7部だよ!全員集合
深く考えなくても大丈夫です!
朝、日本の制服に西洋感を混ぜたようなものを身に付け、鐘に合わせ受付へと向かうと、アナンダ先生が先に来ていた。
「来たわね
それじゃ教室に行きましょうか」
数分程度歩き、アナンダ先生が部屋の前で止まった。
「ここが普段あなたが通うことになる教室よ
一回生用の教室、とも言い換えられるわね」
「一回生?」
「まだ説明してなかったっけ?
16歳以上が学園に入った直後は一回生
基本的に一年ごとに二回生三回生と上がって行って、四回生を終えると卒業、そして就職ね」
なるほど、基本制度自体は日本の大学みたいなものか。
「16歳未満は?」
「一年生から四年生まであって、卒業してから就職
16歳以上になったらまた学園に通うことも出来るの」
マヤは四年生まで通って医者として独立したのだろう。
木製のドアを開け、アナンダ先生と俺が教室に入ると、木で出来たらしい机とイスが一組ずつ、数十個並んでいる。
制服やこういうところは日本の高校に近い。
「それじゃ早速、数学から始めましょうか」
「あ、はい!」
適当な所に腰掛ける。
当然ノートなどなく、筆記具も持っていない。
アナンダ先生は特に気にすること無く黒板に色々書いて授業を始めたので、暗記が前提なのかもと思ったが、この授業の終わりに教科書を渡されその心配はなくなった。
「まずあなたがどのくらい数学が出来るか教えてくれる?」
アナンダ先生は知らないだろうが、これでも大学を卒業した身だ。
人並みに出来る自信はある。
「極限とか微積なら……」
「あ、そこまで分かるのなら安心ね
補習もいらないかも
集合は分かる?」
「集……合……」
確かに高校生の時にやった。
やったのだが、大学ではあまり出てこずおざなりにした部分だ。
言葉に詰まった俺を見て、アナンダ先生は補習の道筋が見えたと納得したような顔になった。
「集合とは簡単に言えば箱ね
例えば箱に犬と猫が入っていたら……」
アナンダ先生は黒板に{犬,猫}と書く。
ああ、そういえばこんな中かっこ使ったやつあったわ。
「この場合{}が箱ね
その中に犬と猫が入ってるってイメージ
ただ、もちろん数学だから犬と猫はあまり扱わないわ
例えば1と2が箱の中に入っていれば{1,2}と書く
このとき、犬や猫や1や2みたいな箱の中にある物を元や要素と呼ぶの
簡単でしょ?」
「確かに複雑ではないですね」
「ここまではね
次は空箱を説明しましょう」
先生が黒板に{}と書き、説明する。
「犬とか猫とか1とか2、つまり要素が抜けたでしょ?
これが空箱で、数学では空集合と呼ぶの
数学では、この箱の中に箱を入れた{{}}とかも許されるの
これは結構重要で――――」
こんな感じの補習が延々と続き、気づけば夕暮れ。
一応昔から勉強は出来たので理解するのに苦労はなかったが、それでも久しぶりの授業は堪えるものがある。
それは差し置きそれなりに学力があると判断され、補習は最初で最後、解散となった。
そういえば極限で思い出したのだが、極限には∞の概念が出てくる。
ジャンヌ様の言っていたシッディが数学とかで解明されるというのはこのことなのか?
いや、それよりもっと重要なことがある。
美人の先生と二人きりだったのに、本当に授業以外何も起きなかったのだ。
解散後も先生は学園に残るらしく一人で帰宅。
テンプレ物ならそれっぽい雰囲気になるはずなのだが、主人公側から何かアプローチしなければならないのか?
だとすれば俺には無理だ。
月曜のクラスメートとの顔合わせに期待しよう……。
そこでならヒロインと仲良くできるはずだ!
そんなことを思いながら就寝。
初の休日である日曜日がやってくるのだが、適当に辺りを散歩して終了。
同じ学園の生徒らしき人物もちらほら見られたが、イベントはおろか軽い会話もなかった。
こうなるとネットのない世界が退屈でしょうがない。
日曜は早めに寝て、そしてついに、俺は月曜日を迎えた。