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龍女皇陛下のお婿様  作者: 俄雨
フォラズ村編
189/318

大断層神話と浮ついた竜精1



 大断層ギンヌンガップ


 北部大陸を横断する巨大な谷であり、長年北部大陸の南北を分断した原因である。


 おおよそ全てが大帝国内に収まっており、南北を行き来する場合、首都側もしくはバイドリアーナイ領側を迂回するか、かけられた橋を渡る、もしくは化け鳶などの飛行生物を用いる。


 数か所に竜精が拵えた国営のポータルが存在する為、行商などは大体こちらを利用する。


 高い山が大陸を分断するよりも厄介なこの谷は、大樹教の聖地として制定されており、これを下ったり、調査するような真似が禁止されている。その為、民間人がこの谷を降りてどうにかしよう、などという真似はまず出来ない。


 過去、非合法にも調査に入った研究者達による手記や論文が多少残っている程度で、大断層ギンヌンガップの全容を知る者は殆ど居ない。


 古くは神話において、人類が産まれた場所ともされる。ニーズヘグとスルトが契りを交わし、世界に火を齎したと大樹教聖典には書かれている。


「というのが大断層ギンヌンガップです。エオは何か知っている事がありますか」


 友の会拠点の隣に造られた、仮設小屋。正面にヨージが立ち、拾ってきた板を黒板に見立てて、小さい講義(というよりも認識のすり合わせ)が行われていた。


 リーアはふわふわと浮きながら適当に、エオは背筋を伸ばして嬉しそうに、ニナは面倒臭そうに、美月は窓の外を眺めて、聞いているのか、いないのか。


 ちなみにナナリとグリジアヌは酒場を強襲している。


「ヴェズルフェルニルとフレースヴェルグという、原始自然神オリジン二柱が『いやーニーズヘグくんとか出て来ないかなー』『アイツマジぶっころー』とか言ってたの聞きました」


「ほ、本当に居る神様なのですね、それ。神話しか聞いた事ありませんでした」

「あ、話しちゃ駄目な知識だったかもしれません」


「ううん……とはいえ、ニーズヘグが地下深くに封印される折、利用されたのが大断層ギンヌンガップだった、というお話も各地にありますね」


「よーちゃん」

「はい、主神様」


中地獄ニブルヘイムを治めているのが、ニーズヘグ」

「諸説ありますが、皆が読む大樹教聖典で採用しているのはマレフィクスの方です」


「マレ……何が違うの?」

「ニーズヘグが本体。マレフィクスは悪化身です。悪い分霊ですね」


「なるほどー。ニーズヘグかマレフィクスかって、曖昧なの?」

「言ってみれば両者同一ですからね。十全皇の本体と分身みたいなもので」

「あー」


 この辺りは年代、地域、宗派によって語られる内容がところどころ異なる。どの宗教でも、完全に統一した神話、なるものは存在していないのと同じだ。


 ニーズヘグが最初に竜達に戦争を仕掛け、その敗北と同時に現れたのが悪化身であるニーズヘグ・マレフィクスであり、そのニーズヘグ・マレフィクスもまた竜に戦争を仕掛けた、というのが聖典の内容であり、写本や語りや詩なので地方へ拡散した折りに、曖昧になったのだろう。


中地獄ニブルヘイムはニンゲン用の地獄で、そこでマレフィクスの炎の息で炙られたり、寒い土地に放り出されて冷やされたりします」


「じゃあ大地獄は?」


「大地獄とは言いませんね。地獄ニブルヘルです。大樹教思想に、永遠の責め苦を与えるようなニンゲン用の地獄はありません」


「じゃあ誰用の地獄?」


地獄ニブルヘルは神様用の場所で、神様が亡くなる前には『根の国』へ行って死ぬ前のお祈りをして、死ぬと『地獄ニブルヘル』に行って、女王ヘルの下でお仕事をするそうです。長いお勤めが終わると、この星の中に帰って、やがて根幹魔力帯パルスラインと同一化、運が良ければまた産まれる、という輪廻をすると言います」


