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孤児院の勇者  作者: ピッピ
42/43

41章 完全決着


 「来たか馬鹿魔王!」


 「お前が勇者か!」


 身長2メートル超背中に羽が生えている、見るからに悪魔って感じのヤツが目の前にいた。頭には角が2本尻尾も生えている様だ。目が赤く蘭々と輝き怒り狂ってる。


 「貴様のせいで我が魔族が!」


 「「勇者様を守れ!!」」


 王国軍親衛隊が俺を守るために現れた、王国軍最強の護衛部隊だ。


 「邪魔するな!雑魚ども!」


 魔王の体が一回り膨れ上がり物凄い殺気が放たれた。夜中にライオンと目が合ったような不気味な感覚だ。背中がゾッとした。相手の方が自分より遥かに強い事が分かった。


 「か、体が・・動かない。」


 王国親衛隊は全員金縛りにあったようだ、もしかしたら魔王の持つ威圧とかバインドとかいう魔法なのかもしれないし、ただの強烈な恐怖かもしれない。


 「覚悟は良いか勇者よ!」


 「いつでも良いぜ魔王!」


 絶対に勝てそうにないが、死ぬときはカッコよく死にたいと思っていたので言ってみた。


 「さすが勇者、ワシの前で動けるとは大した奴だ。」


 「ふん、口先だけなら誰にも負けん!」


 勇者として召喚されたが、俺は魔王と直接戦闘する能力は持って無かった。おまけに頼みの召喚は使えないのだから後は俺が死ぬだけの簡単なお仕事だった。まあこの世界でも元の世界でも何度も死にかけたので慣れていたが。


 「させないよ!おっさんは私が守る。」


 「魔王ごときにおじ様はやらせませんわ!」


 「なんでお前ら出て来るんだ、下がってろ!」


 よりによってチチとヒメが俺を守るために俺の前に出てきた。こいつらを守るために頑張ったのに今までの頑張りが台無しだ。魔王なんて皆で狩れば良いのだ、どんなに強くても飲まず食わずで寝せなければ簡単に殺せるのだ。数の暴力で一日中追い回せば良いだけなのだ。


 「ふん、亜人風情が魔王と戦う気か?」


 「なめるなよ、魔王!おっさんはウチが守る!」


 「なめてるのはそちらですわ。」


 「やめろって!魔王は強すぎる。お前らじゃ無理だ!」


 「オッサンには見せたくなかったけど、しょうがねえな。」


 「このままでは勝てそうもないから、しょうがありませんね。でも魔王には責任を取って死んでもらいま  しょう。」


 チチとヒメから膨大な魔力が噴き出す、魔王の殺気と同じような強烈なエネルギーだ。チチの身体が一回り大きくなり髪の毛が逆立っている、瞳は赤く輝いてもはや知性はなく殺意だけだ。巨人族のバーサーカー化を使った様だ。身体から放たれる熱気が凄まじい。

 ヒメも完全に変身していた、魔王同様2本の長い角が耳の上に生えていた。身体も一回り大きくなり瞳が青く輝いている。口からは牙がのぞいていた。はっきり言って怖い顔だ、多分鬼の形相とはこれの事なんだろう。ヒメは鬼人族の鬼人化を使った様だ。こちらは冷酷な殺気の塊だった。


 「ほう、面白い・・わ!」


 チチが何かを言いかけた魔王に襲い掛かった。


 「貴様!戦いの礼儀を・うお!」


 ヒメは基本に忠実に相手の背後から2メートル位有る大剣を魔王に叩きつける。よしよし流石俺の弟子だ相手の弱点だけを攻撃している。


 ドゴン!


 チチの持つ大型ハンマーが魔王の顔面に炸裂する。像でも一撃で即死する破壊力だ、魔王は5メートル程吹き飛ばされて地面の上を転がっていく。


 倒れている魔王の喉にヒメが2メートルの大剣を全力で叩きつける。


 「ぐを~~!!!」


 魔王は喉元を抑えて痛みで声に成らない悲鳴を上げている。


 「こいつ、滅茶苦茶かて~!」


 「ドラゴンでも死ぬ程攻撃してますのに。」


 おかしい?何か変だ。幾ら魔王といってもあの攻撃が効かないはずはない。生き物なら絶対に死ぬか傷つくはずだ、ドラゴンでも死んだし、傷ついた。


 「貴様ら許さんぞ!魔王と勇者の戦いを邪魔するとは、不敬だぞ!」


 「勇者じゃねー!料理が上手いおっさんだ!」


 「そうですわ、ただのヘタレですわ!」


 「お前ら俺をそんな目で見てたのか・・・」


 ぐお~!!


