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龍女皇陛下のお婿様  作者: 俄雨
フォラズ村編
198/328

とある調査員の適当な備忘録



 埋眠の月 三二日



 フォラズ村に入村。


 事前報告書にあった通り、とても寂れた村だ。家畜の数は少なく、畑の土も良いとは言い難い。村の建物は一世紀昔のものかと見まがう程に小汚く、古びれている。大樹教会は、手入れこそされているものの、これまたかなりガタが来ている。雪の多い地域でなくて良かった。これで雪まで深かったら、きっと心まで冷たく埋もれてしまうに違いない。


 人口は百名と少し、若者は少ない。ただし、老人達は妙に背を伸ばし、シャキシャキと歩き、働いている。老人だけが元気でも未来はなさそうだが、これも噂の神の奇跡か。


 一先ず大樹教会……今は治癒神友の会仮拠点として機能している場所へと赴く。

 随分と顔の良い扶桑エルフに迎えられた。帯刀している。これがヨージ・衣笠だろう。


 この教団の構成は不思議だ。


 主神であるシュプリーアの他に、神グリジアヌという南方系であろう女神。

 神美月という、ニンゲンにしか見えない女神。

 金髪で乳のデカイ少女は、一般人ではないだろう、所作に気品がある。

 更には狼型獣人。ナナリと呼ばれていたが、まさかイナンナー部族連合王国の貴族ではあるまいか。

 そこにやたら美人な神官一人を加えて、三柱と四人で構成されている。


 年末だというのに、教会には客がひっきりなしに訪れている。いや、年末なのだから教会にヒトが居るのは当然なのだが、ここは普通の教会ではない。


 身分は様々で、一文も払えそうにない貧乏人から、顔を顰めたくなるような成金、お忍びでやってきたであろう貴族に、隠者のような者まで、多種多様だった。


 自分に順番が回って来る。怪我らしい怪我も、病らしい病もないので、何を言われるやらと思ったが、どうも胃に良くない影があると言われた。そう言われれば確かに、ここ数週間程前から唐突な嘔吐や悪寒が襲ってきたことがある。不摂生の賜物であろうと考えていたのだが、これは死に至る病だとシュプリーアは語った。


 シュプリーアがヨージ・衣笠に何やら耳打ちしてから、私に相談を始める。


「貴方の胃、このままでは腐れて落ちるそうです」

「――冗談をいえ」


「確かに、患部を直接見る事は出来ませんしね……治すのに、我が神はなかなかに気力を消耗するというお話です。それなりの値段になってしまいますが、如何しましょう」


 この宗教団体が、どれほどの力を持ちえるか。それを確認する為にやってきたのだ。自分で神の奇跡を体験出来るに越した事はないのだが、見てわからないのでは困る。


 ヨージ・衣笠に、他の患者が快復する姿を見せて欲しいと頼むと、受け入れられた。それを見てから治癒を受けるかどうか決めるべきだろう。


 そんなタイミングで、丁度良い事に腕が折れた患者が運ばれて来た。『並んでいたんだ、俺が先だろう』と喚いた金払いの良さそうな男は、一発で叩き出される。ここでは道徳と秩序が一番なのだろう。


 他の者達は一度退き、急患に対応し始める。子供だ。骨が肉を突き破っているではないか。はてさて、治癒の神の手腕はいか程か、と、私は上から目線で構えていたのだが……。


 ……――まさしく我が目を疑う光景であった。


 痛い痛いと喚き散らしていた子供の腕が、たった一瞬で元の形に戻り、子供はケロリとした顔で母に縋ったのである。


 何が起こったのかサッパリ分からない。肉を突き破っていた骨が消え去り、肉は縫合どころの話ではない、傷跡一つ残らず消えたのだ。子供の反応を見ても、既に痛みなどない事は明白であった。


