並び方が違えば違うものと見なせるよね
「確かに……私は∈を操作できないから<を封じられれば勝ち目はない……」
完全にダーラのシッディを封じた!
アストラルもここまで実力を付けてきたか……。
俺が学園に入った頃はあんなに弱かったのに。
「だが……まだ手はある」
「手……!?」
ダーラの奥の手発言に、アストラルが驚いて冷や汗をかいている。
確かに、ここからダーラが巻き返す方法は全く思い付かない。
「お前は一階述語論理によって示された、書き方のルールに介入したに過ぎない
不等号の意味は、不等号の定義によって初めて定まるものだ」
「不等号の定義……
だけど、定義が複数あるものをすり替えることは出来ても、定義自体を書き換えるなんて強力なシッディじゃないと出来ないはずだ」
「その通り、だから私は定義を変えない
手を加えるだけだ」
どういうことだ?
「何かの集合Pを持ってきて、≦をPの要素二つを使う関係とし、次の二つの性質を≦が満たしたとき、≦を前順序と呼ぶ
1、∀a∈Pに対してa≦aが成り立つ
2、∀a,b,c∈Pに対して、a≦bかつb≦c⇒a≦cが成り立つ
これが≦の意味を作る定義だ
これは大きいとか小さいとか言及していないが、一般的な議論のために不等号の持つ性質のみに着目している
ところで、この定義で一見a,b,cなどが普通の数に見えるが、これを順序対と見る」
順序対……確かベクトルとかで目にする(a,b)みたいな数の対の総称だっけ。
順序対の"順序"が意味するのは単に(a,b)≠(b,a)みたいに順序入れ換えたものを区別するからで、順序関係とは関連無かったはずだが……。
「例えば具体的に、a=(1,2)、b=(3,4)とすれば、(1,2)≦(3,4)は成り立っているように見える
実際、例えば一番右の項を取り出して普通の定義での不等号で比較してそれをそのまま当てはめるようにすれば、P=実数で≦は前順序となる
そして、これは≦をアリティ4と考えたに過ぎない
アリティ5だとしても順序対ではなく片方を三つ組にして(1,2)≦(-1,4,3)と出来る
よって、お前のシッディは通じない」
「な、なるほど……」
アストラルが押されている……!
さすがガルバの護衛と言ったところか。
「だけどその考えには抜け穴がある!」
抜け穴?
アストラルはもう見抜いたのか?




