定レベルは凡そ70前後かと。風、光、闇魔法までは確認しました。真百合が真百合で有る事を考えれば、もっと多様でもおかしくない。生体感知する魔法で追い回されましたが、魔力感知も別にあると考えるのが妥当かと。感知距離は3フルス以上ですな」


「現ルールと彼女の因果を考えれば、種族値竜50でもおかしくありませんわ。種族値竜50のレベル70ともなると、東諸島鍵分身に匹敵するものかとぞんじます」


「まゆり単体なら幾らか勝算もあるかもだけど、他の高レベル侍がいると厳しい。引き剥がすのが肝要。他に注意すべき敵はいた?」


「北東蕃軍の担ぐ輿には、雁道もいるだろうね。じゃあなきゃ上洛の大義がない。殺してやりたいが、雁道自体を狙うのは悪手となるだろう」


「本気で狙って統春まで出張られたら私どもでは対処しきれませんもの。真百合を人質にされれば更に困る。条件は絞るべきでしょう。なので、真百合の奪還一点」


 森の真中で作戦会議が進む。真百合の無力化が最低限の勝利条件だ。これに到達する為には、真百合を護衛する侍を引き剥がし、彼女を孤立させ、洗脳と解かねばならない。


「まあ、セオリーではありますが……やはり雁道本隊でしょうな」

「え、雁道狙うの?」


「雁道に敵勢力を集めれば、真百合は二の次になりますでしょ」

「でも、統春出てきたらどうするの? というか、その場にはいないの?」


「あれが輿に担がれて表に出て来るようなタマですかしら。直接的に私達が関わっている、となれば出ては来ますでしょうけれど」


「なので関狼蕃の反撃というテイを装うべきですな」

「なるほどー」


「そこから分断、かく乱。これは拙生の仕事ですな。お二方は真百合にだけ集中して貰えれば良いかと。問題は、真百合の感知能力です」


「魔力の他に、生き物にも反応するんだよね?」

「だと思いますな」


「個体識別は?」

「出来ていないと予測されますな」


「生き物って、どのくらいが生き物の定義? まゆりはどのくらい厳密に判別できる?」


 随分難しい質問をされてしまい、赤城は小首を傾げる。生物とはどこからどこまでを言うのか。


「生物学的には、自と他を隔てる物質があること。代謝出来ること。細胞分裂出来ること……ですけれど、そんな反応を追って魔法は追尾しませんわね。恐らく、魂の有無」


「そのイキモノが、固有の魂を持っているか否か?」

「それが妥当ですわ」


「ならなんとかなる」


 そういってシュプリーアが頷く。ふと、彼女の専門ジョブがなんだったかと思い出す。


 自分は『狩人』、惟鷹は『剣士』、フィアレスは『闘士』

 エオは『刻印術師』、フレイヤは『魔法士』だ。


 ゼロツーは不明だが、魔法戦士辺りだろう。


 全員最初は初級冒険者という専門ジョブでこのルールの上を走り始めるが、レベルが上がるとおおよそ個人の適性に即した専門ジョブになるよう定められているようだ。これによって覚えられるスキルなどが異なる。元の扶桑の社会と似ている。


 ではシュプリーアはなんだったか。ステータスを拝見する。


『治癒士』これは解る。元が治癒の神なのだから。


『魔撃士』専門ジョブは二つも取得出来るものだったのか、元のルールが不明だ。


『死霊術士』しかし三つとはなんだ。三つ? しかも随分不穏な字面だ。


 ゼロツーの顔を見る。彼女は小さく首を振った。ゼロツーの言う通り、やはりシュプリーアはどこかおかしいのだ。


「囮を用意出来る」

「――……畏まった。ではお願いしよう。分身殿も宜しいですかな」

「え、ええ。はい。ふむ、ええ」


 何とも歯切れは悪いが、了承として良いだろう。シュプリーアがどのくらいの精度で此方の期待に応えてくれるかは不明だが、青葉惟鷹が『出来ない事を出来るという』ような教育を、この生まれたての神に教育したりはすまい。そのような嘘を吐く場面でもない。


「少しだけ準備する時間が欲しい。地図ある?」

「ございます」


 そういってゼロツーがこの周辺の地図を共有する。


 北東蕃軍は第二首都街道を南進中だ。ここを道なりに行けば首都へと到達するものだが、その間に蕃を七つ通る事になる。


 当然事前の許可は無い。歩いた先で許可を取り、否定されれば踏みつぶして行くのだろう。


 今しがた北東蕃が大暴れしたのは、関狼蕃中部東に位置する漁村であり、規模は大きく漁獲高も多い。村とは言っても数万人規模のものであり、被害はかなり出ただろう。


 関狼蕃として考えるならば、まずこの地の戦力では太刀打ち出来ない故、蕃士を招集してここから15フルス南の蕃の主要都市……蕃都入口で迎え撃つ形となるだろう。


 数千人規模が衝突する事になる。そして関狼蕃に勝ち目はまずない。衝突前に真百合は回収したいところだ。無自覚とはいえ、人殺しをさせたくない。


「んじゃあ、蕃都3フルス手前、第二首都街道を挟むようにしてある、この狭間で待ち構えよう」

「それならば、関狼蕃の奇襲であるように演出可能ですな」


「こっちの利点は機動力がある事。貴女が大量に罠を設置出来て、暗殺も得意な事。ゼロツーがなんだか万能に色々出来る事。そして何より、私がいる事」


 だいぶ自信があるようだ。着眼点も良い。青葉惟鷹と共に超えた死線が、図らずも彼女を軍師たらしめているようだ。


「準備出来たら伝えるね。どのくらい時間的余裕あるかな」

「彼奴等の進軍速度は常軌を逸している。あの手勢で三法刻後には、件の狭間でしょうな」


「分かった。じゃあゼロツー、赤城と先に工作活動してて」

「ええ、異論ございません。シュプリーアさんの手腕次第という事が気になりますが」


「よーちゃんが悲しまない為なら、私は全部出来る事をする。そうでしょう」


 お前はどうだ、十全皇、と言わんばかりだ。ゼロツーは……小さく溜息を吐いて、シュプリーアをポータルで漁村まで飛ばした。


「不覚にも、私は一度、彼女に無様な姿を見られておりますの」

「……――」


「大切な時に、お前は何をやっていたのだ、と。九頭樹グルジュでのお話です」

「大切な時、とは」


「青葉惟鷹の死です。九頭樹グルジュを守る魔術師カメンにより、青葉惟鷹は不意を突かれ、極大魔法を受け、即死しました」


「………………」


「極力手出しはしないようにと控えておりましたけど、あれは何もかもタイミングが悪かった。そして私はそれに対して、反論出来なかった。故に、一時的な同盟を結んでおります」