 治癒。本物の治癒だ。イルミンスルしか持ちえなかったと言われる治癒の奇跡である。


「どうです?」

「受ける。驚くべき力だ」


 私は即答し、金を払う。多少懐に響いたが、これだけの奇跡、本来は貴族しか受けられなかったものだろう。シュプリーアが私の腹に手を当て、数法秒。治癒が済んだという。


 心なし身体が熱い。気力が湧き上がるようだった。胃にあった違和感は既になく、今なら何でも食べられる気がする。


 礼を言って友の会を後にし、新たに建てられたという宿をねぐらと決めた。

 その日は燕麦パンを四つ、スープを三杯、エールを五杯飲んだ。

 快調快便極まる。すげえ。



 寒眠の月 七日



 年が明けて七日。今のフォラズ村は出入りが激しい。治癒神友の会の出現で、治癒を求める者もさる事ながら、これで一発商売をしようという不届き者や、出入りの激しさに目をつけた行商、噂を聞きつけて村に戻って来た若者達、その他諸々……とにかく、村は寒村から新しい村へと生まれ変わろうとしている、その最中なのだ。


 今日は面白いものが見れた。これは治癒神友の会という組織が、普通でない事を示すものだろう。


 昼間からエールをヤッて良い気分のまま商店街を歩いていると、友の会の前に人だかりが出来ていた。何事かと覗いてみれば、ご立派な馬車と騎兵を連れた貴族様の登場だ。


 どこの者かと見れば、アインウェイク章が掲げられている。ここの南、アインウェイク子爵家だ。子爵とは名ばかりで、広大な領地と地位を持つアインウェイク子爵である。竜騎士と名高い男が……まさか、御自ら御登場とは、思わなかった。


 潜伏魔法を行使して隠れ、会話に耳をそばだてる。


「……なんで来たのですか」


「お祝いだよ。準領主となったのだろう。大樹教徒でないにせよ、大帝国の領地を預かる輩ではないかね。いやしかし、ぼろい教会だ」


「ここは大樹教会として改築予定です」

「それは良い心がけだ。では君達は他の場所に教会を設けるのだね」

「ええ」

「リズマン伯は何か言っていたかな」


「この前使者が来ました。今もいますが。村の改造計画、と銘打って、図案を押し付けてきましたよ。西真夜時代から知ってはいましたが、とんだ変人だ」


「くくく……アレは特殊な男さ。しかし大変有能でもある」


「そら、西真夜と隣接する領地の領主ですからねえ……ともかく、幾つか図案に手を加えた形で、村の再開発をして行くように決めました。ほんと、精度は間違い無かったので」


「竜精公等は何か言っていたかい」


「フィアレス公、今日もその辺りにいますよ」

「なんと……お忍びでかね」

「たぶん酒場で新メニュー開発しているので、ご挨拶があるならばどうぞ」


「不思議な竜精がいたものだ。なるほど、では安泰だ。竜の恩恵は間違いなくココにも届いている、という意味だね。大樹教に加盟はしないのかい」


「将来的には、ですね。色々、事情が込み合っていまして。その時は、もしかすれば、お力添え願うかもしれません」


「勿論、勿論。これだけ強大な神が大樹の傘下となるのであれば、また大樹教は強固なモノとなる。大樹教の繁栄こそが我が願い、我が誇りさ」


「くっ、ぶっ、ふふっ」

「く、くくく……お、面白かったかね?」

「ええ、まあ。ふふっ、ええ」

「まさか、冗談を言える相手が扶桑人に出来るとは思わなかったよ。ではそろそろ」

「はい。何のおもてなしも出来ず、申し訳ない」

「次は村が整った頃に来よう。ああ、大樹教会再建の資金は出す。好きに使ってくれ」

「有難うございます」

「何々。ご当主様としての務めさ」

「や、やめてくださいよ、もう……」


 ……。


 会話の大半が良く分からない。いや、単語自体は理解出来るが、子爵とヨージ・衣笠の関係性が一つも読めないのだ。友人なのか。竜騎士と、扶桑人が? まさか血縁か?