「はえー。女王ヘル……良いヒト?」

「さて、まったく神話に記述がありませんね。エオは知っていますか」

「少なくとも今のエオの記憶にはまるでありません。存在すら怪しいですね?」


 冥界の女王ヘル。ミドガルズオルムの妹とされているが、神話には全く関与していないのか、話題が殆どない竜だ。そもそもニンゲンが行く地獄は中地獄ニブルヘイムである為、死後の信仰の話題にもならないのである。


 竜としてはかなり不遇であろう。


「話が反れましたね。それで、ニナ。このフォラズでは、大断層ギンヌンガップはどのように語られているのでしょう」


「婆ちゃんに聴いた程度の知識しかねえぞ」

「構いません」


大断層ギンヌンガップってのは、元は十全皇の爪痕だってよ」

「またあの女か……」


 まったくどうしようもない女である。昔は本当にヤンチャだったのだろう。いったいどれだけこの星の地形を変えたかしれない。大陸も沈めたり作ったりしていた筈だ。


「ユグドラーシルを叩き割ろうとしたけど、ユグドラーシルを護る竜精に阻まれたからだとさ。まだニンゲンも生まれていない時代で、出来たての世界の上を、竜が縦横無尽に駆け回って暴れ回って、そりゃあもう滅茶苦茶にしたんだと」


 きっと十全皇とユーヴィルの喧嘩の痕なのだ、この谷は。


「なるほど……それが谷になったと」


「で、谷は谷で結構長くて広いってんで、谷の底を領地にしようとした竜がいたんだと。その竜は戦で死んだ神様を集めて、国を作った。フォラズの名前の元は『転がり落ちるもの』とかいう意味で、谷の底に生贄として捧げられたニンゲンを形容したもんだとか、なんとか」


「そういう意味があったのですねえ。では、その死した神々が、フォラズに生贄を要求する為に、対策としてスルトの分霊を祀った、という事でしょうか」


「大体そんなカンジ。谷底の竜は、ニーズヘグとスルトの契りを仲介したんだと。その後戦争仕掛けたニーズヘグだかニーズヘグ・マレフィクスだかが谷底に封印された。元から生贄を要求してた死神達が頻繁に現れるようになったんで、谷に蓋をする意味で、片方の契約者のスルトの分霊を呼んだんだとさ」


 だいぶ話が見えて来た。

 少なくともこのフォラズにおいては、そのような神話が語られているらしい。


「それで、ご当人」

「私様?」


「何か心当たりは」


「うーん。スルトの分霊を宿された上で、私様は組織から遣わされたの。色んな元素の魔法を使えるけど、何よりも火属性魔法が得意なわけよ。竜とか竜精とかとブン殴りあって、殺しかけたり殺されかけたりして……消耗が酷かったから、途中で休眠してしまったのかも、しれないわ」


「そういう機能があるのですね」


「あるの。だから、私様が休眠している間に、この眠り姫様はスルトの力を宿しているから、使い様があるんじゃないか、としてこの村に連れて来られた、と考えるのが妥当かしら」


 ならば筋が通る話だ。やはり美月さえいれば、死神を退ける事は出来よう。

 ただ、死神達にも何かしらの言い分はあるかもしれない。


「ニナ、死神は見た事がありますか」


「あるよ。黒霧祭に何度か熱病にもかかった。アレの血が流れてるからって、防げるもんじゃないらしいな」


「具体的に、どのような災厄が降りかかるのでしょう」


「保存食を持っていかれるのと、村人から寿命を吸い上げるのと、熱病だな。年々、村の平均寿命は落ちてる」


 村の資料と照らし合わせる。年々落ち込む人口と平均寿命。明確にガクッと下がった時期があるのは、恐らくダカンタの締め付けが厳しくなったころだ。実に凶悪な復讐手段だが、皮肉な事に、彼が資料を提示するよう強く申し付けていたお陰で、詳細なデータが手に入っている。


 嫌いなニンゲンこそが、嫌いなモノを一番理解しているということか。 


(しかし死神かあ……)