「……青葉惟鷹を、護る為の同盟、でしょうか」


「はい。詳細な説明は省かせていただきますけど、彼が身に宿している力は、大きなものです。故に因果は彼へと収束する。収束した因果の全てを振り払う、その時までの同盟」


 意図は知れない。シュプリーアという神に対する危機感を、当たり障りのない赤城という人物に吐き出しているだけかもしれない。赤城自身がどうする事も出来ない事は明白であるのだから。


 十全皇というものは、言わずもがな超越者だ。本来ならばこのように気安く話すような相手ではない。普段であれば、例え分身であろうとも、座して平伏してお言葉をいただく立場である。


 この状況だからこその、気安さもあるのだろう。ゼロツーという個体が、他の分身よりもなおヒトらしい雰囲気を醸し出している事もあるだろう。


 ……そう考えると。このようにヒトと接する機会を得たのは、彼女にとって随分久しぶりである事が予想される。


 もしかすれば。このゼロツーが、過去の十全皇に一番近いのかもしれない。


「では」


 ゼロツーの開くポータルで、作戦予定地まで移動する。狭間東側の山頂に出た。鷹の目で確認すると、遠く遠く、ほんの朧気に北東蕃軍と思しき集団が煙を上げているのが見えた。足はやはり驚くほど速いが、まだまだ真百合の感知外だろう。


「周囲に生体感知を鈍らせる結界を張りますわ。魔力感知は欺けませんから、極力潜めてくださいまし」


「狭間の街道に催眠、麻痺、毒、魔力吸収、体力吸収、他足止め罠と、魔力の霧を敷きます。これで魔力感知もある程度誤魔化せるかと。本隊が混乱している間に真百合一行を引き剥がし孤立させるところまでが、拙生の仕事ですな」


「驚くほど有能ですわねえ」


「有難き幸せ。とはいえ、神シュプリーアがどのような策を持ってくるのやら」

「ある程度予想はつきますから、そこは安心かと」


「あと、これは本作戦に関係ありませんが、懸念が幾つか」

「はい」


「まんまと拙生達は分断されている。そして彼奴等の乱痴気騒ぎがオオヤケになれば、青葉君も黙ってはいない。彼奴等の進軍速度を考えると、遠からず首都にも到達します。軍は動かさず、でしょうか」


「数など幾ら居ても意味がございませんもの。首都に関しましては……ま、なんとかなりますわ」「陛下がそうおっしゃるならば……」


 ほぼ内戦である。政治的に考えても、国軍を招集して蕃軍に当てるような真似はしたくないだろう。また、何より今の軍隊では肉壁にしかならない。


 雁道の進軍を抑えるだけならば、分身の身を晒すだけである程度は止まるだろうが、その場合統春が出て来る。統春の理解不能スキルと真百合の攻撃が合わさった場合に考えられるコチラの生存確率は絶望的だろう。


「雁道はあくまで東部諸島への我々の戦力集結を妨げたい。故にこちらへ真百合を寄こしている」

「それは、はい」


「愚か、愚か。例えポータルで瞬間移動出来るような世界になろうとも、状況というものは場が定めるもの。真百合は東諸島に配置すべきでしたわね」


「と、申されますと」


「一個人はどれだけ力を持とうと一個人ですわ。場所によって出来る事が大きく異なる。そしてそれをそのまま他の場所に適用出来たりは、しない。まして真百合は基本的に、ただの高度魔法使いであって、戦争屋ではございませんもの」


 つまり『足らない』という意味だろう。こちらに真百合を寄こしたという事は、雁道達はひたすらに青葉惟鷹の東諸島への鍵争奪参戦を望んでいないという意図が見える。本来ならばこちらに青葉惟鷹を釘付けにしたかったが、赤城達自身がそれを否定しているのだ。


「……青葉君は、今どちらへ? 休暇中では?」

「当然、越東州へ休暇へ出しましたわ」


「ああ、そういう……」


 東諸島鍵分身に挑むにはレベルが多少心もとない。だが、あちらへ差し向けられるであろう雁道の手勢を退けるには十分となる。惟鷹、フィアレス、エオ、フレイヤを、果たして雁道の木端だけで突破出来るかと言えば、今は否である。


 つい数時間前までならば可能だったろう。だが今は無理だ。


 現ルールの上で立ち回りを覚え、レベルが追いついてしまったであろう青葉惟鷹は、50になった瞬間存在する次元が変わってしまっていたからだ。


「では、手筈通りに行きます」

「ええ、お願いいたします」


 青葉惟鷹に接触した雁道の手勢が、惟鷹に余計な話をしなければ、良いが。

 そうなる前に、真百合を取り戻さねばならない。




 北東蕃の旗印。夕暮れ時の街道を、甲冑武者が我が物顔で練り歩く。


 北東蕃上洛軍先行部隊隊長、最上沢丹幽守安瀬房もがみさわたんゆうのかみあぜふさの気分は、殊更上々であった。


 現ルールになるまで、安瀬房はしがない一蕃士であり、蕃の会計係の下っ端として人生を終える役割を担っていた。文武優れるところはなく、家柄で今の役職にいるようなだけの男にとって、むしろそれは幸運な一生であると言えるが、常々物足りなさを覚えていた。


『この者、適性有かと』


 家老泉田の発言によって、安瀬房の運命は流転した。指示された通りステータスを振り、スキルを振り分け『生き物と思しき何かの入ったズタ袋』を五十、六十としばき倒した結果、他の者達とは比べられない程の力を手に入れる事になったのだ。


