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龍女皇陛下のお婿様  作者: 俄雨
フォラズ村編
181/318

夜明けの谷3



 問題は先延ばしにしたくない。奴等を退けて、明るくなってきた雰囲気に水を差したくもない。故に、ヨージとエオのみで問題に対処していた。


 問題というのは、商会傭兵団バウンサーズに慰み者にされた女性の事だ。


 大樹教全体で言えば、堕胎は推奨されない。特に信心深い地域となると、堕胎は竜に対する反逆とまでされる場所がある。


 フォラズの場合殆どが元竜神敬愛宗で、この宗派は堕胎が禁忌ではない。マーリク本人はともかく、比較的温和で寛容な宗派だったようだ。


 本人の感情、将来的な負担、また、産まれて来た罪のない子が差別や虐待の憂い目に遭う可能性も考えると、出来るだけ母体に負担が掛からない間に済ませるべきだろう。


「……構いませんね」

「――忘れたいんです。最初から、何も無かったと、そう思いたいんです」


 妊娠が発覚したのは三名。うち二人は堕ろす事を決意した。もう一人に関しては『結婚はしたくないけど、子供は欲しかったから』と話していた。ひどい目に遭い、精神的に不安定だろう。正常に判断が下せたかどうかは不明だが、本人がそういうのならば、そのままにする他無い。


 こちらはほぼボランティアだ。報酬も受け取らず、高価な堕胎薬を処方している。後になってアレコレと言われるのも心外である為、同意書は書いて貰っている。


「魔法薬の類です。ご本人に適合しない場合もある。貴女の魔力の流れ、体調から見ても、問題ないとは思われますが、何かあれば私達のところへ。その場合、必ず私かエオに声をかけてください」


 手術が出来る医者となると、大規模な病院を抱える相応の街まで赴かねばならない。これは近場に無い上に、薬以上に金が掛かり、今の技術では母体に対するリスクが酷く大きい。


 堕胎となると、魔法薬を用いるのが一般的だ。古式ゆかしいもので、大樹教がもっと強い圧政を敷いていた時代に出来たものである。取り込まれた薬は『定格術式プログラム』された通り胎内に留まり、形成されつつある胎児を溶かす。サイズにもよるが、二日で全てが無くなり、あとは排出される。


 ヒトによっては炎症を起こすが、それ以上の副作用が認められない、優秀なものだ。

 ただ、高い。ひたすらに高い。フィアレスに貰った褒賞分(大金貨二枚)はこれに消えた。


「有難うございます……」

「お大事に。同意書にも書かれていたと思いますが、どうか我が神にはご内密に」


 恐らく、我が神の奇跡を用いれば、何の問題も無く、すぐさま取り除けてしまうだろう。

 だが、それを彼女にさせる訳にはいかなかった。ヒトの生と健康を祝福する彼女に、この誰もが頭を悩ませるような問題を押し付ける訳にはいかない。


 婦人は深々を頭を下げてヨージ達を見送る。


「種族毎に妊娠率は異なりますが、ニンゲンならばヤレば出来てしまいます。エオに限ってそのような事はないと思いますが、不幸な子供を作らない為にも、節度ある行動をしましょう」


「それ、ヨージさんが言います?」


「うーん……望まれたことしかないので……」

「あ、ですよねえ」


「面倒なんか見なくていい、貴方の子供が欲しいのとは、毎度言われました。とはいえ、既成事実が欲しかっただけだと思いますけど。それも不誠実な話ですね。そもそもエルフの血が濃いと、他種族との子が殆ど見込めませんが」


「大樹教的には、そこにどんな前提があるかなんていうのは、さして問題じゃないです。誰の子だろうと何処の子だろうと、子は子です。誠実さとかどうでも良いらしいので」


「その辺りは本当に無慈悲ですね……」

「だからこそ、こんな薬が研究されたんだと思います。本当にお高いですねこれ」


「原料となる魔化鉱物が希少である事と、そこに込める定格術式プログラムに時間が掛かるシロモノです。摂取可能な大きさの物体に含められる、魔術の限界点らしいので、相応の値段です」


