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純情な数

「アストラル!調べてきたよー!」


 ガルバ戦のときと同じようにアンナとマノが調べに行き、俺はヴィジュニャーナを相手に特訓していたがやはり成果はなかった。

そこに、調べ終えた二人が戻ってきた。


「で、どうだった?」


 俺がアンナとマノに問うとアンナが笑顔で答えた。


「見つけたよ、秘策!」


「おっ、本当か?」


「確か順序数……だっけ?」


「それは今から説明する」


 アンナは頭に入っていないようなので、マノが説明してくれるようだ。

 次があったらアンナじゃなくヴィジュニャーナに調べさせよう……。


「まず基礎知識から

パン先輩は後継関数sucをツェルメロ型で使っていたけど、基本的にはノイマン型が使われる

ノイマン型はsuc(a)=a∪{a}で定義されるね

具体的には0=φ,1={φ}={0},2={φ,{φ}}={0,1},3={φ,{φ},{φ,{φ}}}={0,1,2}という風に考えると、実際

suc(0)

=suc(φ)

=φ∪{φ}

={φ}

=1

,suc(1)=2と後継関数で所謂+1が出来るでしょ?

ちなみに、何で数を集合で定義するのかといえば、ZF公理系で集合が保証されているくらい集合は数学での基本概念だから」


「∪って何だっけ?」


 アンナの問いにヴィジュニャーナが答える。


「集合の要素をまとめて同じ集合に入れるという意味よ

例えば{猫,犬}∪{鼠}={猫,犬,鼠}という感じ」


「鼠食われちゃいそうだね……」


 アンナのボケは置いておいて、マノが説明を続ける。


「この時、今定義した数は推移的になっている

集合aが推移的とは、aの要素の要素がaに入っているということ

例えばaを2とすると、{φ}∈2、φ∈{φ}で2の要素の要素φもφ∈2になってるでしょ

そもそもこうなるようにsucの定義を決めてるんだと思うけどね」


「推移的ね、うん!」


 アンナがにこやかな顔で納得したような顔をしているので、マノが説明を進める。


「そして、さっき集合で定めた数はある順序関係に対して整列集合にもなっている

ある順序関係というのは今回の場合、集合a1,a2に対してa1≦a2をa1=a2またはa1∈a2で定めたもの

aが整列集合とは、ある集合aの部分集合に関して、決めておいた順序関係を適用すると、最小の要素(最小元)が必ずあるということね

実際3={φ,{φ},{φ,{φ}}}の部分集合{φ,{φ}}について順序関係を確かめると、φ∈{φ}だからφ≦{φ}と、最小の要素φがある」


「≦の使い方が変だから分かりづらいよー!」


 アンナがため息をつく。


「アンナさん、実はその不等号の使い方はおかしくないのよ?」


 ヴィジュニャーナのフォローの意味をマノが明らかにした。


「そう、上に書いたようにある集合が推移的かつある順序関係に対して整列集合のとき、その集合を順序数と言う

ノイマン型のsucを用いて決めた数0,1,2,……は全て順序数だった、というオチ

ペアノの公理も実際は順序数を想定して公理化したもの

気をつけてほしいのは順序数と言っているし実際感覚でも1とか3は数だと思ってしまうけど、本質は集合だというところ

順序数は上の性質を持つ数であって上の性質を持つ集合でもあるということね

で、さっき決めた順序関係を順序数同士に使うと、0()1()2()……となっているでしょ

順序数は自然数と呼ばれるものを順序関係で見て拡張した概念、ということ」


「それでそれで?」

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