 そして輝石を貰い受けた。輝石は己の臓腑に染みるようにして入って行き、己と同化するや否や、安瀬房が今まで見えなかった世界が視えるようになった。


 物足りなさを補う神秘。英雄達のように、戦地を駆け巡る夢想を具現化するかのような力の発現に、安瀬房は噎び泣き、雁道に今まで以上の忠誠を誓った。


「隊長、酒はやらんのですか」

「良い。警戒は怠れんからな」


「生真面目なヒトだ。今の北東蕃軍なら、何が出たって怖くなんぞありゃせんでしょうに」


 滲み出る万能感以外に欲しいものは無かった。こうして軍隊の一部隊を率いて、隊員達の身を案じている己という陶酔感が薄まってしまう。


 風の音、虫の聲、甲冑の擦れる音、草木の匂い、獣の薫り。周囲を包む全てが、安瀬房には幸福であった。漫然と筆を握り、墨の匂いの中数字を認めていた頃の自分ではない。誉の為に戦い進むという雄姿が自身の全てを彩り、筆に代わった刀が漠然としていた不明瞭な欲求を明確にしてくれている。


 大英雄、青葉惟鷹は、常々このような心持ちであったのだろうか。

 それは、何とも狡いではないか。


 世界が、こんなに輝いていたなど、知らなかった。


「むっ。全軍一旦停止、後ろに伝えろ」

「停止ーッ!! 全軍停止ー!!」


 第二首都街道、関狼蕃蕃都を目前とする山の狭間の手前で、安瀬房は異変を察知した。己の魔力感知が鈍ったからである。


 関狼蕃にどれだけの手練れが居るのかは不明だが、フィールドに影響を与える魔法を持つ者ぐらいはいるだろう。しかもここは狭間であるから、東西の山から強襲を受ける可能性も、この場所へ至る前までに予想はしていた。


「あの山に潜んでますかね。一班、送りますか」

「待て。測定班、山の裏手や前方の先に敵は見当たるか」


「ただいま――……全域に幻惑に近い魔法の帳が降りているものかと。ただ生体の反応を感じません。関狼蕃の有象無象が野伏ているのならば、感知出来るものかと思うのですが」


「ふむ……」


 関狼蕃の戦力はたかが知れる。それを補おうと思えば数を揃える事になる。しかし測定しても、人影が無いのならば、少数での奇襲を目論んでいたもの、と結論付けるのが通常だ。


「罠、か。とはいえ迂回は山道になるな……戦術班は何と」

「先行部隊の誉を上げよ、と。確かに、立ち往生するには馬鹿げておりますが」


 眉を顰める。確かにそうだ。戦力差は明らかなのであるから、上等兵数人を突撃させればそれで済む話だ。しかし戦術班の言か、それが。


 とはいえ。

 とはいえだ。


 英雄たらんとする者が、この程度で二の足を踏んではいられないのは事実だ。

 誉を胸に、大義を掲げ、雁道修理助波貞が天下に名乗りを上げる日の為に、飲み込まねばならない事もあるだろう。


「よし、強襲班、俺についてこいッ!!」

『おうッ』


 先行部隊進軍。上等兵五名。全員が50を超えている。例え矢の雨鉄砲の雨が降り注ごうと大したダメージも見込めない程に頑強である。


「『スイッチホルスター・オン』全員に対デバフ防御完了です。自己強化は各々でお願いします」


 登録した魔法を一度に七つまで発動する魔法により、五名の耐性が各段に上昇する。街道には明らかな違和感がある、罠があるならばそこだろう。


「真田、街道の真中に範囲攻撃を打ち込め」

「了解ッ!! 『地神の一撃ッ』」


 部下に命じて罠があると思しき場所目掛けて攻撃させる。その攻撃は強力無比の一言で、周囲の草木に至るまで地面を抉り飛ばしてしまった。後続の通行に支障を出すが、攻撃を受けるよりはマシだろう。


「何か手応えはあったか」

「はい。魔法罠でしょうな、魔法の幾つかを弾き飛ばした感覚がありました」


「やはりか」

「しかし……」


「しかし、何か」

「……――弾き飛ばした魔法の強度が、高かった気がします」


 安瀬房の片頬が歪む。つまり、相手にはレベル50を超える敵がいる、という意味だ。関狼蕃とは考え難い。50というのは、通常で上げられるレベルではないからだ。それ以外の敵――そんなものは数が限られる。


通信遮断カットオフ

「むっ!! 本隊に連絡ッ!! 青葉惟鷹一派の可能性大!! おい!! もしッ!!」


『リンク・ポータル』

「おわっ」


『リンク・ポータル』

「なにっ」


『リンク・ポータル』

「そげなッ」


 判断が少し遅かった。後ろを振り向いた瞬間、後続三名がポータルの穴に飲み込まれて行ったのだ。ポータルはただの移動魔法、故に対抗魔法が存在しない。互いにポータルを開けるならば直ぐ戻って来るだけなのだが――軍隊というのは役割分担だ、取得にそれなりのスキル数を必要とするポータルを、全員が取得したりはしないのである。


 己の発信は、果たして届いたか、否か。

 安瀬房は抜刀し、土煙の中から出て来る者と相対する。


「ごきげんよう。良い夕暮れですわね、人類」

「小娘――何者だ」


 安瀬房はそれが誰なのか、認識出来なかった。


 背は150小バーム程度。同等ほどに長い薙刀を持つ、黒の長髪の、世にも美しい女だった。露出が多い軽装鎧は、魔法での防御分が多い故の露出だろう。高等装備だ。装備分を極限まで軽くしている事からも察せられるに、速度型。


 リンク・ポータルを三連続リキャストタイム無しで放つ原理は理解出来なかった。戦闘魔法ではない故に、必ず溜めがある魔法の筈だ。それが無いという事は、こちらの理解の外の存在となる。


「兵を何処に飛ばした」

「溶岩の内部ですわ」


「外道――正気か貴様」


「民は、大事に大事に致します。例え愚かであったとしても、反省があり、忠誠に背かないとあらば、私は赦します。法治国家故、法が赦してくださるかどうかは、不明ですが」


「何、何を言っている。まるで天下が手中にでもあるかのような、物言いだな」


「しかし、今回は赦されるものでもございません。絶対にやってはならない事の幾つかに抵触してございますから、一人残らずサヨウナラ、と相成る事でしょう」


 解らない。青葉惟鷹一味であるとして、これが何者なのか知れない。安瀬房は構え、隙無く立ちはだかったが、しかし――隣に居た真田が、地面に伏して頭を擦り付けているのに気が付き、驚愕した。


