宇宙を超えた遭遇(であい)
愈々迎えた準決勝、一人図書館にこもり対策を練り続けたことが報われるのか、明らかになる日だ。
試合開始前になり、俺とパンはコロシアムに入場する。
あれ……、いつもよりコロシアムの観客が多い。
さすがに準決勝ともなると周辺地域の住民だけじゃなく、様々な人が好奇心やら人材探しやらで集まるのか。
今まで気にしないようにしてたけど、また緊張してきた……。
「いやー、人いっぱいだねー」
先に口を開いたのはパンだった。
「そ、そうですね……緊張します」
「去年や一昨年に比べると多いけど、私はあまり気にならないかなー」
というかパンが緊張することがあるのだろうか。
普段おっとりしてるから想像つかないが。
「それじゃあそろそろ始めようか
今年も私が勝って三連覇してやるからね!」
「パン……ちゃん、俺にも勝ちたい理由があります
俺も負けません!」
「試合開始!」
先手必勝!
ヨーニにいつだか速度を∞にするなと言われたが、パンの0にするシッディは1秒かからず行われるし余計なことされる前に勝たないと!
と思いシッディを使った瞬間、景色が溶け、周りが真っ暗になった。
「え……?」
思わず口から言葉が出る。
コロシアムはどうなったんだ?
「やっちゃいましたね」
謎の声が脳の中で響く。
「誰だ?俺の心の声が聞こえるのか?」
「だから速度を∞にしないようにと言ったんですが……」
もしかして、ヨーニか……?
その大人びた声に、俺は驚いていた。
ヨーニは幼女らしい甲高くて可愛い声をしていたが、今の声は低くて大人の女性のような感じだ。
「何がどうなってる?答えてくれ!」
「小学校で習ったはずです
速度 = 距離 / 時間、これを∞にするということは距離を∞にするか時間を0にするか、或いは両方ということ
空さんは今回距離を∞にして、有限の宇宙から飛び出してしまった、ということです」
小学校……?そんなのあの世界には無いはず……
いや、それより。
「つまり、俺は今宇宙の外の無限次元ヒルベルト空間とやらにいるのか?」
「その通りです」
とにかく俺はコロシアムに戻りたい。
ジャンヌ様との約束を果たすために。
でも、気になる。
「何でヨーニが?ここは宇宙の外だろ?
ヨーニのシッディなのか?」
「そうとも言えるしそうとは言えないでしょう
何故なら、シッディとは私の力そのものですから」
どういう……ことだ?
「さて、そろそろ戻しましょう……」
そうだ、戻らないと。