「他にはどんな魔法薬があるのでしょう。薬学の専門書は幾つか読みましたけど、魔法薬学の専門書ってなかなか無くて」


「血止め、痛み止めなんていう分かり易いものから、大事な時に笑わなくなる薬なんてのもありますね」


「結構なんでもありですね……」


「ただ、当然全部高い。高いのです。一般市民の手には届かない。魔化鉱物や通常の薬物を製薬する工程に、魔術も入りますから。原材料に人件費に施設に設備に需要と供給バランスに、諸々……高い筈です。という訳で、我が神がどれだけ偉大か、改めて理解が深まるものかと」


「エオも肩を撃たれましたけど、一瞬で傷口が無くなっちゃいました。そりゃそうですよね。エオ、崖から落ちた後、体中を獣や虫に食い破られてそりゃあもうぐちゃぐちゃだったのに、一発で全部修復されちゃいましたもの」


「つらい……つらみ……つらつら……つら……」


「ヨージさんの顔が青瓢箪みたいに……」

「うう……二度とそのような事にならないよう、僕は頑張りますからね……」


 といってヒシと抱きしめる。こんなにも可愛らしい彼女を亡き者にしようとしたケリスに対して改めて怒りが湧く。とはいえ、彼はもう亡き人だ。今、聖モリアッドはクレアを学長として、本家が管理している。


「人様の不幸を観たあとで何ですけど、エオとしてはヨージさんの子供が早く欲しいです」

「諸問題があり過ぎる……君が望むのならば、是非、とは思うのですが、ねえ」


「十全皇にご相談です?」

「……彼女との子を作る事に、同意するのであれば、君との子も許容する、と言われました」


「え? じゃあ許容しましょう! 十全皇とさあ、好きなだけまぐわって来てください!」


「わあ、僕も自分が男としてどうかと思う発言をしているのは自覚していますけど、それも女としてどうなのでしょう、エオ」


「正妻様が子供欲しいーっていうんだったらもうどうしようもないですよ。エオは側室なのでー」

「達観してるなあ……」


「でも、何かダメなのですか? 十全皇との子供」

「りゅ、龍ですよ。龍との直接的な子供ですよ? そこに生まれるものって……?」


「竜原種とニンゲンの子供って、そういえば聞きませんね。竜精は違いますし」

「怖いです」


「でもそれを言ったら、エオも竜精の子ですけど、大丈夫ですか?」

「……――怖いのでやめましょう」


「あー! あー! 大丈夫ですよ! 根拠はありませんけど、大丈夫ですよ!」

「僕に似て苦労しそうな子になりそうだしな……」


「未来の事なんて分かりませんって! この意気地なし! 愛してます!」

「意気地なしは誉め言葉だった……?」


 自分達は動物であっても獣ではない。意思がある。子供を作るだけならば本能に任せて良いかもしれないが、育んで行くという行為には、感情と理性が伴うのだ。


 種だけつけて後は知らぬ、というのは獣として正しくとも、ニンゲン的ではない。

 が……そのように考えてはいても、行動というのはなかなか伴わないものだ。


 三三寺ヒナなどにも随分せがまれた。今更彼女の本心を知らない訳でもない。本当なら、彼女との間に子を作る事も、吝かではなかったのだが――今となっては、あの時留まって良かったと、いや、確率的に低くて助かったと、想わざるを得ないだろう。


 もし出来ていたのならば……十全皇は、きっと躊躇わず彼女を殺していた。


(子供……子供か。一族から虐げられると分かっていながら、どうして親父は、人間族の女性を娶ったのか。余程魅力的だったのか、それとも、責任をとっただけなのか)