「真田ァっ!! 何をしているッ!!」

「た、隊長!! わからんのですか、わからんですか、ご覧になったことが、ないのですかッ」


 安瀬房には分からなかった。小娘が一人、居るだけではないらしい。頭を垂れねばならない身分の相手なのか。確かに美しく気品もあるが、地面に這いつくばらねばならない程の――


「――あ、」


 そうだ。居るではないか。地面に伏して、なお地面が高い事を謝罪せねばならない相手が。

 扶桑の全て。世界の半分。まず、扶桑人が何につけても拝まねばならない少女のような女が。


 大して身分が高い訳でも、役職についている訳でもない。

 祭りに足しげく通う程達者なニンゲンでもない。

 新聞とて流し読みする程度の関心度しかない。


 対峙し、同僚の態度を見て、状況を鑑みて、やっとやっと至った、その答え。


『リンク・ポータル』


 土下座する真田の背中に、こぶし大の穴が開く。そんな応用法があるとは知らず、安瀬房は地面に膝をついた。ヒトを丸ごと飛ばすのではなく、人体に直接発生させるなどという発想、まともでは思いつかない。


 属性魔法ではない、攻撃魔法でもない。故に対抗魔法もない。


 防御不可の、絶対一撃。


「レベルとは、本当に大層なものです。そう設定しましたので。あらゆる耐性をつけて敵に挑まねばならないように、調節いたしましたから、それを上げる為にも、やはりレベルは、必要。そしてそれが整ったならば、本当に無双の力を発揮出来ましょう」


「あっ、あっ、ああ」


「そういう格上を狩るにはこれが一番。ま、本当にレベルも耐性も極限まで高ければ、死なずに回復されてしまいますけれど。頭には出せない縛りがありますし。そこまで縛ってやっと私だけが使える状態――そう、こんなことが出来るならば、もっと出来る筈なのに、もっと強大な力を与えておけば良いのに、十全皇はそれをしない――ねぇ人類」


「ハァー……ハァーッ、ハァッ」


「始めから私に全部力を与えていたならば、こんなことをする必要もない。やはり十全皇は、現状を懐かしんで、こんな事を? 楽しかった嬉しかった、あの時を振り返りたいが為に、自国の危機を代償に、こんな真似を?」


 十全皇の話が分からない。何を言っているのか見当もつかない。


 解る事は、己が調子に乗り過ぎたという事実だけだ。十全皇は上洛など良しとしていなかったという、阿呆らしい現実だけだ。青葉惟鷹が動いているならば、自分達なんぞがアレコレとする必要などなかったという、ごく当然の、純然たる、事実のみなのだ。


「私には十全皇の真意を与えられていない。本当に、私は防衛装置の一部? んまぁ、惟鷹様と仲良し出来るのは、役得ですけれど……さ、ほら、人類」


「は、は、はい、ハイッ」


「衣笠真百合は上洛軍のどちらに?」

「さ、さ、最後尾に……し、殿に」


「嘘は、吐いておりませんわよね?」

「うううう嘘嘘など、決して……」


「ちなみに、現状、真っ当に戦うならば、私は貴方に勝てませんわ」

「え、え、え、え」


「殺しますか、十全を」

「めっっっっっっっっ相もございません……――ッ」


 手も身体も動かなかった。殺してどうなる。何もならない。分身一人殺したところで十全皇をどうこうなど出来るワケもない。意味もない。一族は皆殺される。そんな不敬は不可能だ。そもそも十全皇が否定しているものに、大義などある訳がない。誉などどこにもない。


 自分は、何をさせられているのだ? 雁道修理は、何をしたいのだ?


『最上沢安瀬房ッ!! どうなっているッ!! おい、本隊が襲撃されているぞッ!!』


 そりゃ、襲撃もされる。賊軍であるのだから当たり前だ。


『安瀬房ッ!! 正面はもう良いッ!! 大殿をお守りしろッ!! 安瀬房ァッ!!』


 そんな命令を聞いてどうする。目の前に坐すは龍ぞ。

 そうだ、どうでもいい。


 ――なんでも良いじゃん?


 なんでも良いじゃんとは。

 目の前にさ、居るんだから、あの子が。

 だからさ、ほら立って。


 楽しくしてみようよ。楽しいよ?


「オ゛ッ」

「あら……?」


 えづく。内臓が暴れ回っていた。心臓が他の臓器を押しのけ、胸骨を割りそうな程に脈打ち、肥大化し始める。全身に異常な血流が押し寄せ、穴という穴から出血し始める。


「はあ。やっぱり。無関係じゃないよね、アイツ」


 全身が巨大化して行くのが分かった。魔力が……『魔力を帯びた何か』がさらにそれを覆い尽くし、己の握る刀の形すらも変え始める。安瀬房は人間族であるが――全身に体毛がびっしりと伸び始め、頭骨までもが変形――


『リンク・ポータル』

「ごあッッッ!!」


 ――し始めたが、そこまで。身体の変形に戸惑うばかりで、何の対応も出来なかった安瀬房は、足元に現れたポータルにより、謎の場所に出現させられてしまう。


 自身に何が起こったのか、理解する暇もなく、安瀬房は窒息死した。


 ……。

 ……。



 特等兵、幸田山為こうだやまためは平民である。北東蕃の田舎の、田と山以外何もない場所に産まれた。名は体を表すように、それ以外を知らず生きる筈だった。


『適性有りかと』


 扶桑がおかしくなり、村の皆が狼狽えて暫くが経ったある日、北東蕃の蕃士達が村へとやって来て、若者達を集め始めた。甲、乙、丙に分類されて行くが、その意図は知れない。山為は何も知らない。世界がどんな構造になっているかなど皆目見当がつかないし、学校で教えられる事ぐらいしか知らない。


