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ゆっくり考えていってね!

 俺はペアノの公理に用いられる記号のアリティを操作した。

 パンはそこに関しては操作できないはず、つまり別の観点から突破したということ。


 ダーラはアストラルにアリティを増やされたとき、∈の取る引数の意味を変えてきた……。

 パンも意味を変えてきたのか?

 0は関数記号でアリティは∞になってるから使えない。

 他の記号と言えば+だが……。


 待てよ、パンのシッディの一つは+1する力だが、+1が何なのかはっきりと示されていない!

 +1とはつまりペアノの公理における後継関数sucのことで、それに意味を付加したもの。

 sucの意味には様々なものがあるが……ツェルメロ型か!

 ノイマン型、フレーゲ型のsucの定義はシッディとして使うには複雑だが、ツェルメロ型なら簡単だ。

 ツェルメロ型によれば、sucをsuc(a)={a}と定義する。

 より具体的には、0を空集合φを用いて0=φと定義すれば、1=suc(0)={φ}、2=suc(1)={{φ}}と再帰的に定義することが出来る。


 そして、sucのアリティは上のような1ではなく俺のシッディで∞にしていたが、suc(a)におけるaを、俺を含む空間の集合とすれば、集合aは∞の要素を持つからアリティ∞を満たせる。

 よってパンのシッディは俺に邪魔されず、俺を集合の箱({})で覆うことが出来るということか!


 今、現実で俺は{{{{{{{{{{a}}}}}}}}}}のように箱に囲まれて詰んでいるということになる。

 これを抜け出さなければ、審判に詰みと判断されてしまうだろう。

 しかし、距離を0にしたり最悪速度∞にしても抜け出せるのか?

 そもそも集合の要素が飛び出るなんて数学の概念は、俺の知る限り存在しない。

 勿論シッディ自体数学や物理をモデルにしただけで現実的な力だし、出来るかもしれない。

 しかし、もし思考時間加速をやめて脱出しようとしても出来なかったとき、審判にパンの勝ちを宣言されたら終わりだ……。

 やはり確実に勝てる方法を考えよう。

 なーに、時間はある。

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