 青葉・ジズ・イリス・美月。


 その出生も経歴も、一切明かされていない女。十全皇も話す気はないようだ。

 そして今、同じ名前の女が近くにいる。


(美月。見た目は十代中頃の人間族。扶桑人風だ。エオと大差ない歳か。ただ、遺跡で目覚めた、なんて話をしているし、火属性魔法を使う疑いもある。何かしらの術式で封印されていた、古代人である可能性は、有り得るな)


 火属性魔法が禁忌でなかった頃のニンゲン。もしそうなら、千年よりも前のニンゲンだ。

 帝国語は流暢であった。ただ魔法の形式は不明である。


 探ってみる必要はあるだろう。


「し、神官さん達!」


 考えを巡らせていると、村人に呼び止められる。

 先ほどの娘の父だ。


「どうかされましたか」

「む、娘が! 急に苦しみ出して!!」


「行きましょう」


 歴史もあり、信用性もあるからこそ、長い間作られ続けた薬だ。ただし絶対はない。薬が適合しなかった可能性はある。先ほどの家に戻ると、女性は床の上でのたうち回っていた。


「うぅぅ……! うぅ、うぅぅぅッッ!!」

「エオ、お湯を沸かしてきてください。ご主人、娘さんをベッドへ」

「はい!」


 ベッドに寝かされた女性の身体を探る。まだ飲んだばかりだ、薬は溶け切ってはいまい。

 魔法薬というのは大体『核』と『魔化鉱物』の衣の二重構造だ。

 魔化鉱物本体への拒絶反応だろうか。


 しかしこの苦しみ方は魔化鉱物に対する拒絶反応とは考え難い。副作用が極限まで少ないからこそ、鉱物を体内に取り込めるのである。


 では『核』……魔力を操作する定型術式プログラムへの拒絶反応だ。こちらは定型術式プログラムを埋めた核が胃腸に触れると、魔化鉱物が血中に回るよりも早く身体に影響を及ぼす。


 まさか飲み込まず、噛んだのか?


「ひとまず吐かせましょう。お嬢さん、指を突っ込みますから、俯いて」

「うぶっ、ぶ、ぶええげぇえッ」


 内容物を吐かせ、嘔吐物に手を突っ込んで桶の中を確かめる。やはり溶け切ってはいない。

 ――だが核の露出が一部見られる。全術式が染み込む前で良かった。


「魔力操作をします。下腹に力を入れて」


 身体を巡る内在魔力オドの流れを読み、汲み取る。他人の魔力というのは全くの別物であり、当人以外がどうにか出来るシロモノではない。が、ヨージの場合は違う。魔力操作だけでいうなら、ヨージを超える人類はいない。また、他人の魔力を自己に転換可能である人類も、確認されるだけで世界に数名しか居ないだろう。


(チッ、こいつは欠陥品を掴まされたか)


 ……信用出来るところから購入したつもりであったが、術式に淀みがある。ヘタクソな術の編み方をすればするほど身体的な悪影響が増える。高い薬故、こういった粗悪品を作って売ろうという馬鹿者は後を絶たない。


