35章 決戦
今俺は第一防衛ラインの外、魔族領の中にいる。早い話が偵察に来ている。偵察には猫族や狐族など隠密行動が得意な獣人を10人程連れて来ている。そして各員にトランシーバーを持たせてある。遊び用のやつなので。2キロ程しか電波が届かないので、2キロ毎に一人置いて合計20キロの偵察距離を稼いだ。
「勇者様、敵発見。」
「数と方向を知らせろ。」
「数、約1万。方向は第一次防衛ラインに向かっています。」
「後続部隊がいるかどうか引き続き偵察せよ。」
さあ始まった、敵の進行部隊の第1陣が20キロ先に現れた様だ。主力部隊に連絡を取って開戦の支度をさせなくては行けない。
「王国軍、こちら勇者。敵1万接近中。戦闘準備。」
「こちら王国軍。了解。」
戦争を有利に運ぶには相手の情報を早く、正確に得る事だ。そしてそれを直ぐに行動に生かさなくてはならない、じっくり構えたりしてる暇はない。常に状況が動いているからだ。だから、命令を出せない指揮官や何時までも決断出来ない無能な指揮官がいれば戦況が不利になる。間違っていても後で修正すれば良いのだ、何もしないのが一番悪い。
「勇者様、こちら偵察。」
「どうだ、偵察。」
「後続は、現在見当たりません。」
「了解。」
魔族の先発隊は1万だけのようだ、この部隊を軸にして後続部隊を受け入れて戦力を増やしていく作戦の様だ。そして、ある程度の戦力が集まった所で、人族の防衛線に攻撃をかける作戦だろう。きわめて一般的な作戦だ。一般的過ぎて読みやすい。
そして魔族の先発隊は、第1次防衛ラインの1キロ手前で停止し、陣地を築き始めた。ここで休息を取りこちらを観察し、後続の主力を待つつもりなのだ。
「王国軍、全軍攻撃開始。」
「了解、王国軍。全軍攻撃開始!行け!行け!行け!」
王国軍魔導士部隊5000人による一斉魔道攻撃が魔族に炸裂する。それと同時に王国軍重騎士1000騎・教会聖騎士300騎による突撃が開始された。続いて獣人・王国重戦士部隊10000名が突撃開始。その後一般兵10万名が戦場に突撃した。
「オッサン、めちゃくちゃな作戦だな。」
「物凄くエグイ戦い方ですわね。」
「長距離移動をして疲れている所を叩くのは、戦術の基本だぞ。」
「それはそうですけど。」
「それに、大勢で囲んでボコるのも戦術の基本だ。通常敵の3倍を用意するのが理想だ。何故かわかる か?」
「3倍用意すれば、被害が相手の1/9になるからですわね。」
「そう、だから戦いは数と言われる訳だ。」
「今回は10倍だから、被害は1/100なんだな?」
「いや、奇襲もかけてるからもっと少なくなるな。ただし、相手が同じ人間だったらな。」
その最初の戦闘は1時間後に終わった。魔族は降伏しないので全滅までに要した時間だ。魔族軍先発部隊1万は全滅、こちらの王国軍は死者400負傷者名1000名だった。
完勝に気をよくした国王が、俺に挨拶に来た。
「勇者殿、やりましたな!完勝ですぞ!」
「王よ喜ぶのは早いぞ!」
「わが軍は圧倒的でありましたが・・」
「俺の計算では、10倍以上で疲れ切った舞台に奇襲をかけたのだから、死者は100人以下になるはずだったんだがな。」
「では魔族は予想以上に強いというのですか?」
「その通り、厳しい戦いになるぞ。王よ!」
今回は魔族の先発隊だ。主力部隊より戦闘力が落ちる2軍なのだ。2軍相手に全兵力をぶつけて1時間も時間がかかり、しかも犠牲者が予想の4倍とは酷い結果だった。勝って浮かれてる王国軍の兵士達を見ながら俺はかなりの苦戦を覚悟した。
「王よ、全軍を第2次防衛ラインに下げてくれ。」
「俺はこれから出撃する。」
「えっ、勇者殿達だけでですか?では我々も一緒に。」
「駄目だ!これから俺の部隊だけにしか出来ない戦いをする。」
「わかりました。ご指示に従いましょう。」
「2次防衛ラインをがっちり守っていてくれよ、全軍を一か所に集めていてくれよ。」
「分かりました、ご武運を!」
さてこれからは俺の部隊の出番だ。汚い戦い方を魔族に見せてやろう。人間がどれほど汚い戦い方が出来るのか知って後悔するが良い。
「勇者部隊出撃!俺に続け!」
そして俺達は魔族領に軽トラ部隊で向かった、総員300名の虎の子部隊だ。
「どうしたのじゃ勇者、暗い顔をして?」
「いや、ちょっとな。これからする戦いは余りこの世界のヤツに見せたくね~なと思って。」
「そんなに酷い戦い方なのか?」
「うん、俺らの世界では普通なんだが。いや、俺らの世界ではソフトなやり方だな。」
「こっちの連中が真似すると困るのじゃな。」
「ああ、騎士道とか笑い話になりそうでな。」
「でもやるのだろう?」
「ああ、やる!やらないと負けるからな。」
「そうか、つらいのう。」
そしてとうとう見つけた。先発隊に物資を届けようとしている輸送部隊だ。護衛は1000名ほどしか付いていないカモ部隊だ。




