2章 孤児院
さてどうなることやら。
俺は物凄い痛みと共に目が覚めた。
「いてぇ~!」何だか全身が痛かった。特に左腕は骨折してるような鈍痛があり、頭は普段の頭痛の10倍位いたかった。
「目が覚めましたか。」
声がした方向を見ると、尼さんの格好をした小柄な少女がこっちを見ていた。
「お水飲みますか?」
「ありがとうございます。お願いします。」
少女は木でできたコップで俺に水を飲ませてくれた。
「ねえシスター、ここはどこですか?」スラム街で襲われた事はしっかり覚えていたが、状況が全く分からない。シスターだから多分善人だろうと思って気楽に聞いてみた。以前シスター達と一緒に働いていたから普通人よりも親しみを持ってるのがあるせいかもしれない。
「ここは孤児院ですよ。近くの路地で倒れてたので運んできたのです。」
やはり襲われて気絶してようだ、親切な人に救われるとは運が良かった。体中が痛いが生きていれば何とかなる。
「あの?大丈夫ですか?」
「体中が痛いですが大丈夫です。助けていただいてありがとうございます。」自分よりずいぶん年下だが、命の恩人。それにシスターだから普段使わない敬語を使う。オッサンだから礼儀作法は完璧である。
「私は治療魔法を使っただけです。あなたを助けたのは家の子達ですよ。」彼女は微笑みながら俺にいった。
「呼んでも良いですか?あの子達が随分心配してましたから。」
「お願いします、お礼を言わせて下さい。」
そして外で聞き耳を立てていたのか、直ぐに子供が2人入ってきた。両方ともちっちゃい子供だ。そりゃあ孤児院だから子供がいるのが普通だわな。何となく納得する。
「おっちゃん大丈夫か?お腹減ってないか?」茶髪短髪の女の子が俺に言う。すごく元気の良い子だ。
「叔父様、痛いところはありませんか?」黒髪が肩まである女の子が俺に言う。とても落ち着いた感じの美少女だ、額に小さな角が有るけど。
「ありがとう、体は痛いけど大丈夫直ぐに良くなるよ。お腹はチョット減ってる。」
「それよりも君たちの名前を教えてくれないかな。命の恩人だね。」
元気の良いほうの女の子がチチ、巨人族だそうだ。黒髪の子はヒメ、鬼人族だそうだ。街で見たように色々な人種がいるようだ。
「おっちゃん食べろ」と言ってチチがパンを差し出した。ヒメは木の皿にスープを持ってきてくれた。
「ありがとう、いただくよ。」
スープは少し野菜が入ってるだけで味はほぼなし。パンは釘がうてる程の硬さだった。ここが貧しいのは彼女達を見ただけで分かった。ボロボロの服を着ていて痩せていた。それでも俺を助けてくれて食べ物を分けてくれる優しさに感動した。
「ぐ~!」腹が鳴る音がしてチチが恥ずかしそうに下を向く。
「はしたないですわよチチ!」
「ごめんなさい。」
見ず知らずのおれの為にここまでしてくれるこの子たちを見て俺は、覚悟を決めた。命を助けられたのだからこの命は彼女達に使う。彼女達の為に全力を出す!
「チチお腹減ってるんだね。何か食べるかい?」
「うん、お腹減ってる。でも何もないよ。」
「大丈夫!おっちゃんは魔法使いなんだよ。食べ物出すよ。」
「ホント!何か食べたい!」ピョンピョン飛び跳ねてチチが言う。
「そんな事が出来るんですか?そんな魔法聞いた事がありませんわ。」ヒメは懐疑的だ。
缶コーヒーが召喚出来たんだから食い物だってできるはずだ。俺は自分の好きな赤い〇つねを2個召喚する。ついでに卵も2個召喚。
「わ!何か出た!」
「チチ熱いお湯あるかい?これはお湯を入れて食べるものなんだよ。」
「今から沸かすね!」チチは元気よく走っていく。
「叔父様、今の魔法はなんですの?それと、その恰好はチョット問題ですわよ。」
そういわれて自分の体を見てみると裸だった。身包みはがされて裸で路地に捨てられていたそうだ。チチが見つけてヒメと二人でここまで運んできたそうだ。アイテムボックスから着替えを取り出して大急ぎで着替える。裸を見られても別に何とも思わないが、少女達に見せるものではないだろう。
「しかし、よく二人で俺を運べたね。重かっただろう。」今は腹が出てないから昔の体型だろうがそれでも70キロ以上はあるはずだ。意識のない状態の70キロは意識がある状態よりも遥かに運びにくい。
「私は鬼人族、チチは巨人族ですから。小さくても人族の大人には負けませんわ!」
「そうか、二人とも凄いんだね」
そう言うとヒメは少し嬉しそうだった。多分自分の人種にプライドを持ってるのだろう。
「あの~すいません。私にもその食べ物をいただけませんか?」シスターが小さな声でつぶやいた。
「あ、ごめんなさい今すぐ出します。」二人の強烈な存在感でシスターのことをすっかり忘れてた。
自分の分も含めて召喚する。卵は一つ20ゴールド、赤い〇つねは1個150ゴールドだった。ついでにこっそりと初級ポーションを飲んでおく。痛すぎて愛想良くするのも限界だった。
「おっちゃんお湯持ってきた。」
「ありがとうな、よく見てろよ。」
蓋を半分はがして卵を割って入れる。卵が少し茹だる様に少しずつお湯を注ぐ。5分待つと麺が伸びるので適当な時間で皆にフォークを出してやる。
「さあ出来た。食べて良いよ。」
「いい匂い!」
「いい匂いですけど・・・・」
「どうやって食べるのでしょう?お湯を入れただけで食べられる食べ物など来たことがありません。」
「こうやって食べるんだよ。よく見てな。」
箸を使ってズルズル食べると案の定チチがフォークで豪快に食べ始めた。
「すごく美味しい!けど、熱い!」
チチが美味しそうに食べるのを見て他の二人も食べ始めた。
「美味しい!」
「美味しいです。お湯を入れただけでこんなに美味しいものができるとは信じられません。これも魔法なのでしょうか?」
不思議そうな顔でしゃべりながら食べる姿を見て俺は何とも言えない気持ちになった。何だか少し良い事をしたような、カップ麺程度で喜ぶ姿が哀れなような複雑な気持ちだ。
「「「ご馳走様でした!」」」
「おじちゃん、また明日も今の出してくれる?」チチが言った。
「はしたないですわよ!チチ!」ヒメがお姉さんぶってたしなめてた。
「チチ無理をいってはいけませよ。魔法はとても疲れるのですよ。」マリアも優しく諭している。
「大丈夫!おじちゃんに任せろ!もっと美味いやつを出すぞ~。」
夜も更けてきたので、そのまま四人で雑魚寝した。死にかけたけど、知り合いが4人出来たのは上出来だと思った。明日はこの国の状況など色々マリアに教わることにしよう。この善良な子供たちに神の祝福を「アーメン」
だんだん慣れてきたような。