 もう一人に処方した薬はまた別の包みであった。そちらは正規品か。

 購入した店には絶対補償してもらう。


「はあ……はあ……はあ……」

「お嬢さん、どうですか」


「神官さん……薬……合わなかったのでしょうか……」

「――……こちらの落ち度です。申し訳ない。エオ」


「はい?」

「我が神を」


「良いんですか?」

「せめて今の彼女の気分を回復させてあげませんと」

「わっかりました。ちょっと待っていてくださいね」

「お願いします」


 これは仕方が無い。定格術式プログラムは発現しない限り効果が確かめられない。魔法品であろうと、ヨージが事前に知る術が無いのだ。専科の魔法薬剤師とて判別が難しい。


 とはいえ起こった事は起こった事。責任は取らねばならないし、我が神に尻ぬぐいをさせた罪に対して、あとで賄う必要がある。


「んー」

「我が神。ご足労を掛けて申し訳ない」

「うん。お姉さん、身体を楽にして」

「はい……」

「んー……あ……――……」


 ……我が神に診せた時点で、こちらの考えていた事は分かるだろう。

 基本的に、我が神に嘘は吐けない。それでも隠したい場合は、もっと徹底しなければいけない。


「お姉さんは大丈夫。よーちゃんちょっと来て」

「はい」


 席を外す。リーアは眉を顰めていた。


「お腹の子は……駄目みたい。へんな魔術を感じた」

「魔法薬の残滓です」

「……――子宮。胎内に効果がある。術式の一部が分かる」

「うっ……」

「その薬。子供を殺す為の薬なの?」


 一切の嘘が通じない、蒼い目がヨージを貫く。ビグ村ではよく見た、リーアなりの、相手を疑う仕草だ。我が神に疑われるのは、大変心苦しい。


「堕胎を望んでいましたから、処方しました」

「なんで?」

商会傭兵団バウンサーズとの間の子です」

「あー……ううー……」


 リーアが理解し、明確に顔を顰め、頭を抱える。だから、知らせたくはなかったのだ。

 彼女は生を祝福する者。健康と幸福を齎す者。

 彼女が数百年生きた神であるならば違うだろうが、まだ一年経っていない。


「彼女は大変苦しんでいました。名前も知らない男に乱暴されて、深く傷ついている。挙句望まない子まで産まれてしまったら、彼女は余計に背負い込む。生を祝福されない子がどうなるか、分かりますよね」


「それは……解る。解るけど、痛い」

「どうかお許しください。ヨージが償います」

「子は、子。子に罪はない。ニンゲンも動物。繁殖すべきだし、それが正しいと思う」

「……」

「でも……例えば、私が……。あの時、ドーエルに犯されて、子供が出来たとしたら」

「……」


「悩むと思う。苦しむと思う。たぶん、この手で、無かった事に、すると思う。貴方に、嫌われてしまうかもしれないと、怖くて、きっと、無かった事に、すると思う」


「そのような事は、決して」

「でも、子に罪はない。弔う」


 生命の育まれる過程に、ニンゲン如きが考える倫理は通じない。あるのは道理だけだ。

 自然の道理を裁けるニンゲンはいない。あるのは、社会秩序を犯したニンゲンを処罰する法だ。


 その男も、もう既に亡い。火薬式銃所持で処刑された。

 残ったものは、その道理と、深い傷を負った女である。


「……」

「お姉さん。少し横になってね」

「はい」

「おじさん、この手拭い貰うね」

「え、ええ、どうぞ」

「神の奇跡だから、おじさんは外に」

「は、はあ」


 我が神は、その光輝く手を女性の下腹部に『刺し入れ』て見せた。切開した訳ではない。その手が直接、下腹に刺さっている。女性は呻く事もない。何をされているかも、分からないだろう。


