無限降下列
「宇宙の外に出て私と戦うのか?
その時は仕方ない、宇宙の外の外まで内包しよう
そうすれば君も出られまい?」
「その必要はない、理由は……こういうことだ!」
俺が手をかざすと目の前に一瞬宇宙が現れ、すぐに消滅、そしてムーラが姿を現した。
「……!?
何故私のシッディが……!」
よかろう、説明=負けフラグをへし折ってやるか。
「宇宙の外とか外の外なんて大したことじゃない
∈について調べてたら、丁度俺の知ってることと結び付いたんだ
武蔵はZFC公理系を否定するシッディだったが、そのZFC公理の中に正則性の公理というのがある
∀ a ( a ≠ φ ⇒ ∃ b ( b ∈ a ∧ a ∩ b = φ ) ) (任意の集合aに対し、aが空集合でないなら『aにbが属する かつ aとbの共通部分が空集合』を満たすある集合bが存在する)というものだが、これを使うとお前の力を否定出来る!」
「……そうか……無限降下列!」
「その通り
無限降下列とは、……∈a3∈a2∈a1と無限に続くことを満たす無限個の集合a1,a2,……のこと
例えるなら箱の中に箱があり、その箱の中にも箱があって……というのが無限に続くものだが、これは正則性公理によって否定される
簡単に言うと背理法を使う、つまり無限降下列が存在すると仮定して、矛盾が起こることで示せる
上の無限降下列が存在するとして、a={a1,a2,……}(さっきの無限に小さくなる箱を全て覆う箱がa)とする
この時aは空集合じゃないので、正則性公理の矢印の左側を満たす
矢印の左側が成り立つなら右側も成り立つから、ある集合bが存在して『b∈aかつaとbの共通部分が空集合』を満たすことになる、aの要素はan(nは自然数の内の一つ)であり、つまりb∈aとなるbはanのどれかになるが、どんなanもa∩an≠φになってしまう
なぜなら仮定からan+1∈an、an+1∈aだからa∩an={an+1}で、要素を持つことになるからな
これは正則性公理に矛盾、よって無限降下列は存在しないわけだ」
めっちゃ早口で言ってしまったので、伝わらなかったかもしれん。
とりあえず本題はここからだ。
「無限降下列は存在しないわけだが、無限上昇列は存在しうる
つまりa1∈a2∈a3∈……となる集合の列a1,a2,……は存在出来るわけだ
で、調べたらビンゴだったよ
この宇宙の外の外の外……それは無限に続いている
お前はムーラ∈宇宙1(この宇宙)∈宇宙2∈……の一番左のみを操作したつもりだったが、俺のシッディで操作する∈の数を無限に増やした
その瞬間、ムーラ∋宇宙1∋宇宙2∋……となり、存在しないはずの無限降下列になってしまったから、お前のシッディは破綻したんだ」
「つまり∈に関する力は封じられた……
だが私にはまだ力が……!」
言い終わる前に背後に回る。
「!?」
「ε-δ論法の定義式の不等号を操作するのも手は打ってあるよ
すまないが俺の勝ちだ」
しゅとん、と首に手刀を当て気絶させる。
ムーラはそのまま、その場にうつ伏せで倒れた。
「そこまで!勝者、空!」
割りと手強い相手だったな……でも、この調子で行こう。