 怒り狂った魔王が更に巨大化する、ヒメとチチと同じ様な感じだ。筋肉が膨れ上がり角が伸びて身体からバチバチと白い火花が出ている。目が黒く輝いていた。すべて殺しつくす邪悪の塊の様だ。


 「こいつはヤベ~、おっさん逃げろ!」


 「おじ様逃げてください、私たちが時間を稼ぎますわ!」


 「馬鹿言うな!お前たちを置いて逃げる訳ねーだろ!」


 「!・・」


 魔王がチチを思い切りぶん殴る、チチはガードしたが吹き飛ばされて壁にめり込んだ。ぐったりしている。


 「チチ!」


 「があ!」


 魔王の蹴りがヒメを襲う。ヒメは大剣で向かえ打つが、バキン!という音がして大剣がへし折れた。


 「終わりだ、女」


 魔王がヒメの頭を鷲掴みにして言った。このまま頭を握りつぶすつもりだ。


 「クソ魔王!」


 俺の中で理性が完全に無くなった、チチとヒメを傷つけるヤツは絶対に許さない。神が許しても俺は許さない。彼女達を傷つける運命も世界も俺が殺すのだ。

 勇者なんぞは嫌いだった、人々から勝手に期待されて成功すれば、当たり前。失敗すれば悪く言われる神みたいに損な役所だから。でも・・


 「今だけ勇者になってやるよ!女神!」


 「やっとか!勇者よ!」


 振り向いた魔王の右目に45口径を全弾叩き込む。


 「ぐおぉお~!!」


 流石に目玉に45口径7発はこたえたのか、悲鳴を上げてヒメを離した魔王に俺は素手で殴りかかる。相手がデカすぎて目や喉が狙えないので股の付け根と肋骨の一番下肝臓の位置を狙う。不思議な事に俺の攻撃は効いてる様だ。


 「くそ!貴様さえいなければ。」


 殴りかかって来た拳を俺は肘で迎え撃つ。拳を砕かれて身体をのけぞらしたので、軸足を踏みつけ逃げられないようにして相手の膝を思い切り踏み抜く。

 膝が砕けて倒れた魔王の喉に蹴りを何発も入れる。俺の顔に表情は無いはずだ、今の俺は魔王を殺す為に存在する勇者だから。


 「俺の負けだ、勇者。」


 床の上でぐったりした魔王は血だらけの顔で俺を見上げながら、言った。魔王は勇者に負ける運命を受け入れたのだろう。もしかしたら、最初から知ってたかもしれないが。


 「ふふ、やはり勝てないもんだな・・・」


 「お前のせいじゃねーよ魔王、この世界の決まりだからな。」


 「そうか、気に入らん決まりだ。」


 「ああ、俺もきにいらね~。」


 「何言ってるんだ勇者?」


 「頑張っても報われね~のは、嫌なんだよ俺は!」


 「?・・・」


 「馬鹿魔王、俺に降伏しろ!」


 「俺を殺せば良いだけだろうに・・・」


 「いいから降伏しろ、ハッピーエンドにしてやる!」


 「何だか訳が分からんが、どうせ我の負けだ。お主に降伏する。」


 「全軍に通達!全軍攻撃止め!全ての敵対行動を停止せよ!」


 俺は魔王を使って魔族を完全降伏させた。そしてまだ生き残っていた魔族は治療して国に送り返してやった。そして、国王を脅して魔族に食料支援をさせた。嫌がる貴族が大勢いたが俺に直接文句を言う程度胸のあるやつはいなかった。

 俺の召喚も復活したのでジャンジャン食料を召喚して魔族に送ってやった。来年からは自分たちで食料を作って生活できるように、種や肥料も大量に送ってやった。感謝した魔族は2度と人は襲わないと誓った。そして人も魔族領に入らない様にして、すみ分ける事にした。やっとこの世界は平和になったのだ。


 「おっさん、とうとう英雄になっちまったな。」


 「おじ様が英雄になるなんて、ショックですわ。」


 「旦那が英雄ね~、魔王の間違いなんじゃねーかな。」


 「ふん、好き勝手に言いやがって。」


 王国の人間は今回の勝利と魔族との和平を心から喜んでいた。もう魔族におびえる事もなく二つの種族は協力して生きていけるのだ。魔族に食料支援をすることで魔族の破滅を救い憎しみの連鎖を断ち切った勇者を人々は大賢者と言って褒めたたえた。

 そして国中で祝勝会が行われたが、勇者は何処にも現れる事は無かった。


 「おい、のじゃ!」


 「うむ、分かってる。じゃが本当に良いのか?」


 「ああ。」


 「お前が望めば何でも手に入るのじゃぞ!国王にでもなれるぞ。」


 「いらね~よ、そんなモン。」


 「あの子達が悲しむぞ。」


 「それだけが心残りだな、あの子達が幸せになるのを見たかったな・・・」


 「金や物より大事な物か・・・お主は本当に変わってるのう。」


 「ああ、良く言われる。」


 「さらばじゃ!勇者。」


 「じゃあな、ノジャ。皆によろしくな!」


 そして俺は元の世界に帰って来た。世界を救った勇者はもう異世界には必要ないからだ。久々の元の世界は大層やかましかった。色々と物が多すぎる様な気もしたがまあ良いだろう。ここでは誰にも期待されずにのんびり生きていけるからな。


 「ふふ、お主らしいの。」


 何だかノジャが言った様な気がしたが、俺は黙って家路についた。


 


 


 

 


 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

生涯初の小説を書きあげられたのは応援して下さった皆様のお陰です。深く感謝します。

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