 それに、竜精? 竜精が何故こんな場所に。居たとしたら、子爵どころの話ではない。村人全員が地面に這いつくばって頭を垂れて居なければならない筈である。


 友の会メンバーは、誰一人経歴がハッキリしない。どこから探っても必ず途切れる。遡れるのはアインウェイク子爵家領のビグ村だが……そこで知り合ったのか。しかしあの感じは知り合った、程度ではなかろう。


 実に妙な会話であった。




 寒眠の月 一二日



 この日は刃傷沙汰があった。といっても一方的すぎて、刃傷沙汰と言えるかどうかアヤシイが、相手は間違いなく刃物を抜いた。相対したのはヨージ・衣笠だ。


 酔っぱらった商人だろう。村人に手を出そうとした瞬間に、後ろからやって来たヨージ・衣笠が『何かしら』をして吹っ飛ばした。残念ながら私の目では、ヨージ・衣笠の動きを欠片も捉える事が出来ない。


 幾ら元軍人とはいえ、強すぎる。魔法だったのだろうか。


「ヨージ神官長は、何をしたのか、分かるかい、エオ神官長」

「正直、何をしようとエオ達ぐらいじゃ視界にも収まらないので、考えるだけ無駄ですよ」


 だという。武術とか武芸とか魔法とか、そんなレベルではない気がする。

 ビグ村の記録を見るに、確かに強かったという記録はあるのだが、そんな話ではない。


 成長しているのか。本調子を出しているのか。


 神官長、などという立場にあるまじき戦闘力は、それ一つで脅威だ。



 蠢暖の月 七日



 治癒神友の会新拠点の基礎工事が始まった。ここが友の会の本拠地となり、本格的な宗教活動を開始するのだという。私も作業員として仕事を手伝う事になった。


 部屋割りなどを見るに、大樹教形式とはかけ離れている。正門となる部分には朱色の柱が二本建ち、石畳の床の先に入口。フロア部分で通路が三つに分かれており、右がグリジアヌ、左が美月、正面がシュプリーアの拝殿へと繋がるらしい。


 各拝殿は大樹教式と皇龍樹式の間のような造りだ。信徒達の座る長椅子、右に説教台、正面にレリーフを置き、その下に神座がある。これ自体は大樹教的だが……拝殿入口に水場があり、ここで身体の一部を清めてから、トネリコの細い木を編んだ輪を潜って中へと入るのだという。


 良く分からない形式だ。新興宗教であるから、深く考えてはいけないのかもしれない。


 また、図面を見るに、神座の後ろに空間がある。

 恐らく主依代の安置所だろう。ただし、神美月の神座の背後には何もない。


 どういう意味か。神ならば主依代を持つだろう。が、妙にニンゲンの気配ばかりする神であるから、もしかすれば、半神……神とヒトのハーフなのかもしれない。しかしそういった半神でも、自身の保全の為に、主依代を後から設けるものだが……。


 ここは謎だ。神美月は他と少し扱いが違うのだろう。


 基礎工事が開始されたのと同時に、信徒の募集が始まった。元からこの村は大樹教から適当に扱われていた為か、大樹教に対する帰属意識があまりないらしい。募集と同時にヒトが殺到、村人の八割がそのまま治癒神友の会の信徒となり、神シュプリーアの噂を聞きつけて来た異邦人達も入信と相成る。この日から数日で、友の会信徒が二百人程増えた計算か。


 目下、フォラズ内の人家が少なすぎる事が問題であり、信徒向けの寮などが設けられる予定だ。

 ここにいると、少なくとも食い扶持には困らない。仕事は溢れる程ある。


 本国が恋しい気持ちはあるのだが、なんだかこの村にいると死ぬ気がしない。どんなに疲れていようとも、神シュプリーアが施してくださる水を飲むだけでシャカリキに働ける。どんなマズイ飯でも美味く食える。そして妙に女のレベルが高いので、下心が随分と重しになっている。


 ……ちなみに、この村は性病が存在しない。そりゃそうか。そりゃそうだ。



 ……。

 ……。

 ……。


「……調査員。調査員が、こんな分かりやすい日記をつけているのですか」

「ぐぬ……」


「口を割らないとは思いますが、一応質問します。どこの所属ですか」

「エウロマナの中央部。魔国ミトーラのモノだ」


「あー。エウロマナ首都のユスティアの、三つ隣にある……なんか変な国ですね……」

「ヒトの祖国を変とかいうんじゃないよ」


「名前は」

「トーダ」


 不覚。いや、そもそも最初から疑われていたのかもしれない。現在俺はヨージ・衣笠に刀を首筋にあてられ、十法秒先も知れない身になっていた。周りの女達の冷めた目といったらない。『またこういう類か』といった様子だ、慣れているのだろう。