 武士をまじまじと見たのも初めてだった。立派な織物に刺繍、飾られた刀。整えられた髪型に、髭も見当たらない顔。何よりも毅然とした態度が、とても羨ましく見えたのだ。


『卑しい身分です。何も、蕃の為に出来る事などありはしません』

『何を言うか。龍陛下の下全ては平等だ。その卑下は他の者達も見下す事になる、慎め』


『しかし、俺と貴方ではこんなにも違う』

『与えられた仕事故の姿だ。それとも、お前は侍になりたいのか』


『望めばなれるものですか』

『どれ――……むっ、なんと、幸田何某、なれるぞ、侍に。甲評価だ』


 村から五名の若者が引き抜かれた。北東蕃の蕃都に屋敷を用意された。ステータス、とかいうものを振るように指示され、その通りにし、蕃から与えられる訓練に打ち込んだ。


 侍に、田と山の事しか知らなかった男が、その日から侍になったのだ。


『幸田山為、レベル50到達ッ!! 一番乗りッ!!』

『おおおおおおおッッ』

『貴殿は北東蕃の誇りだッ!! 大殿もお喜びであらせられるッ』

『貴殿の剣はまさに天賦。本日より、夢想泡沫流むそうほうまつりゅう皆伝だ』


 様々な褒美を取らせられ、褒賞を与えられ、剣技の皆伝まで貰った。

 右も左も、未だに解らない。しかし今まで憧れた侍達が、自分に頭を垂れている。


 調子に乗ってもおかしくはない程の出世だったが、山為は真っ当な男であった。輝石を与えられた後も、何も変わらない。強く、強く、強くならねば。侍達は国を守る為に戦うのだ、自分もまたその立場になった、では戦わねばならない。


 戦いたい。今まで田畑を耕す事で国に尽くして来たが、これからは敵を倒して奉仕するのだ。


「前が少し騒がしいですね、紫天女してんにょ様」

「――……」


 そうして、今はこの上洛軍に加わっている。自分が任されたのは、なんと魔法冠位三位、天上人だと思っていた一人の女性だった。目を見張るような美しさで、その所作は流れる水のようで、纏う空気はその場にいるだけで周囲の品格が上がるかのようだ。


 こんなにも神々しい女性の護衛なのであるから、とても重要な任務なのだ。山為は真面目だった。ただ、初めて都会の、それも新聞でしかその姿を見た事がないような美しい女性を見て、多少、多少ばかり呆けていた事実は否定出来ない。美しいのだ、仕方がない。


 しかし無口な女性だと、山為は思った。ここにやって来てから一度も口を開かない。だが、貴人は寡黙である事が美徳であると聞いた事があったので、言及はしなかった。


『本隊より、幸田殿ッ!!』

『どうされましたか』


『先行部隊からの応答途絶ッ!! 本隊に対して攻撃が行われているッ』

『俺が行きましょうか』


『紫天女殿に魔法を使うよう、お願いしてくれッ』

『わかりました』


 どうやら敵が現れたようだ。上層部からは『命令通り動いてくれ』とだけ言われているので、真面目な幸田はそのようにする。そもそも、基礎教養以外の学がない山為が、専門的な戦術に口を出すのは間違いだと思っていた。


「紫天女様。ご命令が下りました」

「はい」


「この状況であらば……索敵魔法……ですかな?」

「わかりました」


 紫天女が口を開く。鈴を鳴らすような美しい声だ。彼女は言われた通り索敵魔法を行使する。その範囲は限りなく広大で、1フルス先の先行部隊のその先まで、彼女は敵を発見して見せる。


「如何ですか」

「先行部隊の先に……明確ではありませんが、一体」


「ほう、ほう」

「本隊の近くは……妨害が強く、特定が出来ません」


「攻撃は可能ですか」

「皆が近すぎます。まゆりの追尾魔法では、皆を殺してしまう」


「了解しました」『本隊へ、幸田です。索敵の結果、先行部隊方面に一人、本隊近くは魔力が錯綜し特定不能とのこと』


『ぬうう紫天女殿すら欺くか。方策はないか、聞いてみてくれ』

「はい。紫天女様、本隊を襲う敵を特定する方法はありませんか」


 真百合は暫く悩むような仕草をしてから、街道の上を沿うように指さす。


「大魔法を放って敵の魔力を晴らすのが良いかと。ただ、かなり消耗するので、回復に時間を要します」


「なるほど」『本隊へ、幸田です。紫天女様は、我々の向かう先に対して大魔法を放ち、敵による魔力のかく乱を晴らすべきだとおっしゃいました。その後、小休憩が必要との事』


『出来るかッ!! ではお願い奉ってくれッ!! 全軍、対魔法防御展開ッ!!』


 街道に集う上洛軍が、各々対魔法防御を展開する。直接受ける訳ではないが、それでも、真百合の魔法を掠めようものなら、上洛軍が壊滅してしまう可能性すらあった。


「紫天女様、お願いします」

「固有『龍の一条道(ドラグロード)』」


 大量の、常識では考えられない量の魔法円が幾重にも出現、収束。真百合の魔法が放たれる。


「ぐおっ」


 上洛軍の頭上を突き抜け、狭間を抜け、空へと駆けて行く一条の光の道。それだけでは終わらず、魔法の筋道には小爆発が、数百回に及び発生し、周囲に取り巻いていた魔力的要素、その全てを吹き飛ばしてしまった。


 山為は自己強化魔法以外使えない。それは旧ルールからも同じだ。しかし、道理を知らない山為でさえ、その光景はあまりにも神秘的で、恐怖的で、畏怖すべきものである事が理解出来た。


「お見事です、凄いですね、紫天女様は」

「……」


 また無口な彼女に戻ってしまう。独り身であったし、女っ気もなく暮らして来た少年でしかない山為は、女の扱いなどまるで解らない。何か失礼な事をしてしまっただろうか、などと考えてしまう。


 いや、任務に忠実なだけだろう、と頭を振る。


『本隊より、幸田殿。魔力の霧が晴れた。一部負傷者が出たが、これならば敵を見つけやすくなる。隊列を再編成する故、沙汰があるまで、幸田殿は紫天女殿をお守りせよ』


『了解です』「あの魔法に一部のヒトが中てられたみたいですが、問題なさそうです。暫く待機でしょうから、ここで待ちましょう。誰か、椅子をお願いします」


 敵を見つけ出し殲滅する為、本隊は隊列を組み直すようだ。こちらは殿、そして紫天女を抱えている為、再編成で動かされる事もないだろう。紫天女の運用方法は、ほぼ固定砲台と言える。前に居ても中に居ても魔法で味方が傷つく為、一番運用し易い後ろが指定席だ。


