独りじゃない
「!?」
そこではガルバが驚いた顔のまま立ち尽くしていた。
今までのように試合開始直後ガルバの勝ちとはなっていない。
アストラルはガルバのメタに成功したのか?
「!?……一階の述語論理ではなくなっている!
それどころか、∞階……!」
∞階……?
そうか、確か一階述語論理の一階とは∀と∃の量化子を個体変数の一種類にしか使えないという意味、二階や三階……あるいはそれ以上だと述語記号など他の種類にも量化子をかけられる。
だが、∞階なんて普通は扱えない。
そもそも普通の数学は二階すら必要ない。
だからこそガルバのシッディを封じることが出来る!
しかし、着目すべきところはそこじゃない!
「アストラル、君は+1するシッディだったはずだ!
何故+∞に出来る?」
そう、あいつは∞なんて扱えなかったはず。
何故だ?
「それこそが先輩対策、寝ずに特訓した成果!」
「そうか……再帰的定義!」
再帰的定義!
再帰的定義とは、無限のような抽象的な内容を不躾には扱えない人間がそれを扱うための定義方法で、数学的帰納法みたいな感じで帰納っぽいので帰納的定義とも言われる。
例えば階乗n!をn!=1*2*……*nと定義するのは、……の部分が不明瞭だから正確とは言えない。
そこで、
0!=1
n!=n*(n-1)!
とすることで、順を追えば正確に定義できているし、しかも有限の式で無限を考慮することも出来る。
今回アストラルは、脳内でシッディ1回目を+1で、シッディn回目を+nで定義し、+∞までをノータイムの順繰りと考えることで実行した!
「その通りです、そこにたどり着いて、使いこなせるようになるまで苦労しました」
―――――――
俺は、ガルバ戦に備えて特訓していた。
色々+1したり早く+1したり、∞を目指して色々試してみたが、上手く行くことはなかった。
「……私達は図書館で色々調べてみるよ!」
「ヴィジュニャーナはアストラルの相手をしていて」
「わ、分かったんだから!」
ブレイクスルーが必要と考えたアンナとマノが図書館へ調べに行ってる間、ヴィジュニャーナ相手に色々試してみたのだが、効果はなかった。
しばらくして、今日の夜明け頃、アンナとマノが戻ってきた。
「アストラルー!見つけたよ!ついでに更なる対策も!」
「これなら出来るかも!」
そしてアンナとマノが持ち帰ってきてくれた知識が再帰的定義だった。
「皆……すまない
俺のために寝ずに付き合ってくれて……」
「何よそれ!」
「うん、そんなの当たり前」
「私達、と、ととと友達なんだからねっ!!」
「友達……か
友達だからって、迷惑かけていいのか……」
友達だって人だ、都合のいいように扱っていいものじゃない。
俺はこいつらに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「あんたの気持ちは分かるよ
友達には迷惑かけていい、なんて無責任なことは言えないけどさ
困ってる時に、助けてあげるのが友達だと思わない?」
「アンナの言う通り
私達は、アストラルに助けられた
テストの結果が公表されて目立っちゃった私達をアストラルは庇ってくれた!
だから、私達もアストラルを助けたい!」
「わ、私は二人みたいに思い出とかないけど……
なんでも屋部の活動は楽しかったし、だから……その……
助けたいって気持ちは一緒だから!!」
「あれー?ヴィジュニャーナ、今日は素直だね?」
「う、うるさいわよアンナさん!」
「あははっ」
皆の気持ちと楽しい雰囲気で、思わず笑みが溢れる。
「何で笑うの?アストラル!」
「いや……なんか、嬉しいんだ
お前たちには感謝してもしきれないな……」
「だったら、ガルバを倒して」
「うん、ガルバを倒すことが私達に報いることだよ!」
「その為に協力は惜しまないんだからねっ!」
「皆、分かった、必ずガルバ先輩を倒す!!」
――――――