 そりゃそうか。これだけ怪しげな人物が揃っている集団、監視の目が無い訳がない。俺以外にも監視者がチラホラ、雰囲気だけは分かった。ニンゲンではなく、魔法や使い魔だろうが。


「しかし簡単に口を割りましたね」


「いっちゃあなんだが、エウロマナの田舎国家の調査員如きを、アンタが殺したところで得もないだろうと思って」


「いや全くその通りで。しかし魔国ミトーラですか……独自宗教に基づいた国造りをしている……ええと……魔王ディオライオス……とかなんとか……魔王、魔王って、おとぎ話ですかね……」


「先王陛下が崩御されて、今はそのご息女であらせられるウェヌス様が治められている」


 エウロマナ共同王国……という名の群雄割拠地帯。その中でも異色を放つのが我等が祖国ミトーラである。エウロマナ諸国は大樹ロムロスを親として、最終的に実質の首都であるユスティアを陥落させる事を目的としているが、ミトーラは違う。


 大樹ロムロスなど知った事ではない。我々が戴く我々の宗教こそが人類と魔種の絆を結ぶのであると信じている。魔種、というのは聞きなれないかもしれないが、その昔ニーズヘグ・マレフィクスが率いた悪魔たちと人類種が交わった結果に生まれた者達を言う。


 あまり一般的ではない上に、悪魔とされたものは皆竜精と戦乙女に滅ぼされてしまったので、そういう意味で我々は迫害された者達の子孫である。


 周辺国家と戦乙女、長い長い小競り合いを続けてきた。しかしそれでもいがみ合いを良しとせず、異なる者であるからこそ手を結んで未来を繋いでいこう、という考えを持っているのだ。


 我が国の事ながら凄く誇らしい。立派過ぎる。


「んっ。治癒した時、ちょっと感覚が違った。ほんのちょっぴり」

「魔種……まさか悪魔の血縁が本当に居たのですねえ……」


「なんだか神様のお陰で俺の血が普通じゃないってハッキリしたので、ちょっと誇らしいぜ」


「面白いヒトですねえ……まあ魔国の軍隊が攻めてくるわけでもないですし……何か重要な事実を握っているとも思えませんし……釈放しましょうか」


「え? いいのかよ。優しいなあ。あともう少し滞在してもいいか?」

「別に構いませんけど……気に入りました? フォラズ」


「クソ田舎に派遣と聞いてグッタリしてたが、これから更に活気づくって事が分かったら、なんだか村づくりとか手伝いたくなってきた」


「ちなみに、貴方の立場というのは、どういうものですか」

「秘密外交官」


「バラしちゃまずいのじゃないでしょうか」

「魔王様めっちゃ優しいから多分大丈夫だろう」


「胸も大きいです?」

「胸も大きい上にすげえ美人。だってお前、魔王だぞ。おっぱいぐらいデカイだろ」


「じゃあきっと良いヒトでしょう」

「話の分かる奴だ。まあウロチョロするが、ネズミかなんかだと思っててくれ」


「超図太いですね」


「図太くないとやっていけない国なんだ。何せ周辺国家全部敵、しかも常にロムロスの娘である戦乙女が魔王様狙ってるからな、気が抜けねえんだ。あいつらほんと、美人のクセに超こええから」


「はー、大変な環境で暮らしているのですね……まあうちの村を気に入ったというのならば、余程の事が無い限り退去命令も出さないでおきましょう。ただ、分別は弁えてくださいね、一線を越えるようなら容赦なく殺します」