 大樹教にそのような神はいない。ロムロス教の戦乙女ヴァルキュリアを死神と呼ぶ事もあるが、当然明確には違う。死を司っている神、となれば居るかもしれないが、代名詞として思いつく神の名がない。


 地獄の管理者、というのであれば、名もある。皇龍樹道におけるイザナミ、大樹教におけるヘル、地母神教におけるエレシュキガルなどだ。


 ただ、これらは神……というよりも竜種に近い。それに名前だけが有名で、歴史神話の舞台には殆ど登場していない。都合合わせに名前を付けられた感すらある。


「――ヨージさん、外、暗いですね?」

「――……ゲッ」


 言われ、窓を開け放つ。昼間だというのに辺りは闇に包まれており、日光が届いていない。空気が冷えて行く。呼吸のし辛さを感じる。自身の生命力が、微量ながら流出しているような気さえして来た。ヨージでこれだ、一般人では堪らないだろう。


 窓の外を観察していると、やがて自警団長が向こうから走って来るのが見えた。


「村長代理ー!」

「団長、まさかこれは」

「来た、来たぞ、死神が……!」


 村人達が憂鬱な顔で表に出て、蝋燭に火を灯し、家の玄関口に置き始める。女子供はまとめられて、どこかへ行く準備をし始めていた。


「団長、あの子等はこちらへ呼んでください」

「わかった、が、どうする」

「お話合いですよ」


 子供と女性等をリーアとグリジアヌに任せ、ヨージは美月を引っ張り出して、この黒い霧の中に出る。エウロマナの辺境で霧に包まれた村が全滅した。あの時と同じような雰囲気がある。


「神官様……」

「ご心配なく。皆さん。どうぞ我等が神に頼って下さい。ねえ我が神達」


「だいじょーぶ」

「そう怖そうな顔すんな。あのお兄ちゃんに任せときゃいいからな」


 事前に準備はしておいた。ただ、何があるか分からないのも確かだ。ヨージは保管していた供物用の麦や野菜の入った麻袋を荷台に詰めて、それを引っ張って大通りを進む。隣に控えているのは美月だけだ。


「美月。死神ってなんでしょうね」

「死を与える神、ではなくて、死にそうな神、かしら」


「死にそうな神……?」


「寿命が近い神よ。主依代を無くし、支命柱しめいちゅうが減衰し、あとは死を待つばかりの神々。明確には分からないけど、本物の『死神』なんて居たら、私様達、絶対太刀打ちできないもの」


 死を待つ神。即ち、根の国に降りた神の事だ。では、フォラズの傍の大断層ギンヌンガップの下には……根の国があるのか。どうしてそんな重要な場所が、今まで認知もされなかったのか。


 竜精アナハトナは、仕事が適当すぎる。フィアレスが聞いたらぶっ飛びそうだ。


 旧フォラズ恩恵教会へ行く道の途中で止まる。そこでは村の老人達が大樹教式の祭壇を設けているところだった。木製の台に白い布をかぶせ、大樹と竜の木製レリーフの前に、リンゴ、トネリコの枝、盃が掲げられ、エール樽が幾つか並んでいる。


「クレス氏」

「村長代理。一先ず、いつも通りにはしたが」


「それで十分です。あとは後ろに下がっていてください」

「新参の若エルフが何するってんだい……」

「クレスやい。それが新しい村長だって? 大樹教徒ですらないんだろ?」


「黙ってろ老人共。俺達なんぞ、もう残りすくねえ命を投げるしか価値がないんだぞ。黙って、若い奴等がする事見守ってろ。それが出来ないなら今から大断層ギンヌンガップに投げ込んでやる」


「おお怖い」

「クレスは昔から怖いのぉ」


 やんややんや、老人たちはもうあと死ぬばかりという覚悟が決まっているのか、祭壇の脇に避けて世間話をし始めた。長い間この黒霧祭を見守って来た所為で、自分達の村が窮地に陥っている事実すら見えていないのかもしれない。


