有り体
翌日、遂に六回戦もとい準々決勝の日。
Aブロック、Bブロックの勝者は俺とパンだった。
つまり、準決勝は俺の想定していた対パン戦になる。
そんな中迎えたCブロック、今まで地味に勝ち上がっていたアストラルとダーラの試合が、今始まろうとしていた。
「俺はアストラル
先輩、よろしくお願いします」
「私はダーラ、よろしく」
知り合いではないので固い挨拶を交わしているようだ。
「アストラル……といったか
一つ聞こう、何故勝ち上がりたいと思った?」
「闘いたい人がいるから」
闘いたい人……それって……。
「なるほど、私と同じだ
私もお姉ちゃんと戦いたかった、お姉ちゃんは負けちゃったけど……
勿論、スキルアップにも就職にも繋がるし、まだ諦める気はないけど」
「ああ、本気でやろう!」
「試合開始!」
ダーラは強い、アストラルはどうする気だ?
「行くよ!」
アストラルがダーラの方へ走り寄る。
「!?……シッディが使えない!」
一方ダーラはアストラルにメタられたようだ。
「アストラルのシッディは+1する力……
アリティを増やしたか?」
ダーラの言うアリティって……。
そういえば学園で習ったことがある。
命題論理や一階述語論理には述語記号という概念が存在する。
述語記号とは個体変数の性質を表す記号で、例えば個体変数x1を持ってきて、述語記号Pを"人間である"としたとき、"P(x1)"を"x1は人間である"と読める。
一階述語論理は書き方のルール、日本語でなく数の考え方を使って、個体変数x1,x2,……を実数として述語記号<を定めれば"<(x1,x2)"を"x1<x2(x1はx2より大きい)"などと書いて読むことも出来る……だったな(ただしこの時点で<の意味は定まってないらしいが)。
で、述語記号や関数fなどの関数記号は、当然引数がいくつなのかが決まっている。
<なら、左と右に数が必要だから引数2。
f(x)みたいに書かれる関数fなら、()の中に必要だから引数1。
必要な引数の個数を英語でアリティと言う……んだっけ。
で、<はアリティ2の述語記号だが、これをアストラルのシッディでアリティ3や4に増やせば、<の意味がワケわからなくなってしまい、ダーラのシッディが意味をなさなくなる、というわけなんだろう。
「バレましたか……
それでも、先輩は何も出来ないはず!」




