可分
パンは∞の要素を持つ引数aをどう取った……?
量子、物、空間……、そうか!
図書館で、何となくヒルベルト空間について調べていたときに書いてあった。
ある空間に∞個点を規則的に打ったとき、その点を点列と呼ぶことにすると、その空間の中の任意の、端を含まない空間を取ったら少なくとも一つ点列が入っていたら、その空間は可分空間という。
そして可分なヒルベルト空間ならば1個から∞個の正規直交基底を持つし、その逆も成り立つ。
基底とは空間のどんなベクトルもそれらで表せるようなベクトルのことだ。
分かりづらいので例を出せば、R^2(実数から2つ取ってきて出来るベクトルの空間、例えばxy座標とか)では、どんな実数a,bに対しても(a,b)=a(1,0)+b(0,1)と、(1,0)と(0,1)の2つのベクトルで表せる。
そして正規直交基底とは、基底となるベクトルが大きさ1で基底同士内積を取ると0になること。
上の(1,0)と(0,1)は√(1^2 + 0^2)=1,√(0^2 + 1^2)=1と2つとも大きさ1で、内積は(1,0)・(0,1)=1・0 + 0・1=0だから正規直交基底になっている。
で、一般的なヒルベルト空間は可分ヒルベルト空間であり、この世界も時間を無視すればヒルベルト空間である。
しかも、三次元空間なので最低基底は3つ必要だが、基底の数は増やしてもいい。
三次元空間の適当な座標(2,3,1)が実は四次元空間(2,3,1,0)だったとしてもいいわけだ。
これを使って一時的にこの世界を∞次元可分ヒルベルト空間だったと考えれば、∞個の正規直交基底の存在は認められる。
その∞個の正規直交基底をアリティと捉え、それらの成す俺の周囲の空間を対象に関数sucを使えば、今のこの状況が作り出せる!
今俺はシッディを思考時間加速に使っているが、それはパンにとって問題じゃない。
suc(a)のaを要素一つ一つと見ればアリティ∞、aという集合一つと見ればアリティ1で俺のシッディ関係なくツェルメロ型の箱で覆ってくる。
だが種が分かれば後は簡単だ、パンは今この箱の中の空間を∞次元ヒルベルト空間と捉えているが、俺のシッディで四つ目以降の基底の大きさを∞にすれば、正規直交基底ではなくなり現実の空間とそぐわないから破綻、パンのシッディは無効化出来るはず!
よし、行くか!