 いや、単に図太いだけか。


 少なくともここにいる老人達が、滅びる滅びると言われて久しい村を、なんだかんだと継続させていたのは間違いない。その精神性を理解するには、ヨージには少し経験が足らなかった。


「私様は何をすればいいの?」


「合図したら、スルトの力の一端を顕現させてください。あまり炎が見えると、老人達も怯えるでしょうから、力だけ」


「簡単なお仕事ねえ」


 事実、簡単なのだ。過去、フォラズ恩恵教会はこのスルトの力をほんの少し顕現させる為に、多大な犠牲を払ってきた。それこそ、あらゆる手段を尽くして、依代たる美月の中からスルトの力を引き出そうとしたのだろう。


 だが、今はこうして、本人が目の前に居る。

 では見せつけるだけで十分なのだ。


 ……本当に酷い話だ。だが、現実とは常に、理不尽である。


「むっ、来ましたか」


『"古の都より出でし神々に申す。我等フォラズの民は善良である事を示し、ここに畏まる。ギンヌンガップの縁の縁、谷風吹かれし際の際、幸少なかれど清貧に、富少なかれど……"』


 老人達が何やら唱え始める。大誓文だ。竜や神に唱える、大樹教における儀式の言葉だろう。これは地域性に富み、同じものは一つとしてない。また、伝わりさえすればよい、という特性上、かなり制作者個人の語彙に左右される。


 これを辿ってその土地の歴史を探る、なんて学問がある程だ。ただ正確性は期待できないので、学問といってもシュミの学問に近い。


「――ボロですね」


 フォラズ恩恵教会の向こうから、死神の一団が現れる。小汚いローブを纏い、頭にはトネリコの枝を刺し、金属製の小鐘をチリンチリンと鳴らしながら、視界に入るだけで四柱現れる。


 神である事に違いはない。だが、やはり弱い。かなり弱い。

 神としての漲りを一切感じない。確かにこれは、死にそうな神だ。


「お待ちあれ。大断層ギンヌンガップの神々」

「――何者か」


「新しく参りました、フォラズの領主です」

「――守人か?」


「いいえ。扶桑の流れ者です」

「――十全の子か。何用か」


「お引き取り願いたい。フォラズはこのままでは滅びます。供物だけならばまだしも、ヒトの命まで縮められては堪りません」


「しかしこれは古の契約を元としている。その拒絶は不当である」


「どなたと結ばれた契約なのでしょうか」

「この土地の神だ」


「もう居りません」

「……おらぬ、おらぬのか。あれからどれだけが経った」


「さて、正しい年数までは。ただ、ここ数千年、明確に神がいた記録がありません」

「数千……もうそんなに……」


 死神達四柱が、何かをヒソヒソと話し合っている。どうやらフォラズに居た昔の神が、取引を条件にして被害を軽減していたと見える。以降は美月の力で抑えていたのだろう。


「新しい領主。それでは困る」

「貴方達は、根の国の神ですね。死を待つばかりの神が、何故地に舞い戻るのでしょうか」


「たった数年に一度の楽しみを奪うのか」

「ああ……なんか人間味あふれますね、その文言……」


「もはや誰にも拝まれぬ我らが身。フォラズからの供物なくしては……」

「それは、いったい」


「口寂しい」

「ううん……」


「押し通る」

「美月」

「はいはい」


 ヨージの呼びかけで、美月が杖を振る。くるくると三回転させ、杖を地面に打ち付ける。すると、本当にわずかばかりだが、赤色の魔力が見え隠れした。こんなもので効果があるだろうか。


