世界が五分前に出来たことを否定できるか?
「因果律は、哲学の観点では結果には必ず原因がありその原因は結果より過去であるというルールですが、ここから原因が結果より過去であるということを取り除くと充足理由律というルールになります
要するに充足理由律は、因果律のより広い考え方です
この充足理由律を認めると、Aには原因Bがあり、Bには原因Cがあり、……と無限後退することになります
これがミュンヒハウゼンのトリレンマです
これは有限の存在である人間にとっては大問題ですが、無限の存在である私、そしてこの世界にとっても問題です」
無限にも階級があるが、循環はどんな無限回でも起こるからか。
「ミュンヒハウゼンのトリレンマの解決には公理のようなそれ以上遡らないものを決めるか、あるいは循環するものを置くかということが必要になります
だからこそこの世界の根本、カオスは自己循環する究極の抽象的概念なのです」
神、更に世界そのものすら、論理には抗えないんだな。
「カオスという言葉は、カオスを上手く表したヘシオドスという哲学者から拝借しています
仏教で言い換えれば、カオスは空とも言えるかもしれません」
「空……か
この世界がどうなってるのかは、とりあえず分かった
で、生まれてからどうなったんだ?」
「生まれてから私は、循環する宇宙を作りました
そして、その宇宙の中に、私を模した人間が生まれるようにしました
友達が、欲しかったから……」
一瞬、哀しそうな目をしたが、すぐに持ち直して回想を続けた。
「しかし、人間はあまりにも醜かった
群れて、神を目指し、乗っ取ろうとする様が、私には怖かった
そこで私は可能世界を作り、ジャンヌ様やアストラルさんのいた宇宙を作り、人間同士に争わさせてみました
第一戦争、という名目で」
「それって……」
「世界五分前仮説みたいなものです
あの宇宙はまるで何年も前に存在していたかのように振る舞っていますが、私がそう見えるよう作っただけなのです
曜日や言葉などの文化も、人の名前も、あるいはジャンヌ様達がいる惑星の形も、兄君さまのいた地球や日本をモチーフにしました
そして人間は争い、様々な可能性に分岐していきました
しかし、状況は変わらなかった
だからジャンヌ様を私の御使いとして、人間に私の力の一部……私の血を渡してみました
勿論ただ渡すだけでは体が耐えられないので、一緒にシッダの都合の良いようになる力を渡しました
すると、ジャンヌ様は逆にその立場を使って、争いを止めるよう動いたのです
あれには驚きました、最初は友達になろうとも思いました」
瞬間移動とか宇宙の外に耐えられるのもヨーニの力だった……。
そしてその力は、ヨーニの友達足りうる人間を選別するためのもの!