 どうやら彼女は細やかな魔法は得意ではないらしい。魔法の全てが派手さ極まり、個別戦闘させるような真似は出来ない。


「俺は、北東蕃の田舎で産まれました。侍なんか殆ど見た事がなかったし、魔法免許を持ってるヒトもいなかった。ただの農民です。紫天女様は、どうしてそんなに魔法が使えるのですか」


「……」


「出身はどこでしょう。友達はいますか。家族兄弟は?」

「――……」


「紫天女様は、新聞で一度見た事があります。扶桑で三番目に魔法が得意なんだと」

「……」


「すみません。都会のヒトと話した事がなくて。あ、そうだ、冠位授与の折に、十全皇陛下にお目通りした事があるんですよね。俺は、お祭りで何度か、分身様を拝んだだけですが、とても美しいお方でした」


「龍――陛下」

「そうです、十全皇陛下」


「――……まゆりです。衣笠真百合」


「衣笠、あ、衣笠ッ!! 古鷹の分家で、西真夜の軍人一族ですね!! なるほど、だからそんなに魔法が得意なんですね」


 真百合が口を開く。一人称が名であるから、名は知っていたが姓は初めて聞いた。衣笠の一族は西真夜の軍事を担う一翼だ。山為ですら、その名は知っている。


 常々、ニンゲンには役割があるのだと教えられてきた。自分の役割は、田を耕し山を管理して、得た作物を納める事だ。それが当たり前であったし、死ぬまでそうなのだと思っていた。であればきっと、衣笠の一族もまた、似たような使命感を抱いているのだろうと、山為は漠然と考える。


 血によって定められる生。合理的だが、面白味には欠ける。ただ、息苦しい訳でも、不満がある訳でもない。本当に、ぼんやりとした、閉塞感だけがある。


 彼女も、そのようなものを抱いているのだろうか。


「回復しました」

「――分かりました」『本隊へ、幸田です。紫天女様が回復しました』


『本隊より、幸田殿。索敵を開始してくれ』


 真百合が立ち上がる。彼女の探知網があれば、邪魔が入らない現状直ぐに敵対者を炙り出せるだろう。ここはまだ北東蕃隣接の南の蕃、これから六つの蕃を通らねばならない。ここで足止めを喰らってはいられないのだ。


 夕日が沈んで行く。夜の帳が降りる。世界を闇が支配し始めた。奇襲ならば、夜闇に乗じるのが定石であろうという事は、素人の山為でも解る。


 が、しかし。


「うっ……」

「紫天女様? 、あ、え?」


 脳内に、知らない女の聲が、ひっそりと囁かれた。



『固有・死霊祝典夜行ネクロ・リユニオン



 小さく、可愛らしい、拙い声。やって来たのは奇襲などという生易しいものではない。


 死者の大隊である。






 流石に。

 流石に、自分が少しおかしい事ぐらいの自覚はある。


 どうもゼロツーから聞かされていた現ルール通りの成長はしていないし、固定と思われていた種族値も変動する。他のメンバーと比べても取得する経験値も、スキルポイントも多い。


 とはいえ、パーティに悪影響がある訳ではないし、強くなれるならばそれに越した事もない。ゼロツーは怪訝な視線を向けて来るが、元はと言えばお前の親玉の管理不行き届きが悪いのだから、あれこれ言われる筋合いもない。


 これら全ての力を、ヨージ・衣笠という男に使えば良いのだから、困る事もない。


「こんにちは」

『……――』


 関狼蕃の港町。北東蕃軍に蹂躙された戦場には、夥しい数のニンゲンの死体が転がっている。その骸を見つめるようにして、魂と魔力の融合現象……霊魂が呆然と立ち尽くしているのだ。


「貴方達の指揮官はどこ?」


 霊が呆然としながらも指さしで教えてくれる。指示された場所に赴くと、そこには簡易の陣幕があり、霊たちの上司が同じように、沢山転がっていた。


「こんにちは」

『……誰ぞ』


「えーと。十全皇の知り合い。手伝い?」

『――……どのようなご用向きでしょうか』


「北東蕃、嫌だよね」

『……はあ』


「私自身は、あんまり推奨しないんだけど、無念だろうし、もう一度戦ってみる?」

『――……可能なのですか』


「報酬は、貴方達の蘇生。代償は、明日の夜明けまで北東蕃軍に突撃してもらう事」

『蘇生して、戦うという、意味でしょうか』


「ううん。霊のまま戦う。それが終わったら蘇生。リスク少ない。報酬も大きい、どう?」


 死んでいるのだから当然なのだが、死んだような顔つきだった指揮官の暗い瞳に、まさしく生の希望と闘志が宿る。


『是非、是非にッ!! ああくそう北東蕃の獣どもめ、道理の一つも解らん野蛮人がッ!!』


「じゃあ、皆に許可取ってね。嫌がるヒトには強制しないでね。ここで待っているから、集めて来てね」


『承知ッ!!』


 ヒトの命を弄ぶような真似はしてはいけない。それはシュプリーア自身が否定的であるし、ヨージにも散々っぱら言われ続けて来た事だ。


 なので、許可を取るようにしている。彼等はシュプリーアのスキルによって魂のまま戦い、それが終われば蘇生して貰えるという大きな利益がある。魂が死ぬことは、余程でない限りあり得ない上に自分達を殺した奴等に復讐出来るのだから、実質ノーリスクの、最高の提案である。


 そもそも、復讐、という事自体に賛成ではないが……――ヨージの悲しむような事実を放置出来る程、女として廃れる訳にはいかなかった。本当に申し訳ないと思う。暴力での復讐など、無い方が良いに決まっている。決まっているが、ヨージと天秤にかけてしまえば、それ等は幾分か……幾分か、些末な出来事になってしまうのだ。


 一方的な契約でないという前提で成り立たせ、自分にも納得を形成している。


『関狼蕃蕃士、及び現地警官、駐屯兵、巻き込まれた村民、総勢七百八十五名、集めて参りました』


「ありがとう。死体の方は、腐ってても骨になってても、元があれば蘇生出来るから、そのままで大丈夫だよ。夜明けまで、私に――シュプリーアに従ってね」


『シュプリーア様、忝い。北東蕃の狼藉者どもに……鉄槌をッ!!』

『オオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォ――――ッッッッ!!!!』


 死霊の雄たけびが木霊する。今、彼等は復讐という燃料で動き続ける亡者であるからには、理性的な働きは期待出来ない。ただし、物理攻撃が無効となっている為、彼等は斬られても射られても打たれても消える事はないのだ。