 そして引き抜いた。その手に握られているものは、小さい小さい、肉の塊だ。

 我が神はそれを手拭いに包むと、優しく抱える。


「お姉さん」

「はい。いま、何か、されたのですか」

「うん。貴女の心配事は、もうない」

「……――それは」

「でも、私は死を司る神じゃない。私は生きる者を生かす神」

「はい……」


「私は貴女に生きて欲しい。辛い出来事だっただろうけれど、出来た子に罪はない。愛しいヒトを見つけて、幸せになって、今度こそ、祝福される家族を、作って欲しい」


 女性は、それを聞くと涙を流しながら土下座した。彼女は何も悪くはない。ただそれでも、頭を下げねばならないと感じたからこそ、頭を垂れている。


「……この事は、他のヒトには言わないで欲しい。自分の勝手で交接したのに、出来たから堕ろして、なんて事を言い出す人がきたら、堪らない」


「絶対に、絶対に、口外致しません……有難う御座いました……」

「んっ。よーちゃん」

「はい、我が神」

「供養する、ついてきて。お姉さん。治癒神友の会式で良い?」

「勿論に御座います……」

「ん。エオちゃん、お姉さんの身体拭いてあげて」

「はーい」


 女性はエオに任せ、ヨージとリーアが外に出る。暫く歩いて向かった先は、大断層ギンヌンガップ近くの林だ。大樹教共同墓地の近所でもある。


「大樹教的には、生命に終わりはないみたい」

「はい、永久輪廻思想です。ニンゲンの命に終末は訪れない」

「私も、たぶんそうだと思う。だから、次は望まれる子として産まれて来る事を願う」


 胎児を包んだ手拭いを開き、そっと地面に置く。リーアが手を翳すと、それはみるみる内に、土へと還って行った。リーアが穴を掘り始める。ヨージもそれを手伝う。


「悲しい。辛い。見たくもない」

「済みません」


「貴方は何も悪くない。貴方が背負う事じゃない。貴方は困ったヒトに手を差し伸べたヒト。それを口悪く言う事なんて出来ない。だから、私を頼って欲しい。凄く嫌だけど、辛いけど、悲しいけど、貴方が背負うより何倍もマシ。本当に困ったヒトが困り続けるよりも、ずっとマシ。私は生きるヒトを生かす神。お願い、よーちゃん。私は貴方の神だから」


 キシミアでは新しい命を祝福した。会区長イィルの娘は、健やかに育っていると聞く。

 そしてここでは、新しく生まれる筈だった命を弔った。リーアはまた、深く命について考えている。


 あの女性には悪いが、我が神の成長には、寄与したのかもしれない。

 そして、我が神の新しい力……いいや、我が神が『出来た事』を、目撃する事となった。


 ニンゲンに直接手を加えた事など、今までなかった。

 だが、リーアはその手を女性に突き入れ、死した胎児を取りだした。


 そしてその取り出した遺骸を、その手で土に還した。

 それもまた、初めて見るものだ。


 ――彼女はいったい、生命というものを、どこまで操れる者なのだろうか。


「治癒神友の会式って言ってきたけど、治癒神友の会式のお葬式ってどうしよう」

「何せ信徒がまだ生きていますからね。第一神官長と考案します」


「お願い。私が直接弄れば、ヒトは死なないけど、全部が全部、私の手近に居る訳じゃない。信徒も増えた。ヒトも死ぬと思う。そうなると、お葬式は必要」


「はい」


「よーちゃんは、長生きして貰うからね」

「はて、どのくらいでしょう」


「……――私が死ぬときまで?」

「数千年単位……ううん。数万年単位ですかね……」


「ずっと一緒だから」


 屈託なく笑い、言う。


 それは、ニンゲン基準で行くと、果てしなく果てしなく、重たい発言である。お前は絶対に逃がさない、と言われているのと同じだ。しかも寿命がニンゲン基準ではない為、どれだけヨボヨボになろうと、生かされ続ける事になるだろう。


 与太ではない。彼女なら恐らくそれが可能だ。


 ……やはり考えがどこか、十全皇と似ている。


「ここに居たぁ! 我が神! ヨージさん!」

「エオ」

「あの女性はお休みしました。戻ってごはん食べましょう! ニナさんのお料理、美味しいですし!」


「ん。私もニナの料理好き」

「そうですね。まったく良い方が来てくれたものです」


 まだまだ、ヒトの生き様に助言したり、人生を説いたり、生き死にについて語る程の歴史もない宗教だ。しかし着実に信徒は増えている。我が神の力の話が広まれば、郊外からもヒトがやってくるだろう。大きくなる、確実に。


 治癒神友の会は、他のどんな宗教よりも、死と生に近い。


 明日を生きるという事は、何も自分だけの事ではない。家族や仲間という、密接なもの達によって成り立っている。その生を祝福し、その死を弔う行いは、これからの明日を生きる者達にとって、欠かせない行事なのだ。


 世界の民など救えない。だからこそ、せめて、その手の届く範囲の者達に、恙ない人生を。


 そう望まずにはいられなかった。



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