しぐ姉ちゃん
パンの背後に瞬間移動して、腕を振りかぶる。
「あれ?能力が使えな――」
疑問符の浮かんでいるパンの背中に一撃。
決まった!
「いたた……私の能力を封じる人、久し振りだよー」
これは上手く行ったか……?
一階述語論理における考え方の一つに、シグネチャというものがある。
シグネチャは非論理記号とそのアリティの集合、つまり
関数記号(f(x)と書くような関数fの集まり、+や0なども関数記号)、
述語記号(≦や∈など)
関数ar:関数記号∪述語記号→0以上の整数(つまり関数記号と述語記号一つ一つに対してそのアリティが一つ決まっている)
を集めた集合のことだ。
この関数arを、∀x∈関数記号∪述語記号に対してar(x)=∞となるように俺のシッディを使えば、それは即ち全ての関数記号、述語記号のアリティが∞になること。
これでパンのシッディの土台となるペアノの公理も封じられたはず。
これは準々決勝のアストラルvsダーラを参考にした戦い方だ。
ダーラが乗り越えたようにパンも乗り越えてくるかもしれないが……。
「詰みですか?」
「んーふふ、これは本気を出さなくちゃだね」
本気……!?
「感じるよ……アリティを∞に増やしたと……」
「!?……」
「その顔、当たりだね!
見せてあげるよ、先輩と後輩の格の違いというものを!」
ゴゴゴゴ……と音が鳴り響いて辺りが震動する。
何だ?何が起こってるんだ?
「空くん、君が学園に入って1年も経ってないはずなのに、どうしてそこまでの知識を得られたのかは興味深いよ
でも、それは後で聞くことにするから!」
その発言のあと、俺の周りが真っ暗になった。
だが、宇宙の外とは違う……、パンのシッディによるものか!?
……まずは落ち着いて思考時間を増やそう。
シッディをパンのメタから思考時間増加に回す。
これで落ち着いて考えることができる。




