全能のパラドックス
思えば子供の頃から、俺は何でも一人でやってきたし、誰も俺を頼ることはなかった。
親は放任主義だったし、学校では口を開くことすら珍しかった。
そんな俺に助けを求める人なんて一人もいなかった。
でも、今は違う。
俺を求める人がいる。
シッディをくれた恩だと思って今までジャンヌ様のために行動してきた。
でも、シッディをくれたのはヨーニでもあって、そのヨーニはジャンヌ様を生き返らせないと言っている……。
ようやく分かったよ。
俺はいつからか、ジャンヌ様を人間として好きになっていたんだ。
親以外で初めて、俺を頼ってくれた人だから……。
だから、ジャンヌ様のためにやりたいんだ!
「腹が決まったよ
ヨーニ、力で示させてもらう!」
「私に勝つつもりですか?」
確かにヨーニは宇宙を創造できる程の力がある。
だが、違和感がある。
もし本当にヨーニが全能なら、その力で友達を作れば良い。
そもそもヨーニは自分のことを全能だと一言も言ってない。
俺が初めてジャンヌ様に会って全能のパラドックスについて話し合ったとき、ジャンヌ様は神様が矛盾を無視できるかもしれない可能性を言っていたが、話を聞く限りカオスですら論理からは抜け出せていない。
つまり、ヨーニは全能じゃない。
だったら何だ?
何故全能のパラドックスは起こる?
全能は誰にも持てない石を作れるか。
全能は過去の自分を殺せるか。
全能は自分の全能性を廃することが出来るか。
……そうか!