 とも思ったが、それを見た瞬間、四柱が慌てふためきだす。


「あわ、あわわわ……」

「見覚えがありますよね」


「堪らん、それは堪らん……」


 ボロを纏った神々は翻って足早に大断層ギンヌンガップへと去って行く。

 なんとも簡単なものだ。


「おお! 死神が帰って行ったぞ!」

「村長代理。この娘は……確か……」


「見覚えありますか。大樹教教会をネグラにしていた家無しです」

「あの時は随分とぞんざいに扱われたものだわ」


「なんとこの少女……ここの神様だったのですよ」

「ええ……?」

「神様……?」

「美月」


「あいあい。老人共、よくもまあ祭祀もせず放置してくれたわね! 私様はフォラズ恩恵教会の主神、美月よ! でも祭祀者もいないし一族も逃げ散ったし誰も覚えていないしでもう酷い有様だから、ここの主神は止めて治癒神友の会に鞍替えしたの! フォラズの無事を祈るならば、今後私様をじゅーぶん拝みなさい! 分かったかしら老人共!」


 なんだか随分偉そうだが、この村を昔から守っていた神様に類似した何か、である事は間違いない。村を散々と苦しめた死神を一発で退散させたのであるから、その力を疑う者もいないだろう。


「あの一族がいなくなってからも、神様はいたのか……」

「おお、フォラズの守り神よ……」


 調子の良い話だ。彼等がもう少し思いやりのある人々だったのならば、ダカンタのようなニンゲンも生まれずに済んだろうに。とはいえ、ダカンタを責めた本人達でもあるまい、年代を考えると、彼等は既に死んでいる筈だ。


 即物的な現世利益があってこそ、神は神。これは信仰の復活というよりも、新しい信仰の芽生えと捉えた方が良い。その方が、精神衛生上良いだろう。


「ニンゲンの子供だと思っていたのだが、神様だったとは。雰囲気がニンゲンのソレだが?」


「何せ古い神ですからね。我々の知っている神の原理とは多少異なるのでしょう。クレス氏、神美月は今後、フォラズの安寧に寄与してくださるそうですから、回覧しておいてください」


「しかし良いのか。あの時、あんな扱いをした我々を、今になって保護するなど」

「ニンゲンなんてそんなもんよ。力を示さなきゃ神は神じゃないワケだし」


「か、寛大だなあ……」


「というわけで宜しく元村長。取り敢えず私様がいれば、死神が大断層ギンヌンガップから上がって来る事もないし。居るだけで奇跡だなんて、私様ったら楽なお仕事ねえ」


「祭壇の撤去を。供物は……まあ一部神美月用に頂ければ、後は倉庫に戻して貰って構わないかと」

「了解した。貴殿が来てからというもの、何から何までとんとん拍子だな」

「そうでもないです」


 実際そうでもない。とんとん拍子に見えるのは、事前準備あってこそだ。実際、この村に来て過去最大の被害を受けているとも言える。今まで傷など負った事の無かったエオとナナリが傷ついたし、村は焼かれたし、里山も動物が逃げてしまった。


 一歩間違えれば竜精に目を付けられる可能性も秘めている。

 常時、バランス感覚が大事だ。


 火の神の祭祀に関して、フィアレスにどう話したものか。今後も祭祀を続けていれば、やがてあの女が顔を出す事もあるだろう。その時、美月が火の力を晒せば、当然気が付かれる。今まで黙っていたのか、と言われると悪印象だ。


 ……とはいえ火の神の祭祀痕なんてものを、大々的に晒せない。

 ここはやはり……ご相談するしかないだろう。


 ヨージはイスカとエスカのお守り(シンボル)を取り出す。


「神イスカ、神エスカ、失礼、今宜しいでしょうか」

『はい』『はい』


「フィアレス竜精公にお話があるのですが、お取次ぎ願えますか」

『とうとう』『来た』

『二日』『待ってね』


「では、お願いします。ええと、場所などは……」

『こっちで全部』『ご用意』


「さ、左様で。あ、ええと、一応、お仕事のお話ですよ?」

『大丈夫』『竜精に、仕事も娯楽も区別が無い』


 向こうから『いえーい』という掛け声が聴こえて来る。双子神と聞いて、声の調子から大人しい二柱なのだろう、と思っていたが、そうでもなさそうだ。


(竜精とデートか。ああ、怖いなあ……)


 とはいえ……十全皇ほどではないだろ……という、妙な安心感が心の支えであった。




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