 衣笠真百合の生体反応追尾魔法を誤魔化すには十分すぎる数であるし、なんならレベルの低い北東蕃士は、これだけで蹂躙可能だろう。


「じゃあ、行こうね。『死霊蒐集』」


 シュプリーアが指を弾く。七百を超える魂は一塊となり、白い一つの霊魂として手に収まる。


 親であるヘルは言った。生を与えられるならば、死を与えられるようになるのも道理であると。生死の境を扱えるからこそ、それはバランスが取れるものなのだと。


 恐らくこの力は、現ルールが解体されても残るものだ。こんな事は出来て当たり前、という感覚さえ、シュプリーアにはあった。


『ゼロツー、準備完了』

『ええ。ところで、シュプリーアさん』


『なに?』

『治癒士は、解ります。シュプリーアさんの奇跡ですし』


『うん』


『ジョブが二つ以上ある事についても、前例がない訳でもございませんから、この魔撃士……恐らく、ヘルを引き継いだものかと存じますけれど、これも解ります』


『お母さん、魔撃士だったんだ。魔法弾乱射するやつ』

『ええ。想像を絶する化物でしてよ。それはともかく……三つ目の、死霊術士なのですが』


『うん?』

『どういう経緯で?』


『取得出来るってステータスに書いてあったから取得した専門ジョブだよ』

『他に取得可能な専門ジョブはございますかしら』


『あるみたいだけど、消費が大きいから取らないよ』

『なるほど――廃材アートか……』


『なんか悪口言われた気がする』

『いえ。貴女が何で出来ているのか、少し確証が芽生えただけのお話ですわ』


 意味深な事を言われる。十全皇の質問というのは、大体自己解決の為のものだ。あの女は何でも出来るが、何でも知っているという訳ではない。しかし基礎情報が他の者よりも膨大である為、パズルのピースを合わせるようにして、答えを出して、自分で納得する。


『それで、私はどこへ行けばいいの』


『貴女はその性質上感知されると困ります。真百合の引き剥がしが成功した時点で呼びつけますから、待機願いますかしら』


『いいよ。状況は覗ける?』

『ポータルは覗くだけで、介入はしないでくださいましね』


 そういうと、小さい小窓のようなポータルが目の前に出現、遠景で奇襲の全容が窺い知れるようになる。サラッとやっているが、大局的な視線で戦況を窺えるこの使い方は、かなり反則的だ。


『では、私が先行部隊を脅して真百合の位置を確定させます』

『了解。拙生はいつでも動けます』


 北東蕃軍が狭間へと迫る。予想通り彼等は狭間の危険性を予測、手前で停止した。罠の配置は後ろすぎず前すぎず、丁度良い停止位置に誘導出来ただろう。前すぎては警戒されすぎる、後ろすぎては早く気が付かれてしまう為だ。このあたり、赤城は流石である。


『シュプリーアさんからは真百合の位置は特定出来ませんかしら』

『遠見の魔法を警戒してるんだと思う。何人か、っぽいヒトを配置してる』


『でしょうねぇ……では』


 敵先行部隊が狭間へ侵攻、罠の破壊を開始する。ゼロツーは通信遮断を行使、近距離限定だが遠隔会話が出来なくなる。明らかに高レベルの侍達だったが、足元にポータルを出されては対処出来ないだろう。三人がどこかへ消えていなくなる。


 ……ポータルを人体に出現させるなんていう考えは怖ろしいが、高レベル相手でも問答無用に攻撃が貫通するのは便利だ。更に一人殺害し、指揮官と思しき男も殺す。


 容赦がない。


『上洛軍、殿』


 真百合の位置が特定される。暗幕を張っていたり、フードを目深く被っていたりするニンゲンが複数おり、真百合の特定を困難にしていたが、これで見当がついた。赤城が動き、上洛軍中ほどの輿……雁道が居ると思しき場所へかく乱攻撃を始める。


 赤城の動きは凄まじい。自ら矢を放ちながら罠を発動、罠を再設置しながら更に矢をかける。遠景から覗いているシュプリーアの視線がアチコチへと飛ぶほどである。


 本隊を襲われた上洛軍の前、そして後ろの中ほどの部隊までが中央に集まり始める中、後方、殿にいる部隊は一切動きを見せない。分断するには丁度良い流れになって来ている。


 更に赤城は止まらない。後方に隙が出来たと感ずるやいなや、恐らく即席の陣地形成魔法だろう――土塁が地面から湧出し、前と後ろを完全に分断してしまう。


 いよいよシュプリーアの出番……と思われたが。


『あ、赤城、逃げて、逃げてっ』

『まずいまずいまずいッ』


 上洛軍後方に強烈な魔力収束が起こる。真百合の固有攻撃魔法と思しき光が狭間を抜けて山を削り、関狼蕃蕃都にまで届かんとする勢いだった。更にはその筋道を辿るようにして爆発が起き、周囲に設置された赤城の罠、魔力、生体感知を誤魔化す魔法さえ解体されてしまう。