「こええ。戦乙女どころじゃねえなこりゃ。ホント何者だよあんた」

「神官ですよ。ただの神官」


「そうかい。世界は広いし強い奴もヤバいくらいいるな。んじゃま」

「うわ、縄抜けした!」


「エール飲んでくる。俺はもう少し酸味がある方が好きだな、アバヨ」

「ああ最後に」

「なんだい」

「……僕等を調査して、どんなメリットが?」


 まあ聞く。そりゃ聞く。当然聞くだろう。


「そんな大変な力があったら、誰でも欲しがる。分かってるだろう」

「それはそうなのですが。遠くからの使者ですしねえ」


「何せ斜陽と言われて久しい我が魔国。治癒の神なんて噂にまで縋らなきゃならなくなってるってこった。本当に居たんだから驚きだけども。ま、察してくれ」


「他にも、監視者はいるでしょうから。きっと碌でもない奴等なので、鉢合わせしないように気を付けてください」


「優しい。わかった、あんがとよ」


 へへ、なんて甘っちょろい奴なのか。お陰で凄い助かった。本当に助かった。優しい。

 仕事は仕事でちゃんとしながら、まあ暫くはフォラズ村の発展に尽力しようと思う。


 しかし、これは本当にとんでもない神様だ。こんな神様がいたら、わが国の軍隊も怪我知らずだろうに。いっそ摂神としてお迎え出来ないか、頼んでみるのも悪くないかもしれない。


 俺は宿に戻って旅行ケースから通信用魔道具を持ち出す。ものすっごく高い奴で、しかも煩雑で、安定しないという、悲しみに満ち溢れた世知辛い道具だ。


「えーと、ここの石を弄って、こっちの数値を安定させて、中継結晶の周波数を合わせて……あーあー、こちらC-12号。応答願う」


『わ、これかな? これ弄るのかな? あーあー、こんにちは、王様です』


「あ、魔王さまー? ご機嫌麗しいかんじです?」

『ご機嫌麗しいですー! えーと、治癒神友の会の調査に行った人かな?』


「はいそうです。捕まりました」

『ええ? 大丈夫だったんですか? 怪我とかないんですか?』


「優しかったですので大丈夫でした」

『よかったー。命を大事にですよ』


「あー、それで、治癒の神ですが、本物でした」

『間違いなく? イルミンスルを越えるとまで言われていたけれど?』


「イルミンスルの治癒力がどれほどなのかは知りませんけど、骨折した腕が一瞬で治るぐらいには凄かったですよ」


『すごーい! 我が国にお招き出来ない? 爵位ならいくらでもあげちゃうんだけど』

「神様自体はチョロそうなんですけど、その神官がまたヤッバイので無理でしょ」


『どのくらいヤバそう?』

「俺じゃ一瞬で挽肉っすねー」


『軍隊必要?』

「未知数っすけど、なんか竜精と友達らしいですよ」


『あ、やめましょー。無理無理の無理ー。竜精は無理。そうだよねー、そんな力持ってたら、竜精が先にツバつけちゃうのは当然だよねー。はー、もう少し初動が早ければなあ。でも諦めきれないなあ。我が国ガチピンチだしなあ』


「なんかありましたか」


『ヴァルキリー共がねー、どうやら山ほど押し寄せて来るんじゃないかって』

「うへ」


『ま、でも! 我すっごく強いから! まあなんとかなるでしょ! 一時しのぎだけど!』

「色々、手は尽くしてみます。どうか御身を第一に」


『うん、ありがとー。それじゃあ軍議に戻るからー』

「はい。愛しの我等が王に友好と栄光あらんことを」


 通信を終わる。


 我が国もなかなか終わりそうだ。まったく周辺諸国の奴等と来たら頑固でならん。こっちは別に周辺に攻め入るつもりなど無いというのに。いや、魔国なるものが傍にあるのが嫌なのはわからないでもないが、我等が王はめっちゃ可愛いのにどうしてそういう事するのか。


 全く分からん。戦争なんて痛いし辛いし腹が減るだろうに。


「戻る頃に滅んでなきゃいいなあ、うちの国」


 とても憂鬱ではあるのだが、腹は減る。俺は買っておいた干し肉を噛み切って、活気あふれ始めたフォラズの村を、二階の窓から見下ろした。


 

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