 超出力の光線魔法に火炎魔法が加わり、しかもそこに無効化ディスペルが付与されているという、想像するに馬鹿げた性能と威力の攻撃だ。


『ぐっ、うぅぅうっ……ッ!!』


 更に赤城が負傷。作戦が一気に崩壊する。判断が迫られた。


『ゼロツー』

『致し方ありません』


 ポータルをくぐる。真百合の追尾魔法を警戒したが、まだ来ない。先ほどの魔法の消耗が激しい為だろう。隙を狙って赤城に近づき、治癒魔法をかける。


「赤城、ゼロツーと下がって」

「忝い……」


「超遠距離から本隊にちょっかいかけるだけでいい。真百合は、私が無力化する」

「真百合の護衛を引き剥がしておりませんわ。明らかに特等兵がおります。私も」


「ゼロツーは戦況を見てて。撤退判断だけは誤れない」

「――……畏まりましたわ。止める為なら殺して構いません。蘇生、出来ますでしょ」


「うん。そのつもり」


 シュプリーア、投入。殿部隊の後方に、夜闇と同時に降り立った。


『固有・死霊祝典夜行ネクロ・リユニオン


 死霊術士スキルの最奥、事前に取り込んだ死霊にステータスアップを付与した状態で出現させる。殿部隊は突如現れた死霊軍団に対応する為構えているが、動きはない。


 真百合はこちらに対して魔法を放ちたい様子だが、どうも躊躇っている。恐らく広範囲の魔法で同士討ちを警戒している為だ。


『突撃』


「オオオオォォォォォッォオォォォォォォォォッ!!」

「覚悟ォォォォォォオォォォォォ――ッッ!!」

「ぶっっっっっっ殺してやる――ッッ!!」


 ならば都合が良い。シュプリーアの軍配が振られる。七百八十に及ぶ死霊の群れが殿部隊に襲い掛かった。己を殺した怨敵を討つという思念、霊魂故にまともな攻撃は受け付けないという事実が、彼等を一切の躊躇から解き放っている為、その勢いは凄まじい。


「せ、関狼蕃の蕃士達だ、蕃士達の霊だッ」

「お、応戦せよ、応戦せよッ」

「駄目です、刀じゃあ切れない、弾が当たらないッ、なのに向こうの攻撃は当るッ」


 大混戦となる中、シュプリーアは悠然とその最中を突っ切り、真百合へと迫る。


再使用待機時間短縮リキャストタイムカット』『全能力向上オールステータスアップ』『物理軽減(Pオリヴィ)』『物理反射(Pリフレクト)』『魔法軽減(Mオリヴィ)』『魔法反射(Mリフレクト)』『最大体力上昇(HPアップ)』『最大魔力上昇(MPアップ)』『魔法攻撃力上昇(MAアップ)』『遠距離魔法攻撃力上昇(LRMAアップ)』『自動復活オートリヴァイブ』『自動反撃オートカウンター』『万能耐性化オールレジストスリー


『固有・治癒の雫(持続自動大回復)


 もはや歩く要塞どころの話ではない。攻撃魔法を間髪入れず放ちながら、攻撃されれば自動で反撃し、攻撃が当たったとしても弾かれ、例え通ったとしても回復される上に、殺しても死なないとなると、手の施しようがない。


 殿部隊を追い散らしながらシュプリーアが迫る。このまま押しつぶせるならば――


智慧チェ


 上洛軍諸共吹き飛ばせるのでは――



 そのような考えが、シュプリーアの脳裏に浮かぶ――



 の、だったが――一人の侍が、死霊の軍団を薙ぎ払い始める。


「!!」


「きょあああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァァァァァァェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッィィィ――ッッ!!」


 衣笠真百合についていた特等兵だ。耳朶を劈くような掛け声と共に、特等兵が次々と死霊の軍勢を消し飛ばして行く。


「えぇ?」


 素人のシュプリーアが観ても、その男は素人だった。高らかに刀を構え、掛け声とともにひたすらに突撃して行く。一人、二人、三人四人、だがその速さが次第に上がって行く。棒切れを振るう子供に、神速と超攻撃力を与えてしまったような、あまりな不格好さに、シュプリーアは面食らっていた。


 やがて男の斬撃がシュプリーアへと到達する。


「チェストォォォッ!!」

「うわ」


 防御魔法の幾つかが貫通する。尋常ではない攻撃力だった。何せ、衣笠真百合からの攻撃を受けても十分対応出来るであろう、という程に防御を張ったのであるから、ただ刀を振るっているだけで突破されるなど想像していない。


 自動反撃が発動、魔法の弾丸が数十、特等兵に直撃する。

 ダメージは……無さそうだが、数大バーム距離を取れた。


「む、夢想泡沫流むそうほうまつりゅう幸田山為、特等兵だ。こ、ここから先は、通さないぞッ」

「やばーい」


『素人ですが、まともではございませんわね。相当深く純礎水晶プロトクォーツが染み込んでおりますわ』


『どうしよ』

『一つしかございませんわよ、距離を取ってくださいまし』

『ん』


「『精霊障壁エレメンタルウォール』」

「ぬっ」


 土地の精霊を犠牲に壁を作る。生命ではないのであまり罪悪感はない。ただ消費した代償は大きい為、かなりの防御力を望める――のだが。


「チェストォォッッ!!」

「困ったなあ」


 奴は平然と破って来る。本当に速く、本当に力強いのだが、動きは単調だ。破られると同時にシュプリーアも攻撃する。


「『死霊弾丸ネクロバレット』、ごめんねー」


 手近に居た死霊を吸収、生命エネルギーそのものを魔法として射出する。高威力の弾丸となったそれは敵――山為に直撃、恐らく防御魔法の一つも張っていないであろう山為を弾き飛ばす。


『ゼロツー』

『はいな』


 こういった手合いは、目の前から消してしまうのが一番だ。

 山為の吹き飛んだ先に、ポータルの大穴が開く。


「なっ、卑怯だぞおぉぉぉぉぉおッッ!!」


 そのまま吸い込まれ、山為は彼方へと消えて行った。考えるに奇妙な存在だ。相手に現ルールに対応する知識が少なかったからこそ簡単に飛ばせたが、少しでも賢かったなら、魔法を喰らってピンピンしているあのフィジカルだけで全てを無碍に出来てしまっただろう。


『真百合もそうできれば良いんだけど』

『ポータルで直ぐに戻って来てしまいますわよ』


『だよね』


 改めて、向き直る。


 周囲では、まだ亡者達と殿部隊の衝突が続いている。矢弾飛び交う中だったが、真百合と、そしてシュプリーアは意に介さず対峙する。


 いつみても美しいと思う。ヨージに似ているのが、故に余計に腹立たしい女だ。


「南方ぶり。何してるの、こんなところで」

「シュプリーア」


「そう。シュプリーア。貴女は衣笠真百合。よーちゃんの従妹」

「シュプリーア」

「……そう。どうしたの」


「兄様に群がる、汚らしい虫」


 強烈な攻性魔力が周囲に拡散する。明らかに、けた違いの力が見て取れた。しかし、シュプリーアは冷静だ。眉一つ動かさない。


「私も、まゆりあんまり好きじゃないから」


 たとえそれが化物であったとしても――負ける理由がないからだ。 


「殴り倒すね」



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